2009年6月25日
分裂回避、やはり最後は「モズレーの首」
F1分裂の危機は直前で回避された。そう、主要8チームで構成されるFOTA(F1チーム協会)による“クーデター”は成功に終わったのだ。6月24日のFIA世界評議会に先駆けて行われた、FIA会長、マックス・モズレーとFOTA代表、ルカ・ディ・モンテゼモロ、そしてバーニー・エクレストンの3者会談で、モズレーが事実上の「全面降伏」に追い込まれ、FOTA側も新シリーズ立ち上げの計画を中止。全チームが2012年までの「新コンコルド協定」にサインすることで「平和」が実現した。
合意内容の詳細については現時点で明らかになっていないが、モズレーは10月のFIA会長選挙に再出馬しないことを約束し、事実上の「更迭」が決定。懸案となってた予算総額制限(バジェットキャップ)を含むFIA提案の2010年新レギュレーションについても白紙撤回が受け入れられたと見ていいだろう。もちろん、F1のコスト削減に関しては、FOTA側の提案をベースにしながら、新規参入チームへの支援策も盛り込みつつ、「1990年代のレベルを目標に」新たな道筋を固めて行くことになる。
2日前のコラムでも書いたように、やはり最後のキーポイントは「モズレーの首」だったようだ。より正確な表現を使えば「モズレーによるFIAの個人支配」の打破と、「新たなFIAガバナンスの確立」というべきだろうか? 世界のモータースポーツを管轄するFIA(国際自動車連盟)の権力は、1993年にFIA会長の座について以来、4期に渡るモズレー政権の間に大幅に強化されたが、その一方で権力の集中や運営面、意思決定における透明性の欠如などもことあるごとに問題視されてきた。
だが、そうした問題点への指摘はモズレーの巧みな政治手腕によって、ほぼ例外なく潰され、そのたびにモズレーへの権力集中が進むという悪循環を招いてきた。2年前、おそらくは誰かの謀略によって「彼の私生活」が暴かれ、SMプレイに興じるモズレーの姿がイギリスのタブロイド紙やネット上に流出した際も、こうした「謀略」によって個人の私生活が暴かれることの問題はさておき、FIAのように国際的な機関の顔であるモズレーが「FIA内の投票というプロセスを経て」会長のポストを守り切れたことが、FIAという組織の機能不全、自浄作用の欠如を象徴していたと思う。
ここ数カ月続いた、FIAとFOTAとの対立や、F1分裂の危機を招いた根本的な原因のひとつは、こうしたモズレーへの権力集中やFIA組織の機能不全にあっただけに、今回、チーム側のクーデターが「F1分裂」という最悪の手段ではなく「無血クーデター」に終わり「新たなFIAのガバナンス」が確立されるのであれば、F1のみならず、すべてのモータースポーツにとって大きな価値があるはずだ。また、今回の「政変」が成功した背景には、F1界の牛耳るもうひとりの「ドン」であるバーニー・エクレストンが、最終的にチーム側につき「モズレー降ろし」に加わった点も大きいだろう。一時は「盟友」としてモズレーと二人三脚状態にあったエクレストンだが、ここ数年は両者の間にも微妙なすきま風が吹いていた…。
いずれにせよ、これで不毛な「政治抗争」が一段落し、F1が2シリーズへの分裂という最悪の事態を回避したことを、まずは素直に喜びたい。もちろん、将来に向けた大幅なコスト削減を初めととした、多くの課題が現在のF1には山積しており、晴れて2010年のエントリーリストに並んだ全13チームにとっては、ここからが本当の勝負ということもできるだろう。FOTA側は、一旦除籍されたウイリアムズやフォース・インディアのFOTA復帰や新規参入の3チームについても、新たなメンバーとして迎え入れる姿勢を示しており、全13チームが一体となり、危機感や問題意識を共有しながら、F1の将来について考え、行動してゆくことの大切さを、今回の一件から学んで欲しいと思う。
F1のコスト削減については、かれこれ5年以上も議論が続いてきたにも関わらず、なかなかチーム間での合意に至れなかったのが実情だった。何かと悪役扱いされるモズレーだが、昨年来の世界的な経済危機と、モズレーによる強行なコスト削減案を突きつけなければ、今回のようなチーム間の共闘や問題意識の共有は実現しなかったに違いない。とりあえず「F1分裂」という最悪の事態は回避したが、F1界全体の将来が依然として多くの問題を抱え「大きな危機に直面している」という状況に変わりは無いということを、このスポーツに関わるすべての当事者が忘れてはならないだろう。
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