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2009年1月07日

環境、不況…「意味」求められる時代にビジョンはあるか?

 <モータースポーツの未来のために=2> 「モータースポーツの未来のために」などと、大上段に構えたくせに、その後、更新をホッタラカシにしていて本当にゴメンナサイ。昨年末にこのブログでホンダのF1撤退を厳しく批判したら、何だかすっかり空しい気持ちになってしまい、しかも、その後、スズキ、スバルが相次いでWRCからの撤退を表明。一方、ホンダが抜けたF1は急遽、大幅なコスト削減案で全チーム一致で決定。「他のメディアはホンダ撤退をどんな風に報じてるかなぁ…」と思って、日本ではかなりステイタスが高いことになっている某老舗自動車雑誌を書店で立ち読みしたら「我々はホンダの決断を理解する、云々…」とか書いてあったりして「えーっ! オマエラどっち向いて原稿書いてるんだよぉ!」と憤りつつ「オレってやっぱり少数派なのかかなぁ…」と、逆に弱気になったり…と、まぁ、何だかフクザツな気持ちで年末年始を過ごしていたら、いつの間に新年も1週間が過ぎてしまったという次第だ。あ、そうそう、と、ゆーわけで明けましておめでとうございます、今年は一体、どんな年になるんでしょうか? 何か明るい話題はアルのでしょうか?

 で、気を取り直して前回の続きである。覚えていない人は前回のコラムをクリックしてから読んでね。あれ? なんか文体がヘンだな。まぁいいか? つまりは、世界的な不況やら、環境問題やらという強い逆風が吹き荒れる時代に、モータースポーツが生き残って行くためにはどうしたらいいのか…という問題提起をしたうえで、まずは環境問題への取り組みという点で、日欧のモータースポーツ業界を比べてみたいという、確かそんなハナシだったと思う。

 実は、今からちょうど1年前、僕はイギリスのバーミンガムで「第2回ヨーロッパ・クリーンナー・レース・カンファレンス」という会議を取材した。これはイギリスを中心としたモータースポーツ関係企業の業界団体であるMIAの主催で開かれた国際会議で、クリーンナー・レース(キレイなレース)とは即ち、環境負荷の少ないモータースポーツの事を意味している。つまりは「地球に優しい自動車レース」のあり方を話し合う会議で、イギリスのレース関連企業はもちろん、ルノー、BMW、石油メーカーのシェルなどの企業もモータースポーツにおける環境問題への取り組みについて、自分たちの取り組みをテーマに講演を行ったり、パネルディスカッションなどを行ったりした。

 …とココまで聞くと、何だかキレイゴトというか、偽善じみた雰囲気がしてこなくもないが、ソコは現実主義者のイギリスだけあって、口当たりのいい「エコ話」だけで終わらせるようなコトはしない。F1で今年から導入される運動エネルギー回生装置(KERS)に関する講演を行ったルノーも、ルマン24時間耐久レースにバイオエタノールを混合した燃料とディーゼルエンジンで挑戦しているBMWも「実際に自動車レースが環境に与える影響は自動車社会全体の規模を考えれば、実際には極めて小さい」と断言する。

 だが、その上で「イメージの面でインパクトの強いモータースポーツ活動は一般的に環境問題への取り組みに逆行する行為と受け止められる危険があり、そうした状況の中でモータースポーツに取り組み続けるためにはモータースポーツそのものも、何らかの形で環境問題への取り組みを行わなければ、将来の生き残りは難しい」という危機感から、KERSやクリーンディーゼルと食物由来でない次世代バイオ燃料の組み合わせなど、何かしらの「エコっぽい」要素を自動車レースに盛り込むことで、一種の「免罪符」として機能させようという考えを明確に示しているのだ。

 もちろん、大前提として「モータースポーツが地球環境に与える影響など、実際には決して大きくない」というのだから、逆の言い方をすれば「モータースポーツで“エコ”を実践しても、環境に対して現実にもたらされるプラスの影響は非常に限られている」というコトになる。だが、こちらも、モータースポーツが環境問題において、しばしば「悪役」扱いされてしまうのと同様に、実際に期待できるプラスの効果もあくまで「イメージ」の部分だというコトを忘れてはならない。

 例えば有名な芸能人は総人口の中のほんの一部に過ぎないが、その芸能人が慈善事業をしたり“エコ”を実践している姿をマスメディアを通じてアピールすれば、そうした意識の大切さを多くの人たちにアピールすることができるはずだ。おそらくモータースポーツ界が環境問題に対して行える取り組みは、これと同じような形で多くの人たちの意識啓発を行える可能性を秘めている。その意味では、ホンダF1を「地球色」にペイントした「アースカー」はそうしたアイデアの先駆者というコトが言えるのかも知れない。まぁ、アレは別の意味で、あまりにも中途半端なコンセプトだったと思うのだが…それはまた、長くなりそうなので、別の機会に触れることにしよう。

 1年前の「第2回ヨーロッパ・クリーンナー・レーシング・会議」では、こうした共通認識に立って自動車メーカーを含むモータースポーツ業界全体が「環境」を意識した新たな取り組みの方向性を発表しつつ、この逆風をひとつのチャンスと捉え、それにいち早く対応することで、むしろ新たなビジネスのチャンスを切り開こうとする前向きな姿勢が溢れていたことが筆者にとっては非常に新鮮な驚きだった。また、ヨーロッパの自動車メーカーはこうした場を利用しながら、自分たちが目指す方向性の「優位」をさりげなくアピールすることも忘れておらず、彼らが進めている「クリーンディーゼル+バイオ燃料」と日本勢が大きく先行する「ハイブリッド」を比較して、クリーンディーゼルのコスト面でのメリットを繰り返し強調するなど、多分に「戦略的」な意図も感じられた。

 この会議に出席し、欧州の自動車レース関係者が環境問題との関わりという視点から「モータスポーツの未来」に強い危機感を持ち、その逆風を跳ね返すための知恵を真剣に探り、また実践しようとしていることを肌で感じ「これはヒトゴトではない」との感を強くしたことを今でもハッキリと覚えている。もちろん、あの当時は世界経済がこれほどのスピードで悪化するとは夢にも思っていなかったが、経済状況が悪化すればするほど、自動車メーカーやスポンサーなど「企業」がモータースポーツを行うための「社会的なハードル」は高くなり、昨今の環境意識への高まりとの関わりの中で「何らかの役割」を求められる可能性は高いと思う。

 今年からF1に導入されるKERSのように、コスト面での負担が大きすぎると(最近、あるF1チーム関係者から聞いた話によると、現時点で競争力のあるKERSを作ろうとするとKERS1ユニットあたりのコストはF1エンジン1基分と大差ないほど高価になるというハナシだった)全体的なコスト削減の流れの中でむしろマイナスに作用する危険があるが、経済的にも厳しい時代だからこそ、自動車レースへの支出に「何らかの意味」を求められるコトも増えてくるはずであり、大切なのはそのバランス感覚ということになるのだろう。いずれにせよ、ヨーロッパの連中はもうだいぶ前から、そうした問題意識を共有し、具体的なアクションを始めている。果たして、我らがニッポンのモータースポーツ関係者が彼らと同じような危機感と具体的なビジョンを持っているだろうか?

 と、言うわけで(気を取り直して)再び大上段に構えた「モータースポーツの未来のために」次回は2度のオイルショックと排ガス規制への対応で大きな打撃を受けた1970年代の日本のモータースポーツシーンを振り返りながら「自動車メーカーとレースのありかた」というテーマについて考えてみたい。


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F1放浪記
川喜田研(かわきた・けん)
 1965年(昭和40年)4月20日、横浜生まれ。91年から「F1速報」、「レーシングオン」のスタッフライターとして働き、99年からフリーのF1ジャーナリストに。  現在は「スポルティーバ」(集英社)「カーグラフィック」(二玄社)などに執筆中。  愛称の「ちんぱん」は、成人男子とは思えないほどの落ち着きの無さ(本人は旺盛な好奇心ゆえと認識していますが…)や、締め切り直前のパニック状態(昔は編集部で跳ねたり、踊ったり、叫び声を上げたりという奇行を演じていたようです)がチンパンジーに似ていたことに由来する。

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