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2009年2月25日

日本のモータースポーツは文化じゃないのだ

 三菱がダカールラリー(通称パリ・ダカ)から撤退した。ホンダF1撤退以降、WRCのスズキ、スバル、2輪MotoGPのカワサキときて、ついにパリ・ダカの三菱かぁ…。まあ、自動車産業のみならず、製造業すべてがボロボロの状態だから、これも仕方ないのかもしれないが、地球温暖化だというのに、この2カ月ちょっとでニッポンのモータースポーツ界は一気に極寒の時代を迎えてしまったようである。
 

 もちろん、この深刻な不況下で企業のコスト削減は不可避だろう。各社とも撤退は苦渋の選択であったと思いたい。だが、一連の決断の背景には日本人によくある思考パターン、すなわち「皆さんレース関係は止められるらしいですよ…」的連鎖反応の側面がなきにしもあらずという気が、しないでもない。つまりは「この不景気に企業が自動車レースなんて道楽やってるのは不謹慎」的な空気が日本社会にまん延しつつあるというコトなのだろう。

 いや、モータースポーツだけじゃない、社会人野球、アイスホッケー、オリンピック候補選手の個人スポンサー…。連日のようにニュースで流れる「撤退」「打ち切り」「休止」という文字を眺めていると、今やメジャーでない(または金にならない)スポーツ全般から文化、芸術に至るまで、商売以外でお金のかかるものはすべて「悪」とでもいわんばかりの勢いで切り捨てられてゆく。日本はいつからこんなにお寒い国になったのか?

 ここで興味深いのは、世界同時不況だというのに、モータースポーツの本場、欧州のメーカーからは、今のところ「撤退」というニュースがほとんど聞こえてこないコトだ。いや、僕だって日本の企業はサブプライムローン破綻に端を発した、世界同時不況に加えて「円高」の二重苦にあえいでいるのは分かっている。不況が最も深刻な米国市場への依存度も日本のメーカーのほうが大きいのだろうとも思う。

 とはいえ、アレだけの勢いを誇っていた日本のメーカーが、みんな素っ裸の大慌てでサーキットから退場してゆくのに、ヨーロッパの連中は必死に踏みとどまって、なんとかモータースポーツを続けてゆこうと知恵を絞っているという、このあまりにも対照的な反応の違いを一体、どう理解すれば良いのだろうか?

 もちろん、今の僕は、日本の企業の判断が間違っているとは断言できない。今回の経済危機を「津波」に例えるなら、バブル崩壊の経験から「津波の恐ろしさ」を身に染みて知っている日本人が大慌てで避難しているのに、欧米の連中はノンキにビーチでウロウロしていて、結局、彼らが大波にのまれてしまうというコトもあるかもしれない。

 だが、両者の反応の違いが「文化としてのモータースポーツ」の根付き方に起因しているとしたら…? 切ないけれど、僕はその可能性も少なからずあると思う。火事の家から宝物を守るように、どんな非常時にもみんなが守りたいと思うのが「文化」だとしたら、悲しいけれど、ニッポンのモータースポーツはそうじゃないのだ。


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F1放浪記
川喜田研(かわきた・けん)
 1965年(昭和40年)4月20日、横浜生まれ。91年から「F1速報」、「レーシングオン」のスタッフライターとして働き、99年からフリーのF1ジャーナリストに。  現在は「スポルティーバ」(集英社)「カーグラフィック」(二玄社)などに執筆中。  愛称の「ちんぱん」は、成人男子とは思えないほどの落ち着きの無さ(本人は旺盛な好奇心ゆえと認識していますが…)や、締め切り直前のパニック状態(昔は編集部で跳ねたり、踊ったり、叫び声を上げたりという奇行を演じていたようです)がチンパンジーに似ていたことに由来する。

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