2008年7月25日
シャキッとしねぇなぁ、今年のフェラーリ
前戦シルバーストンに続いて、またしてもルイス・ハミルトンの強さばかりが目立った先週のドイツGP。35周目に発生したティモ・グロック(トヨタ)のアクシデントで、コース上にセイフティーカーが入り、トップ集団の多くがピットインを行った際、マクラーレンが敢えてハミルトンをピットに入れず、コース上にとどまらせるという、いわば戦略上の大失敗を演じ、その結果、みすみすとトップの座をマッサに譲ったにも関わらず、最後は圧倒的なペースでそのロスを簡単に取り返しての2連勝である。
確かに重圧の中、雨のシルバーストンで見せた「最高のレース」の経験がハミルトンという怪物をさらに成長させたという見方もできるだろう。また、ホッケンハイムでのペースを見れば、マクラーレンのレース中におけるラップタイムの安定性が、ここにきて明らかに1段階上がったというのも事実だ。だからこそ、あんな戦略ミスを犯しても、それを簡単にリカバーすることができるのだ。レース後、ロン・デニスが無線で「すまんね、ルイス、チームの判断ミスで結果的に難しいレースにしてしまったが、結果的にはいいクルマでドライブを楽しむことができただろう?」と語りかけているのを聞いて、その余裕に正直「ムカッ!」っときたのだが、要はそのくらい楽勝だったということなのだ。

で、へそ曲がりの僕は考えた。「確かにマクラーレンのマシンとハミルトンは素晴らしかった。でも、チームがあんなミスを犯しても楽勝できるんじゃぁ、今後のシーズン心配だ」と。それは言い換えればこう表現することもできる。「マクラーレンの明らかな敵失に全くつけ込めないフェラーリも情けなさすぎるではないか!」と。レースが終わってから数日たった今、改めて思い返すほどに、どうも今年のフェラーリは締りがないなぁ…という思いが強くなるばかりだ。数字の上でのドライバーズタイトル争いは、ここ数年見たことがないほどの「接戦」なのに、なんだか緊張感が足りない気がするのは、あの赤い跳ね馬がいまひとつシャキっとしないからなのではないだろうか…と。
実際、今年のフェラーリは自らの判断ミスで「勝てるレースを失った」例が少なくない。雨がらみのレースとなったモナコやイギリスでは、天候の推移とタイヤ交換のタイミングを完全に見誤って結果的にレースを台無しにしてしまったし、今回のレースでも2種類のタイヤの使い方には正直言って疑問が残る。また、ドライバーの「集中力」という意味でもシューマッハー時代とは比べようもなく、ライコネンは時々「気の抜けたようなレース」を見せることがあるし、7回のスピンを喫したシルバーストンを筆頭にマッサの「ポカ率」は驚異的だ。いや、2人とも「速いドライバー」であることは良く分かっているし、個人的にはライコネンのつかみどころのなさや「良い子」の枠に収まらない、独特な不良っぽさにも引かれるのだが、ハミルトンの成長が著しい今、そのライバルとしてF1というドラマのもう一方の「極」を演じるには、2人とも、もう少し「締まり」がホシイのだ。そんなワケでふと「ああ、アロンソが今季のフェラーリに乗っていたらなぁ…」とか、思ってしまったりするのである。
いや、それにしてもホッケンハイムのフェラーリは遅かったなぁ…。予選一発の速さはともかく、レースペースの安定感では定評のある跳ね馬が、今回ばかりは別のチームのように苦戦していたのは正直、心配だ。「週末を通じて、キミもフェリペもグリップ不足とリヤエンドの安定感のなさを訴えていた。我々の長所であるレースペースがなぜ、今回のレースでは生かせなかったのか、どうしてタイヤをうまく使えなかったのか? その原因を早急に突き止めなければならないと思っている」とフェラーリのチーム監督を務めるステファノ・ドメニカーリ。ジャン・トッドが第一線を退き、ロス・ブラウンがチームを去り、皇帝シューマッハーがいないフェラーリが、これからもでかつての栄光を維持できるのか、それとも一気に下降線をたどり始めるのか? 今季から新体制でスタートしたマラネロの跳ね馬軍団にとってはここからのシーズン後半が「正念場」だ。
※2位になりファンの声援に応えるピケ。右は優勝したハミルトン(AP)
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