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2007年4月20日

開幕3戦で見えてきたぞ2007年序盤戦

 数年前までは「番狂わせ」も多かったけれど、最近は各チームの実力がキッチリと反映されることが多くなってきたシーズン序盤戦。特にメルボルンから始った今年の開幕3戦は2007年シーズンのアウトラインが比較的分かりやすい形で見える内容だった気がする。次のバルセロナまでは1カ月弱ほどあるので、ヨーロッパラウンドからは新たな展開があるかもしれないが、とりあえず現時点で見えてきたものを確認してみると…。

1・タイトル争いの軸はフェラーリとマクラーレン
 開幕前の予想通り、今シーズンはフェラーリとマクラーレンが2強を形成。冬のテストではフェラーリの圧倒的な優位を危惧する声もあり、ライコネンが圧勝した開幕戦のメルボルンではそれが証明されたようにも見えたが、その後の2戦、マレーシアとバーレーンを見る限り、マクラーレンもかなりの戦闘力を秘めており、序盤からフェラーリ独走という状況ではないようだ。

 また、ドライバーズタイトル争いに関してもライコネン対アロンソが軸であることは間違いないものの、マクラーレンからデビューした驚異の新人、ルイス・ハミルトンが開幕から3戦連続の表彰台(新人として史上初)。マレーシアの失態でミソがついたマッサも、バーレーンでは完璧なレースで優勝を飾って名誉挽回を果たしており。当面はこの2チーム、4人を中心にシーズンが展開しそうな雰囲気。

2・ホンモノだったぞ、ハミルトン
 ゴーカートに乗っていた10歳のときにマクラーレンのロン・デニスに見初められ、12歳でマクラーレンと契約。フォーミュラ・ルノー、F3、そして去年のチャンピオンとなったGP2シリーズとトントン拍子にフォーミュラの階段を駆け上ってきたルイス・ハミルトンが満を持してのF1デビュー。その内容は上の項にもあるように文句ナシ、期待以上の出来だった。天性のスピード、集中力、冷静さ、思い切りの良さ…レーシングドライバーとしての資質の高さはわずか3戦のレース内容にもハッキリと現れており「デビューイヤーでの優勝」への期待はもちろん、今季のチャンピオン候補の1人に挙げる声も少なくない。「F1界のタイガーウッズ」登場に注目と期待は高まるばかりだ。

3・王者ルノーの失速、BMW急上昇中
 昨年、一昨年と2年連続でタイトルを獲得した王者ルノーが明らかに失速し、表彰台にも届かない…。今年はベテランのフィジケラと新人、ヘイキ・コバライネンのコンビで戦うルノーだが、昨年までのエース、フェルナンド・アロンソの移籍がダメージとして効いているのか? それともルノーの失速を事前に予感したアロンソが移籍したのか? ハミルトンと共に注目の大きかったフィンランドの新人、ヘイキ・コバライネンも、今のところはや期待はずれの内容に終わっている。一方、そのルノーに代わって急上昇中なのが2年目を迎えたBMWザウバー、手堅いマシンづくりながら、2強以外ではスピード、安定感ともに飛びぬけており、バーレーンではニック・ハイドフェルドがコース上でアロンソを追い抜くシーンも! 2年目のロベルト・クビサも着実に成長し、前半戦のダークホース的存在に!

4・ピンチから明暗分けたトヨタとホンダ
 開幕前のテストでは共に「苦戦」が報じられたトヨタとホンダ。しかし、実際にシーズンが始ってみると、両日本メーカーの状況はハッキリと明暗を分けた。トヨタが開幕からの3戦連続で予選トップ10に進出し、レースでも着実にポイントを獲得したのに対して、一方のホンダは第3期F1活動が始って以来「最悪」といってもいい悲惨な状況。ジェンソン・バトン、ルーベンス・バリチェロの両ドライバーも入賞はおろか、予選第1セッション通過すらおぼつかないGPもあり、チームはブレーキング時の安定性に致命的な問題を抱えたニューマシン、RA107の大幅な改良を迫られている。ただし、ホンダがあまりに「真っ黒」な状況なので、それと比較して「明」に見えるトヨタも、予選トップ10から8位、7位入賞という現在の状況が「目いっぱい」で、そこから上を目指す勢いが現時点では感じられないというのも事実。ホンダは当面、大幅改良したマシンが出てくるカナダGPあたりまで、大幅な改善は期待薄?

5・スーパーアグリが見せた大変身と課題
 メルボルンでは佐藤琢磨が予選トップ10に進出! 去年、最下位争いの常連だっだスーパーアグリF1が、たった1年で見せた大きな進歩は開幕戦のパドックでも大きな注目を集めたが、その後の2戦でも今年のスーパーアグリが「そこそこ戦える」パッケージを持っていることが証明されたと言えるだろう。昨年のハンガリーGPで優勝したホンダF1(RA106)をベースに開発されたと言われるニューマシンのSA07が、本家であるワークスホンダのマシンを上回るスピードを見せることも多く、佐藤琢磨、アンソニー・デービッドソンのコンビが昨年とは全く異なる「まともにレースできる状況」で戦う環境が整ったと言えそうだ。ただし、期待された大手スポンサーの獲得もなく、技術面を含めて多くをホンダに依存するスーパーアグリの現状は、一部チームが問題視している「カスタマーカー問題」との絡みも含めて潜在的な不安要素となっており、ここから将来に向けていかに安定したチームの基盤を作れるかが、今シーズンの大きな課題に。

 …この他、ウイリアムズのテストドライバーとして開幕2戦で金曜日フリー走行に出場、チームから高い評価を受けた中嶋悟の長男、中嶋一貴の快走や、思いのほか振るわない、巨匠、エイドリアン・ニューイのデザインによるレッドブル&トロ・ロッソ、今後もひと悶着ありそうな「カスタマーカー」問題など、様々な話題があった開幕3戦だが、ヨーロッパからの長距離遠征となる序盤の一幕目はこれでとりあえず一区切り、バルセロナ、モナコと続くヨーロッパラウンドでは、一体どんな展開が待っているのだろう? 少なくとも、新時代の幕開けに相応しい変化に富んだ今シーズンのF1が僕たちを退屈させることはなさそうだ。

F1放浪記
川喜田研(かわきた・けん)
 1965年(昭和40年)4月20日、横浜生まれ。91年から「F1速報」、「レーシングオン」のスタッフライターとして働き、99年からフリーのF1ジャーナリストに。  現在は「スポルティーバ」(集英社)「カーグラフィック」(二玄社)などに執筆中。  愛称の「ちんぱん」は、成人男子とは思えないほどの落ち着きの無さ(本人は旺盛な好奇心ゆえと認識していますが…)や、締め切り直前のパニック状態(昔は編集部で跳ねたり、踊ったり、叫び声を上げたりという奇行を演じていたようです)がチンパンジーに似ていたことに由来する。

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