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2008年8月31日

ライコネンが動き、アロンソがはまれば…

 ストーブリーグの基本は「玉突き」と「パズル」だ。大きなピースが動くと、それに押し出される形でいくつかの動きが引き起こされ、全体像の大枠が決まれば、最後は小さなピースで微調整して出来上がり…。実を言うと、これまではあまり「来季のドライバーズラインナップ」について真剣に考えていなかったのだが、スペインのバレンシアで初開催された先週のヨーロッパGPを見てから、「あれ、もしかしたら大きなピースが動くのかな」と感じるようになった。

 そう感じるようになった理由は2つある。ひとつはディフェンディング・チャンピオンのライコネンに相変わらず元気がないこと。いや「元気がない」というのは、ちょっと優しい表現で、ハッキリ言って遅い。勝負に絡んでくるという存在感や気迫が感じられない。僕は常々、フェリペ・マッサの「穴」の多さを感じ、ドライバーとしてはライコネンの方がはるかに上だと信じてきたのだが、今のライコネンは正直、そのマッサと比べても見劣りする。
 そもそも、今季のフェラーリは「ふたりそろって絶好調」というパターンは少なくて、どちらかが良いときはもうひとりがどこかでコケるという状況が目立つのだが、その原因が彼らドライバーにあるのか、マシンとドライビングスタイルの相性にあるのか、あるいはセッティングとかレース戦略も含めたチーム力の低下にあるのか(あるいは、それらの複合的な要因によるものなのか?)は分からないが、今のライコネンがベストの状態から程遠いことは間違いない。バレンシアの週末でもそれはあらためて確認できた。
 一方、今回「スペインでふたつ目」のGPが開催されることになった原動力、地元の英雄フェルナンド・アロンソの未来もつくづく心配な状況だ。オープニングラップで中嶋一貴に撃墜されてしまったのは予定外だったが、今のルノーで偉大なダブルチャンピオンが活躍できる可能性は皆無に近く、来年だって状況が大きく改善する保証はどこにもない。 また、一部では「ホンダがアロンソに触手」などと報じられているが、いくらロス・ブラウンがいるとはいえ、今のホンダの状態を見ていれば、来季から突然トップチームに生まれ変わるなんて期待するほうがおかしいだろう。仮にロス体制化での「再出発」がすべて計画通りに進んだとしてもチャンピオン争いができるのは何年か後のコト…。僕はこのうわさ、まったく現実味があるとは思っていない。
 そう考えるとアロンソの未来は実に暗いのだが、それがいかに不都合な状況かは「1国1開催」の原則をあえて破り実現した今回のヨーロッパGPと出来立てピッカピカのバレンシアのサーキットを見れば一目瞭然だろう。国家的大スターであり、唯一のスペイン人ドライバーであるアロンソの「ダメダメ状態」があと何年も続けば、スペインのF1バブルは一気に崩壊してしまうだろうし、今のF1を支えている「スペインマネー」が一気にこのスポーツから引いていくに違いない。アロンソに続くスペインの若手も育っていないから、いざバブル崩壊が始まればその速度は速そうだ。
 唯一の解決策は、かねてからのウワサどおりアロンソがフェラーリに移籍してチャンピオン争いに復帰し、宿敵ハミルトンと戦うというかつての「セナ×プロスト」的構図を再現することだ。マクラーレンの同僚だったセナとプロストが、やがてマクラーレンとフェラーリの2チームに分かれて再び激突する…というストーリーは分かりやすいし、スペインのF1バブルがさらに燃え盛ることになるはずだ。また「ベネトン(現在のルノー)で2度チャンピオンを取ってから、伝統のフェラーリで再び王座に挑戦」という構図は、まさにシューマッハーの歩んだ道であり、これも十分に魅力的なストーリーだ。
 問題はアロンソをどうやってフェラーリに移籍させるか…つまりは、どうやってフェラーリのシートに空席を作るかだが、今のライコネンを見ていると、「仮に動かすならこっちかな?」という気になってくる。いや、本心を言うとライコネンにはもっと頑張ってもらいたいのだが「このままじゃヤバイだろ」的状況が、確実に強まっているのは事実だろう。仮に「ライコネン」という大きなピースが動き、そこにアロンソがはまれば、今度はルノーのシートが空き、中段グループにも一気に変化の連鎖が起こることになるだろう。ここにきて「トロロッソ入りか?」というウワサも流れ始めた琢磨の将来ももちろん、こうした「中段グループの動向」次第、さてさて、どんな結末になるのやら…。


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F1放浪記
川喜田研(かわきた・けん)
 1965年(昭和40年)4月20日、横浜生まれ。91年から「F1速報」、「レーシングオン」のスタッフライターとして働き、99年からフリーのF1ジャーナリストに。  現在は「スポルティーバ」(集英社)「カーグラフィック」(二玄社)などに執筆中。  愛称の「ちんぱん」は、成人男子とは思えないほどの落ち着きの無さ(本人は旺盛な好奇心ゆえと認識していますが…)や、締め切り直前のパニック状態(昔は編集部で跳ねたり、踊ったり、叫び声を上げたりという奇行を演じていたようです)がチンパンジーに似ていたことに由来する。

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