2009年9月02日
説明できぬ番狂わせ…いまだ「発展途上」
ベルギーGPから3日経った今も、何やらキツネにつままれた感じ…。フォースインディアのジャンカルロ・フィジケラが予選でポールポジションを獲得し、決勝ではキミ・ライコネンから0・939秒差の2位でフィニッシュした「スパフラコルシャンの奇跡?」。もちろん、個人的に大好きなドライバーでもあるフィジケラの優勝は嬉しかったし、レースを見ていて興奮もしたのだが…。かれこれ20年近くもF1に関わる仕事をしてきた自分が「なんでこんな事が起きるの?」という問いへの答えを瞬時に説明できないのがちょっと恥ずかしいというか、ただ驚いているだけという状態なのはマズいよなぁ…という気分でちょっと居心地が悪かった。
今回、フィジケラがポールポジションを獲得した予選も、そしてライコネンとトップ争いを展開した決勝レースも、アクシデントによる赤旗中断やセイフティカーといった「トラブル」に助けられたわけではなく、通称「スパウェザー」と呼ばれる変化しやすい天候が展開を大きく左右したわけでもない。つまり極めてフツーの条件の下、全くのガチンコ勝負で予選トップ&決勝2位の大活躍なのである。レース中のペースだってトップのフェラーリとそん色なかったし、むしろオープニングラップのセイフティカーが無ければ、フィジケラが優勝してた可能性だってあったような気がする。
インド人オーナー、ヴィジャイ・マラヤ氏率いるフォースインディアがいくら地道な努力を重ねてきたとはいえ、冷静に考えれば今季のF1では最小、最弱チームのひとつのはず。チーム規模でも資金でも他のトップチームと比べるまでもないほど貧弱なこのチームが、ガチンコでこれだけの活躍をするなんて、正直、誰も予想してはいなかったに違いない。他ならぬフィジケラだって「スパに来る前は8位あたりが期待の最大値だった」と言っているぐらいなのだ。そんなワケで僕も「オメデトウ、フィジコ!」と、中年ファイターの活躍を心から祝福しつつも、「なんでこーなるの?」と頭を捻り、考え込んでしまったというワケだ。
で、少し考えてみた。まずひとつ言えるのは、先週末のスパフランコルシャンが「2009年仕様のF1マシン」にとってかなり特殊な条件だったということだろう。マクラーレンが優勝したハンガリー、1週間前のバレンシアと、やや低速気味のコースが続いた夏のヨーロッパラウンドだったが、名物コーナー、オー・ルージュ改装後、以前よりもミディアムダウンフォースの高速コースという性格が強まった現在のスパでは、ラップタイムの上で直線スピードが大きくモノを言う。加えて、秋を迎えたアルデンヌ山中の低い気温と路面温度が「タイヤの温まり」の重要性を押し上げた。
フィジケラだけでなく、チームメイトのスーティルも予選11位&入賞を果たしたフォース・インディアや、今シーズンいいトコ無しだったBMW勢の活躍。トゥルーリ自身が「ミステリー」と表現したトヨタの速さとは対照的に、ブラウンGPやレッドブル、マクラーレン、ウイリアムズなどが予想以上に苦しんでいたベルギーGPの予選結果を見ると、スパフランコルシャンのコース特性と今シーズンのタイヤ、そして温度や路面コンディションなどを含めたすべての条件が、相対的にみてやや「特殊」なものだったと考えざるを得ない気がする。
言い方を変えるなら、新しい2009年版レギュレーションに則って作られたマシンは、まだまだ未完成で、仮にトップチームのマシンであっても、コース特性や条件によって大きく左右される可能性が高いということなのだろう。つまり、シーズン序盤、あれほどの強さを誇ったブラウンGPやレッドブルも、また、過去2戦で復活をアピールしたかに見えたマクラーレンも、先週末のような特定の条件下では一気に戦闘力を失い。反対に、これまで苦戦してきたチームが突如として速さを見せることもあるということだ。今シーズンのレギュレーション変更のインパクトがいかに大きかったか? そして、各チームのマシンが未だに「未完成な状態」であるかを改めて感じずにはいられない。
そう考えると、今シーズンのF1で見てきたいろいろな事柄の理由もすこしハッキリと見えてくる気がする。シーズン序盤、ブラウンGPがあれほどの好スタートを切り、マクラーレンやフェラーリといった名門が大きくつまづいたのも、ここまで各チームの戦闘力がサーキットやレースによって大きく上下して安定しないのも、すべては新しい2009年レギュレーションに基づく今シーズンのマシンがいまだ「発展途上」の段階にあり、まだ「手探り」の状態だから結果の変化量もまた大きいのだ。
仮に昨年までのように、何年も(ほぼ)同じレギュレーションが続いていれば、自然と各チームのマシンはその完成度を増し、更なる磨きを掛けるためにはトップチームの潤沢な資金力や豊富なデータの蓄積がモノを言う。しかし、今はまだ新レギュレーションに対する「正解の幅」がまだハッキリと定まっておらず、各チームがそれぞれが試行錯誤を繰り返している時期なので、資金や経験に恵まれたトップチームであってもこれまでのうよな「横綱相撲」を取れないし、今回のベルギーGPのように特定の条件下では「番狂わせ」も起き易いということなのだろう。
僕は常々、F1で勝つためには、まず「資金力」+「技術力」(人材や設備を含む)+「経験」の総和が大きく、更にそれを確実に活かすための戦略を備えていることが絶対に必要だと唱えてきた。だが、ブラウンやレッドブルが活躍し、フォースインディアまでが突風を吹かせてしまう今シーズンのF1は必ずしもこの公式に当てはまらない。その理由は2009年レギュレーションというF1に新たに課された「宿題」が、思っていた以上に難しく、結果、従来に比べて平均点が大幅に低下しているからなのかもしれない。まだまだ平均点が低い今だから、事前の予習でヤマがあたったり、たまたま得意分野が試験に出たりすると、これまで優等生じゃなかったような生徒がいきなりテストで1番取ったりするという……。そういう構図なのではないだろうかと思うのだ。
いずれにせよ「勝負」を外から見る立場にとって、今回みたいな「予想外の展開」は大歓迎。だって「簡単に読めない、想像できない」というのは、そのまま対象の奥深さを象徴することだからねぇ。昔から良く言われている。そんなワケで「レースは何が起きるか分からない」というフレーズこそが、「レースの楽しさ」であることを、改めて思い出させてくれたベルギーGPの週末だった。
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