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2009年11月05日

森本の「賢さ」に注目してほしい

 スポーツは心の揺れが大きくプレーに出る。サッカーは特にその傾向が強い。喜怒哀楽の感情ではなく、試合の中で「何か」を感じ取る力が重要だ。10月の国際試合3試合で、新戦力の感性が目にとまった。

 まず、森本の賢さに触れたい。ゴール前での動きの速さを誰もが評価した。DFを背にボールをもらい、前を向く。敵が密集するペナルティーエリア内でも、スコットランド戦で見せた反転シュートや、トーゴ戦でDFを振り切ったプレーなど内容があった。

 単なる動きの速さだけではない。相手DFの予測を超えている、という点で優れていた。相手DFは森本をマークし、ボールのもらい方、トラップの速さ、角度、ドリブルのリズム、そこから彼の間合いを測る。その感覚を元に守備を組み立てていく。森本が優れているのは、そのDFの間合いを逆に見極め、分析し、学習するところだ。

 あのDFはこの間合いで詰めてくるだろう。この直感的なものを試合で常に、察知→実践→修正、というサイクルで高めている。単にプレーが速いという次元よりも、相手に順応できるところに値打ちがある。今までいなかったFWと言っていい。堅く激しいディフェンスを伝統とするイタリアでもまれたから身につけられる希少な術だ。

 本田にも興味深いものを見た。スコットランド、トーゴ戦で2回ほど、本田はハーフラインよりも相手陣地の中央でボールを受け、ドリブルから中距離シュートを打っている。これはチームが本田の特質を認め「お前の持ち味を発揮しろ」とのメッセージだった。それを受け止め、シュートで終わった点はいい、だが、やはり決めないと信頼は得られない。

 一方、本田がサイドでボールを持った時に課題が見えた。ボールを受けた時には余裕があるのに、パスを出す時に余裕は消える。思いやりがない。パスの受け手に本田の焦りが伝染してしまう。

 サイドから攻めを組み立てる起点だ。意図と信頼を込めたパスでなければならない。状況を正確に速く判断し、自分の特性を使い分ける。本田はそれを確実に実践する責任を負う。

 サッカーファンにはそんなところを見ていただきたい。ゴールを期待させるパスの連続性は見応えがある。逆に相手ボールでもそこに焦りの連鎖があれば、逆襲への期待になり、攻防への興味はさらに沸く。サッカーは人の心が如実に出る。ボールがラインを割るか、ファウルがない限り、人は動き、心も揺れ続ける。日本のサッカーはその感性の世界に入ろうとしている。相手が弱い、主力が不在だなどの表面的なものより、技術に裏打ちされた精神的なものへと目を向けよう。その洞察がチームを育てる推進力になる。


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川淵三郎「キャプテントーク」
川淵三郎(かわぶち・さぶろう)
 1936年(昭11)12月3日、大阪・高石市生まれ。早大時代の58年に日本代表に初選出。卒業後に古河電工に入社し、64年の東京五輪に出場、72年に現役引退した(国際Aマッチ26試合8得点)。古河電工、日本代表監督を歴任し、91年にはJリーグ初代チェアマンに就任。02年には日本協会会長となり3期6年務めた。7月から同協会名誉会長。現在、日本サッカーミュージアム館長も兼務している。

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