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2008年4月08日

真の勢力図が見えるのはスペインGP以降

 オーストラリア、マレーシア、バーレーンと3戦を消化し、ヨーロッパラウンド開幕に向けて短いブレークに入るF1GP。で、毎年、この時期にしなければならないのが、開幕前にしてしまった無責任な予想と現実のギャップを埋めるための「懺悔」である。通常は懺悔などという言い方はせず「開幕3戦を終えて見えてきたこと」なーんて言い方でシラっと流してしまうのだが、毎年おんなじコトを繰り返しているあたり、自分の反省の無さにあきれてしまう。まぁ、それだけF1が奥深くて読みづらいってコトにして、若干の軌道修正をしてみると……。

◆2強なのか、3強なのか? それが問題だ◆
 今シーズンの展望を開幕前に聞かれたら、僕に限らずほとんどの人が「フェラーリ対マクラーレンの2強対決が軸だが、おそらくフェラーリがやや有利」という感じだったと思う。だが、開幕3戦を終えて誰もが感じるのはBMWの見せた予想以上の戦闘力。「もはや2強ではなく3強対決なのでは?」「いや、既にマクラーレンより上なのでは」という声まで出はじめているようだ。
 もちろん冬のテストの印象から言えば、伏兵、BMWの活躍が予想を大きく上回るモノであることは事実だ。ロベルト・クビツァが初のポールポジションを獲得した先週のバーレーンでは、決勝のレースペースでもBMWがマクラーレンを上回る安定感を見せていた。ただし、BMWのこの勢いがシーズンを通じて2強と対等に争えるモノであるかは、もう少し様子を見てみなければ分からないとも思う。現時点でマシンのポテンシャルが高いレベルにあることは間違いないが、ヨーロッパラウンド以降の開発でBMWがライバルと対等、あるいはそれ以上のペースを保てるのか? クビツァという次の時代を担う才能の成長とともに、今後のシーズンを左右する大きなポイントとなりそうだ。

◆大激戦の第2グループを再整理◆
 一方、フェラーリ、マクラーレンの2強に続く「第2集団」だが、こちらも予想を上回る大激戦となっている。伏兵BMWの「1部リーグ仮昇格」で、チーム的には4番目のポジションを狙う、この第2集団だが、事前に下馬評の高かったウイリアムズ・トヨタに加えてトヨタ、レッドブル、ルノー、ホンダ、トロロッソまでが第2集団を形成。中でもトヨタのパフォーマンスが光っており、ウイリアムズとともに「第2集団の先頭をうかがう勢い」を見せる。また、昨年に続いて厳しいシーズンが予想されたホンダも、バーレーンではバトンが予選トップ10に入るなど、徐々に光が見えてきているだけに、あとはそれをキチンと結果につなげるレース運営を期待したい。現時点での力で言えば、ウイリアムズ、トヨタ、レッドブルあたりが上位を占め、ホンダ、ルノー、トロロッソがそれを追う状況か。ただし、集団全体の戦闘力はかなり接近しており、その中でドライバーの果たす役割はかなり大きいといえるだろう。ちなみに開幕戦でいきなり6位入賞を果たした中嶋一貴に関しては、その後の2戦も総合すると、まだ「勉強中」という感じだと思う。課題は予選! 1発アタックのツボをつかみ、予選上位からレースをできるようになれば、週末の流れがグッと良くなるはずだ。

◆明暗分けた日印2チームの序盤戦◆
 さて、最後に残ったのは昨年のスパイカーからインド風に模様替えしたフォース・インディアとスーパーアグリの「アジア系プライベーター勢」2チームだが、何とか参戦継続にこぎつけたものの、苦しい戦いが続くスーパーアグリに対して、フォース・インディアは予想以上の活躍を見せていると言っていいだろう。インドの富豪、マラヤ氏のサポートで資金面が安定したとはいえ、昨年のスパイカーを改良したマシンと現在のチーム体制で、今シーズンにできることは限られていると思っていたのだが、なかなかどうして、ここまでの戦いぶりは予想をはるかに上回っている。ベテラン、フィジケラの奮闘と限られた条件を最大限に生かしたマシン作りやレース運営。結果はともかく、状況次第では第2グループの下側を食える可能性を、この3戦のフォース・インディアは見せてくれたと思う。
 一方、スーパーアグリはバーレーンでも新体制に対する具体的な発表はなく「暫定的に参戦を続けているだけ…」という印象は否めない。そんな状況下でステアリングを握る佐藤琢磨やアンソニー・デビッドソンの気持ちを考えるとなんとも切ない気持ちになるが、次のスペインGPまでには状況の進展があるのだろうか? シーズン途中からはマシンを今季型のホンダと同じものに変更するということなので、それが実現すれば状況は変わるのだろうが……。

◆そして最後にスキャンダル…◆
 予想以上に良かったチームやドライバー、思わぬ壁に突き当たっている人…、毎年、こうして実際に開幕してみると冬のテストでは分からなかった様々なことが見えてくる。しかも、次の第4戦、スペインGPからはいよいよヨーロッパラウンドに突入。アジア、オセアニア遠征の3連戦を終えたこのタイミングで各チームともマシンの大幅な改良、アップデートを施してくるため、本当に今シーズンの戦力地図が見えてくるのはスペインGP以降だと言えそうだ。ちなみに、先が読めないという意味では「下半身のスキャンダル」に巻き込まれたマックス・モズレーFIA会長の立場もいよいよ追い詰められ始めている。この問題については、また、別の機会に詳しく触れたいと思うが、あれほど絶大な権力を誇ったモズレー氏がまさかこんな形で寂地に陥るとは、彼自身も予想だにしていなかったに違いない。

F1放浪記
川喜田研(かわきた・けん)
 1965年(昭和40年)4月20日、横浜生まれ。91年から「F1速報」、「レーシングオン」のスタッフライターとして働き、99年からフリーのF1ジャーナリストに。  現在は「スポルティーバ」(集英社)「カーグラフィック」(二玄社)などに執筆中。  愛称の「ちんぱん」は、成人男子とは思えないほどの落ち着きの無さ(本人は旺盛な好奇心ゆえと認識していますが…)や、締め切り直前のパニック状態(昔は編集部で跳ねたり、踊ったり、叫び声を上げたりという奇行を演じていたようです)がチンパンジーに似ていたことに由来する。

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