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2008年4月28日

スーパーアグリ存続危機問題の根は深い

 「一体どうして、こんな事になってしまったんだろう……」。スーパーアグリ存続問題に揺れたスペインGPの週末を終えた今、改めて感じるのは、そんな、どうにもやり切れない思いだ。

 シーズン開幕直前に「基本的な合意に至った」と発表されていたイギリスのマグマ・グループへのチーム売却交渉がスペインGP直前に「白紙撤回」され、再び破産の危機に直面することになったスーパーアグリ。チームは予定通りカタルーニャサーキットに姿を見せたものの、木曜日の時点では「走れるかどうかは分からない」(鈴木亜久里代表)という状態で、スペインGPの欠場はおろか、最悪の場合、そのままチームが消滅する可能性もささやかれていた。
 結局、ホンダがこれまでの3戦と同様、エンジンやギアボックスの供給を含めた、技術サポートを今回も継続することとなり、辛うじてバルセロナの週末を乗り切ったスーパーアグリだが、その財政状況はもはや破綻寸前であり、次のトルコGPまでに新たな出資者が現れなければ、今回のスペインGPが彼らにとって「最後のGP」となる可能性もあり、そうなれば佐藤琢磨もシーズン途中でシートを失うことになってしまう。
 これが、日本のF1に関わるすべての人にとって悲しむべき状況であることは言うまでもないだろう。佐藤琢磨、アンソニー・デビッドソンという2人のドライバーはもちろん、スーパーアグリのチームスタッフ、それをサポートしてきたホンダの技術者は厳しい状況の中で全力を尽くして戦い続け、その間、亜久里代表やホンダの関係者もチーム存続に向けて最大限の努力を続けてきた。しかそうした努力が報われず、シーズン途中でスーパーアグリが破綻するようなことになれば、国内のF1に対するイメージに計り知れないほどのダメージを与えることは間違いない。ここ数年、F1人気を支えてきた琢磨やスーパーアグリのファンたちの失望は、やがてやり場のない怒りとなって、日本の国内のモータースポーツシーン全体に暗い影を落とすことになるだろう。
 「我々もスーパーアグリ存続のために、できる限りの努力を続けてきました」と語るのはあるホンダの関係者だ。「3月の時点でマグマとの契約は基本的な部分で合意できていたし、マグマの出資者(中東、ドバイの投資企業であるDIC社)も我々の提示した条件を受け入れていた。ホンダはチーム売却後もエンジン供給やマシンを含めた技術サポートを保証していたんです」。しかし、そのDIC側が4月に入って突然、白紙撤回を表明。その後、ホンダ側が必死に翻意を促したことで、一旦は前向きな姿勢に転じたかに見えたDICだったが、結局、スペインGP開幕前日の木曜日に再び「スーパーアグリ買収交渉からの撤退」を宣言したために、すべてが振り出しに戻ってしまったのだという。

 今シーズンの開幕から3戦、ホンダはマグマへのチーム売却を前提にスーパーアグリへの技術支援を続けてきた。しかし、その前提が崩れた今「チーム再建の見通しが無い状態でこのまま支援を続けることはできない」というのが、おそらくホンダ側の本音なのだろう。形の上では「有償扱い」になっていた、これまでの技術支援についても、かなりの部分が未払いになっているはずで、冷たい言い方をすればスーパーアグリはホンダにとって今や一種の不良債権となっているのは事実だ。その状態を解消する最後の手段として期待されていた、マグマ・グループへのチーム売却が失敗に終わった今、ホンダ側には「既に万策尽きた……」との感が漂っている。もちろん、マグマ+DICに代わる新たな出資者が現れる可能性はゼロではいし、実際、チーム側にはいくつかのオファーが届いているというが、スーパーアグリに残された時間は少なく、状況は極めて厳しいと言わざるを得ない。

 もちろんF1は厳しい競争の場であり、厳しいビジネスの場でもある。年間に最低でも100億円近い資金が必要なこの世界で、ホンダを除けば、スポンサーのロゴがほとんど無いスーパーアグリのマシンを見れば、彼らがこのまま活動を続けていくことが極めて難しいのは誰の目にも明らかだろう。だが、僕がどうにもやり切れない気持ちになるのは、この不幸な状況が、単なるスポンサー不足による資金難や、今回、マグマへの売却交渉が失敗に終わったという問題ではなく、もっと根深い原因によって、もたらされたという気がしてならないからだ。ファンたちの「夢」を燃料として成立しているはずのF1が、なぜ、彼らの悲しみや失望をもたらす結果となったのか? スーパーアグリをとりまく複雑な状況と過去2年余りの歩みを振り返りながら、これからその原因をひとつづつ検証してみたいと思う。


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F1放浪記
川喜田研(かわきた・けん)
 1965年(昭和40年)4月20日、横浜生まれ。91年から「F1速報」、「レーシングオン」のスタッフライターとして働き、99年からフリーのF1ジャーナリストに。  現在は「スポルティーバ」(集英社)「カーグラフィック」(二玄社)などに執筆中。  愛称の「ちんぱん」は、成人男子とは思えないほどの落ち着きの無さ(本人は旺盛な好奇心ゆえと認識していますが…)や、締め切り直前のパニック状態(昔は編集部で跳ねたり、踊ったり、叫び声を上げたりという奇行を演じていたようです)がチンパンジーに似ていたことに由来する。

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