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2008年6月23日

トゥルーリはトヨタの「貴重な財産」だ!

 トヨタのヤルノ・トゥルーリが3位入賞を果たしたフランスGP! 2006年のオーストラリアGP以来というから、トヨタにとっては実に丸々2年と2カ月ぶりの「表彰台」である。2週間前のカナダGPに続いてマクラーレン勢がヘマをやらかすなど、いくつかの幸運があったとはいえ、予選でトゥルーリが5番手につけた「速さ」とそれを裏打ちする着実なマシンの進化があったからこそ実現した今回のリザルトだ。

 特にモントリオールの勝者、BMWのクビツァとトゥルーリはレース戦略も似通っており、条件面でほぼ「ガチンコ」の勝負に勝ったという意味は大きい。今季、ここまでマレーシア(トゥルーリ)カナダ(ティモ・グロック)と2度の4位を経験しているトヨタだが、そのポジションをしっかりと維持し続けてこれたからこそ、こうした「ワンチャンス」をモノにすることができたのだ。BMWに比べるとパフォーマンスの「波」が大きいのが課題だが、トヨタは混戦の第2集団の中で依然として「戦えている」ことを証明したと思う。

 それにしても、終盤の3位争いは熾烈だった! トゥルーリの背後から襲いかかるマクラーレンのコバライネン! いつしかその後ろにクビツァまで加わり、三つ巴のドッグファイトは見ごたえ十分、基本的に追い抜きの難しいマニクールだが、貴重な3位表彰台を最後まで守りきったトゥルーリの「いぶし銀」のテクニックに僕は拍手を惜しまない。フランスGPのトヨタを「今季3度目の4位」ではなく表彰台に導いたのは、ひとえにあのトゥルーリの「技」であったと言っていいだろう。並のドライバーであったなら、あの状況での3位防衛は難しかったに違いない。

 かねてからトゥルーリを高く評価している僕としては、彼の価値がこうして証明されたことが本当にうれしい! なぜなら僕は今でもトゥルーリのことを「数少ない本当の一流ドライバー」だと信じているからだ。ドライバーとしての才能やテクニック、豊かな経験、そして尽きることの無いモチベーション…。トゥルーリの存在はトヨタにとっては欠かせない「貴重な財産」だと思う。ところが、最近、トヨタの周辺から聞こえてくる関係者の声は「トゥルーリよりグロック」という色のハナシばかり…。もちろん、ルーキーのグロックがチーム関係者から高い評価を受けているのは良いことなのだろうが、それとの比較でトゥルーリへの評価を下げるのはいかがなものか?

 なぜ最近、トヨタ関係者の口からトゥルーリに対するネガティブな評価が出てくるのか? 僕にはその本当の理由はわからない。だが、仮に「マジメで良い子」なグロックのほうが扱いやすいことがその理由だとすれば、僕は到底納得できない。トヨタが今、ここから上のポジションを目指すために必要なのは、常に全力で戦いながら、同時に現状に対して「口うるさい」ほど文句を言ってくれる「注文の多いドライバー」であるべきで、決して聞きわけのいい「良い子」ではないはずだ。

 そろそろ「来季のドライバーラインナップ」がF1ニュースの話題になる季節がやってくる。ようやく表彰台を射程圏内に収めるまでに復活したトヨタにとっては、ここからが正念場。この大事な時期の、本当に重要なドライバー選択は絶対に失敗しないでほしいと思う。だからこそ「ヤルノ・トゥルーリは来季の構想外」的な声や「来季はグロックを軸に若手コンビで…」なんてウワサを聞くと、僕は心配でならないのだ。

 F1がモータースポーツである以上、どんな局面でも最後の決め手となるのは「ドライバーの質」だと思う。だからこそ「一流の才能」の存在が今回のフランスGPのように、ここ一番というシーンで大きな差をもたらすことになるのだ。いや、もしかしたらドライバーとしての「ピーク」は越えているかも知れないが、それでもトゥルーリは間違いなく「一流の才能」だし、その価値をチームが正しく理解していると信じたい。来季のトヨタがアロンソとかハミルトンみたいな大物を連れてこれるならハナシは別だけど、少なくともトゥルーリが構想外で「グロックが軸」なんてのは、絶対にあり得ないと思うんだがなぁ…。


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F1放浪記
川喜田研(かわきた・けん)
 1965年(昭和40年)4月20日、横浜生まれ。91年から「F1速報」、「レーシングオン」のスタッフライターとして働き、99年からフリーのF1ジャーナリストに。  現在は「スポルティーバ」(集英社)「カーグラフィック」(二玄社)などに執筆中。  愛称の「ちんぱん」は、成人男子とは思えないほどの落ち着きの無さ(本人は旺盛な好奇心ゆえと認識していますが…)や、締め切り直前のパニック状態(昔は編集部で跳ねたり、踊ったり、叫び声を上げたりという奇行を演じていたようです)がチンパンジーに似ていたことに由来する。

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