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2009年11月04日

雨に負けワナにはまってリタイア<房総400キロ・その2>

 10月24日の房総半島は雨が降り続いていた。正午に袖ケ浦をスタートし、マザー牧場のお山を越えてスタートから約40キロ地点の最初のコントロールポイント(PC)に着いたのが、午後1時50分ごろ。上半身はレインウエアがあるからいいが、何の雨具もない下半身、特にシューズはびしょ濡れになっていた。残りは360キロ。おやじは気持ちをへこませながらも、トマトジュースを一気飲みし、房総最南端の野島崎目指して走り出した。

 PCにとまっているときはささやかに感じた雨粒も、自転車で走り出せば普通の雨となっておやじを襲ってくる。普通の雨なら? 当然、土砂降りだ。

 富津市更和のPCを出たあとは国道465号を東へ向かい、滝の不動尊入口からはもみじロード(県道182号)へと入り、志駒川に沿って南下していく。

 もみじロードは楽しみにしていた道だった。車の通行量も少なく適度なアップダウンが続く気持ちのいい道だ。紅葉にはまだ早いが、自然の香りをたっぷりとかぐことができる。昨年が雨だっただけに「今年こそ!」と思っていたおやじだが、今年も雨とは…。房総なんてめったに来れないんだから、晴れとはいわないが、せめて雨は落ちてきてほしくなかった。

brm091024_12.jpg

志駒湧き水(富津市志駒)

 PC1から8キロほどのところにある志駒湧き水でストップした。水を補給するわけではない。口を開けていれば水分は補給できるので(笑)、ボトルの水はほとんと減っていない。トイレへ行きたかったのだ。だが、2つある簡易トイレは先客がいてなかなか出てこない。しばらく待ったが、出てくる様子もないのであきらめて我慢することにした。ツール・ド・フランスだったら、乗ったままやってもいいのだが、そうもいかないしねぇ。

 ここでデジカメはジップロックに入れ、サドルバッグにしまった。晴れだと思って、防水機能の付いていないデジカメを持ってきてしまっていたのだ。この先は、撮影の楽しみもなく、雨に耐えながらただ走るだけとなった。

 もみじロードは上りのトンネルを抜け、長狭街道(県道34号)とぶつかるところで終わりとなる。この┳字を右に行けば横根峠、そして保田となりそこから少し北上すれば浜金谷。久里浜への東京湾フェリーが発着する港がある。神奈川へあっという間に帰れるのだが、車を袖ケ浦に置いていることだし、もしかして雨がやむかもしれないので、ここはキューシート通りに左へ曲がろう。

 曲がった途端に急な上りが始まるが、鴨川市へと入ったところからは気持ちのいい下りとなる。その下りの途中の┣字を右へ曲がるのだが、ここで距離を読み間違えた。あるべきはずの┣字がなかなか現れない。行き過ぎると上り返しは地獄だ。昨年の帰路でここを上り返したときは途中で足を付いたほどの急坂。思わずブレーキをかけスローダウンして不安な気持ちで下っていると、豪快に抜かれた。どうやら正しかったようだ。

 ┣字を曲がってからは約3キロの上りとなる。狭いくねくねした道を数人のブルベライダーとともに上っていく。スピードが遅い分、雨もそれほど感じない。

 南房総市に入ったところがピーク。そこからは、下りからほぼ平たん基調の道となったので、快調に飛ばしていく。目的地はピークから12キロ先の道の駅三芳村。そう、我慢しきれなくなっていたのだ(爆)。

 道の駅ではトイレだけでリスタートしたのだが、このころから腹が減ってきた。野島崎であわびラーメンを食べようと思っていたのだが、そこまで持ちそうもないし、全身びしょ濡れで背中は砂だらけの体で店に入るのは気がとがめる。仕方ない。次のPCで相も変わらぬコンビニめしにするか。

 やはり雨だと景色も良くないし、計画したことはほとんどできない。メシもコンビニ以外では食べられない。シューズの中に水もたまってきた。何だか楽しくないなぁ。でも、完走はしたい。平たん区間を走りながら、気持ちは揺れ動いていた。

午後4時すぎにPC2(南房総市白浜=91・4キロ地点)到着

 PC2にも数多くのブルベライダーがいたが、みんなちょっとでも雨を避けるべく、ほんの少ししかないコンビニエンスストアの軒先で補給をしていた。おやじも立ったまま、塩カルビ弁当をかきこんだ。

 PC2を出るとすぐに海が見えてくる。国道410号に入り、白浜、野島崎と過ぎていく。目当てにしていたあわびラーメンの店はガラガラだった。「あれなら入れたか。くそ~、弁当食べなきゃよかった」と思っても後の祭りだ。

 暮れなずむ海岸線を、向かい風と闘いながら走る。平たんなのに時速30キロは出ない。名倉海水浴場のあたりで国道から「町道海岸通り」へ入る。海は荒れ気味。あちこちで豪快な波しぶきが見られた。

 道の駅千倉潮騒王国のあたりで暗くなり始め、北蝦夷交差点からフラワーライン(国道410号)に出るころには完全に真っ暗となった。

 ずっと向かい風だったので、北蝦夷交差点あたりから名も知らぬブルベライダーと「あうんの呼吸」で先頭を回しながら走っていた。だが、ぴったりくっついてしまうと前方が見えづらい。この状態は雨の夜は特に危険だ。それに後輪の水しぶきもまともに顔にかかってしまう。そのため少し離れ気味についていたのだが、道の駅ローズマリー公園のあたりでおやじはちぎれた。

 キューシートも見づらくなっていた。ジップロックに入れているので濡れはしないのだが、字が小さい。今回のコースはポイント数が多く、PCからPCを1枚に収めるようにしているため、自然と小さな文字になってしまったのだ。キューシートを入れ替えるためにストップしたくないというのが理由だが、これでは老眼のくせに自ら首を絞めているようなものだった。

 フラワーラインから外房黒潮ライン(国道128号)を走り、スタートから123キロ地点の道の駅鴨川オーシャンパークでひと休みした。このころには雨は普通に降っていた。もう一度走り出すためには、強い意志が必要だった。

 鴨川から海岸線に別れを告げ、北上を始める。県道24号の緩やかな坂を上り、鴨川有料道路に入る。ピークの料金所の先までは約3キロ。登坂車線も現れるが、急坂はなくこいでいれば何となく上れてしまうような坂だった。1人のブルベライダーに抜かれたが、それはおやじのお約束ということで…(笑)。

 料金所で二輪用レーンに入り、料金箱に20円を放り込むと、箱の上にあったランプがオレンジ色に点灯しクルクル回り出した。一瞬慌てたおやじだが、これが料金を入れたという合図のようだった。

午後7時ごろにPC3(君津市笹=143・3キロ地点)到着

 料金所から少し上り、気持ちよく下る途中の道の駅ふれあいぱーく・きみつ手前にPC3がある。数人のライダーが羽を休めていた。走っているときはいいのだが、とまっていると寒さを感じるようになってきていた。雨も相変わらず降り続いている。

 おにぎりとサンドイッチをほお張り、冷えた体で再び走り始めた。次は三石山登坂だ。

 三石山の入口は真っ暗な┣字。キューシートの距離表示より手前にあったためか、行き過ぎてしまった人が数人、上り返していた。そのライトが目に入らなかったらおやじも行き過ぎていただろう。道は真っ暗で見えず、「三石山」という白い看板がかろうじて見えるだけだった。

 ここの上りも約3キロ。最初は緩やかだが、やがてこう配の厳しいクネクネした道となる。街灯はもちろんなく、真っ暗闇。道は荒れ気味。「パンクするな~」−それだけを祈りながら上る。

 上る途中で霧が出てき始め、前方はますます見づらくなってきた。だが、上らなければ先へ進めない。黙々と上り続ける。ここでは2人に抜かれた。おやじ、相変わらず遅い。

 厳しいと思った上りだが、距離が短いこともあってそれほど汗もかかずピークに到着した。ここには三石山観音寺があるのだが、見えるのはトイレからもれている明かりだけ。長いは無用と下ろうとしたら、メカトラでストップしていた知り合いに会ったので、都合3人で下ることになった。上りではなかなかペースは合わないが、真っ暗の下りでは速度にそれほど差は出ない。おまけに3人分のライトがあるので明るい。といいながら、その恩恵を一番受けているのは最後尾のおやじだけだったが…。

 三石山を下りてからは国道465号を走り、老川十字路からは県道81号を走る。アップダウンが続く道だ。いつしかおやじは先行する2人からちぎれていた。

 養老渓谷付近の自販機で一度休憩。その後は水しぶきを上げながら平たん基調の道を疾走した。

 そして、往路の最後の難所、うぐいすラインを迎える。折り返しまで残り20キロ地点の、国道409号の原田交差点から北上するこの道は「うぐいす」という可愛い名前とは裏腹に、いきなり急坂から始まり、その後もきついアップダウンが続く。

 うぐいすラインを5キロほど走ったところで、折り返してきたライダーとすれ違った。おやじとは30キロの差だ。時間にすると2時間近く。その後すれ違った2番目のライダーとはかなり差が離れていたので、ダントツのトップだった。

 実は、養老渓谷あたりでリタイアを考えていた。予報によると、雨はおやじがゴールするまで降り続くことになっている。完走したい気持ちはあるのだが、これ以上寒い雨の中を走る気がしなくなっていた。

 そして、リタイアの甘い誘惑に抵抗できなくなってきていた最大の理由は、折り返し地点とスタート/ゴール地点の袖ケ浦がたった30数キロしか離れていないこと。通常ならあり得ないコース設定で、400キロを走るならショートカットをしても少なくとも150キロ以上走らなければ、ゴールへは戻れないだろう。これは「千葉ブルベ400キロのワナ」なのだ。そのワナにおやじは見事にはまってしまった。

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午後10時50分ごろにPC4(市原市瀬又=203・5キロ地点)到着

 折り返し地点にはスタッフが待機していた。そのスタッフにリタイアを告げる。体は元気だが、心が雨に負けた。ワナにもはまった。だが、無念という気持ちはない。これもブルベ。無事に帰ることが一番だ。

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リタイアしてほっとしたのか、笑顔のおやじ(市原市瀬又)

 おやじの後に、もう1人が「勇気ある撤退」宣言。さらにそれを聞いていたライダーも悩んでいたが、結局リタイアしたもようだった。やはり雨のブルベは厳しい。おやじが宣言した時点では7人だったが、終わってみると20人がリタイアしていた。それに対し、見事完走したライダーは女性も含めて45人いた。ヘタレなおやじに比べて、体も心も強い人たちだ。尊敬に値する。

 さて、千葉は右も左も分からぬおやじだったが、ゴールへのコースはPC4前の道をまっすぐ行き、ぶちあたった国道16号を南下すればいいという、簡単なもの。ただ、国道は避けた方がいいとスタッフに言われたので、適当に県道をつないで走り、ゴール手前からは同じリタイアしたライダーに先導してもらった。33キロのど平たんコースで、午前1時前後にゴールへと到着した。

 今年最後のおやじのブルベは、こうして中途半端な結果に終わったのであった。おやじ、本当に雨にからきし弱いねぇ…。(この項終わり)

【電子メディア局 石井政己】


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休日は風になる 〜イベント・レースレポ〜
石井政己(いしい・まさみ)
 1958年10月30日、岡山県生まれ。慶大卒。82年日刊スポーツ入社。広告局、編集局整理部などを経て08年11月より電子メディア局勤務。04年45歳のとき、減量のためMTB「UGO 片山右京モデル」を購入。休日サイクリングを始める。翌05年に小径車「BD−1」、さらに06年にはロードバイク「FELT F5C」購入と自転車熱はエスカレートした。レース初参加となった「日産スタジアムサイクルパークフェスティバル」(06年12月)で3位入賞(といっても9チーム中)。07年からヒルクライム、ブルベなどに参加。体重は自転車をやる前からは約15キロ減。
柴田隆二(しばた・りゅうじ)
 福島県出身の56歳。明大卒。編集局写真部。自転車はスペシャライズド(約13万円)で、自転車歴は6年ぐらい。写真部デスク時代、社内でエアロバイクで運動不足の解消をしている最中に、外に出て自転車をやろうと決意した。いい加減な練習のため(月10日から15日の練習。1日、時速25キロから27キロで休憩をはさみ40キロ)、現在も趣味として続行中。シマノの鈴鹿大会に2年連続参加(20キロ)、「ツール・ド・ちば」には3年連続出場し昨年、初めて3日間389キロを完走し「オヤジでもまだまだやれることを実感」した。3日目には自分の前を走る元F1ドライバー片山右京さんの背中を見つめて約20キロを走る。「千葉ツインレイクエコサイクリング2008」の130キロ佐原コースの手賀沼、印旛沼、利根川サイクリングロードは最高のコースだと走るたびに感動している。

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