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2008年8月13日

高校野球と家族のきずな

 甲子園も3回戦まで進み、続々とベスト8が決まっている。九州、沖縄、山口の地元勢も悲喜こもごもの試合を繰り広げている。

 初戦で敗れた佐賀商の津田捕手は、取材を受けながらポツリと言った。「おじいちゃんとおばあちゃんにいい報告がしたかったけど、だめでした」。祖父母が大好きだったという津田。いつも野球を見に来てくれていた祖父は中学時代に亡くなり、祖母は夏の大会前に亡くなった。津田は2人の写真を部屋に飾り、朝晩手を合わせていたという。試合当日にはバッグに写真を入れてベンチ入り。だが、2人に勝利を見せてあげることはできなかった。

 「野球の神様が私たちにプレゼントしてくれたって思うんですよね」。飯塚のエース辛島の祖父・弘明さんは誰よりも孫の甲子園出場を喜んでいた。30年にわたって少年野球リーグの運営に携わってきた祖父と、辛島の中学時代、毎日車で30~40分もあるグラウンドまで送り迎えをしてきた祖母。ずっと野球にかかわってきた2人に神様は「孫の甲子園出場」という最高のプレゼントをくれたのだと、弘明さんは話してくれた。「甲子園まで連れてきてくれて、本当に感謝していますよ」と言っていたのは宮崎商のエース赤川の父典夫さん。敗れはしたものの、延長まで投げ抜いた息子を誇りに思っているだろう。「県大会からずっと投げてきて疲れてるだろうと思う。もういいから、本当は代えてもらいたいんですよね」。あるチームのエースのお父さんはマウンドで黙々と投げ続ける息子を見ながらポツリ。チームの勝利よりも、何よりも息子が大事。これもまた偽りない親心だろう。

 甲子園で取材をしていると「家族のきずな」をひしひしと感じる。小さい頃から野球に打ち込む選手をずっと見守ってきたのは家族だ。地方大会などでスタンドに取材に行くと、選手のお母さんたちに「お茶どうぞ」とか「暑いでしょう。大変ですね」と冷たい飲み物をいただいたりする。いくら我が子のためとはいえ、炎天下のスタンドでずっと見ているお母さんたちの方が大変ですよ、とあるお母さんに話したことがある。「息子が暑い中頑張っているんですからね。私たちは見ることしかできませから」とそのお母さんは笑って言った。

 親が子、子が親を殺すという信じられない悲惨な事件をよく目にする最近の日本。だけど、高校野球を見る限り、家族のきずなはまだなくなっていない。アルプスで応援する家族を取材するたび「日本はまだ大丈夫。捨てたもんじゃないぞ」と心の中でつぶやいている。

(前田泰子)


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村田義治(むらた・よしはる)
 92年(平成4)入社。レース部、整理部を経て報道部。00年夏からアマチュア野球、ラグビーなど一般スポーツ担当。J2福岡、鳥栖中心にサッカー取材にも当たる。36歳。
前田泰子(まえだ・やすこ)
 92年(平4)入社。野球、柔道、陸上などアマチュアスポーツ全般を担当。98年から福岡を担当した。03年から販売部など他部署を経て、06年から再び記者に復帰。現在は野球を中心にアマチュアスポーツ全般を取材している。2児の母。
佐藤千晶(さとう・ちあき)
 94年(平6)入社。報道部で約2年間、アマチュアスポーツ、レジャーを取材。96~05年は整理部で紙面レイアウトを担当。06年、報道部に復帰し、07年から福岡担当。1969年、北九州市生まれ。

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