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2009年10月08日

あえて本田に苦言を呈す

 これから8カ月、日本代表は全エネルギーを注ぎ込み、W杯南アフリカ大会ベスト4へ突き進んでいく。アジア予選のような結果だけにこだわる試合から、世界に日本サッカーの魅力、可能性をアピールするサッカーへと上り詰めていく。より高度な試練へかじを取らなければならない。

 目指す目標は高い。そのためには代表チームは常に新鮮な刺激が必要であり、生き残りへの緊張感も増していくだろう。私は9月のオランダ遠征を見て、MF本田に多くの可能性を感じ、チームに多くの産物を生むと楽しみにしている。

 本田という存在はおもしろい。どこか仲良し集団の感が否めない岡田ジャパンにおいて、ズケズケと物を言うその存在は異質だ。チーム内に波風が立たず仲が良い、そんなチームが強いとは限らない。普段は仲は悪いが、試合の勘所で瞬時に共通のイメージがひらめく集団は強い。

 本田のもたらす効用が期待できるからこそ、私は本田に苦言を呈す。「いらんところで、いらんエネルギーを使うな」。中盤でボールをこねて、相手に囲まれながらキープしたとして、それが何になるのか? そこに本田は気がついているのか? 本田がもっとも期待されるのは、あの豪快なミドルシュートだ。

 ゴールへの道が見えた時「本田なら打てる」とチームが感じたなら、仲間はマークを引き連れてサイドへ流れ、本田のためにシュートコースを開けてやるだろう。そして、強烈なミドルをGKがはじいた瞬間を狙って、ゴール前に詰めるはずだ。

 つまりチームメートのサポートは絶対に必要になる。そして、サポートの裏付けは相互理解しかない。周囲が彼の存在を認める働きを、本田が自力で示すしかない。

 サッカーとは意地悪なスポーツでもある。昔、ラモスが読売クラブ(現東京V)、日本代表の司令塔に君臨していた90年代初頭、カズが試合に出てもラモスからのパスはほとんど出なかった。それはラモスがカズの実力に懐疑的であったからで、カズは自分の力量を認めてもらえるまで、その試練に立ち向かい、乗り越えた。

 自身のプライドや新参者への警戒感、先入観、そうした本能的でストレートな感情をむき出しにするスポーツでもある。本田は試合の中で自分の価値、値打ちを発揮するしかない。彼の個性が代表の中に埋没せず、貴重な一戦力として認められ、そして本田の後を追うように、まだ見ぬ原石が次々と現れるよう、願わずにいられない。


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川淵三郎「キャプテントーク」
川淵三郎(かわぶち・さぶろう)
 1936年(昭11)12月3日、大阪・高石市生まれ。早大時代の58年に日本代表に初選出。卒業後に古河電工に入社し、64年の東京五輪に出場、72年に現役引退した(国際Aマッチ26試合8得点)。古河電工、日本代表監督を歴任し、91年にはJリーグ初代チェアマンに就任。02年には日本協会会長となり3期6年務めた。7月から同協会名誉会長。現在、日本サッカーミュージアム館長も兼務している。

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