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2009年4月08日

痛がるな!ダルのタフさ見習え

 まず侍ジャパンのWBC連覇に心から敬意を表したい。自戒を込め、お見それしましたと、原監督以下全選手、ファンにお伝えしたい。このコラムで「連覇はほとんど不可能」と書いたが、いかに私の日本野球への読みが甘かったか、痛感している。

 今回の韓国戦を見て痛切に感じたのは、投手の「孤独」だ。韓国との決勝で、9回裏に救援したダルビッシュ。同点にされ、明らかに流れは韓国に。誰も助けてくれないあのマウンドで、彼はたとえようのない重圧に耐えしのぎきった。あの孤独感をサッカーにたとえようと考えてみたが、どの場面にも当てはまらない。投手だけが負う孤独だと思う。

 抑えを譲った藤川の胸中をダルビッシュは十分理解し、その気持ちを背負っていたのだろう。藤川の悔しさや、チームを思う気持ち、そのチームメートの思いこそが、彼を絶体絶命の苦境で支えたとも言える。チームスポーツが持つ不思議な心のつながりが、9回裏にあった。

 WBCに比べ、サッカー日本代表はどうか。率直に言って、国民へのアピール度は少ない。勝負に対する真摯(しんし)な姿をもっと見せるしかない。見た目の善しあしではなく、選手の懸命さがどこまでファンに届くか。スポーツに求めるものは、その生きざまなのだと思う。

 3月のバーレーン戦は満足できるホームでの勝利だった。そう簡単に得点できない中で、相手に致命的なチャンスを与えなかった。これは岡田監督の目指すサッカーへ、チームが着実に進んでいる証しだ。

 なのに、なぜか胸が熱くなるような高揚感はない。それは、これまでの日本代表はW杯出場までに、必ず多くの修羅場があったからだ。逆に言えば、日本の予選突破にはそうした関門があったからこそ盛り上がったと言える。それが、何の苦しみもなく予選突破するのが当然であるかのようなところに興奮の薄さがあるのかもしれない。

 選手もサポーターもひとつの固まりになって相手国にぶつかっていく。そのために、まず選手ができることは何か。接触プレーで痛がる弱々しさから決別することだ。メッシなど、外国人を見ると、倒されたら、むしろ燃え上がって突き進む。それが、日本人は痛がる。「同情してください」と懇願するかのようだ。

 サッカーはスポーツであり、戦いであり、勝負だ。同情で優位に立とうとの心の根で、どうしてぎりぎりの真剣勝負ができるのか。あの土壇場で踏ん張ったダルビッシュのタフさを思う。チーム団結に裏打ちされた強さこそ、日本サッカーが見習うべきだ。


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川淵三郎「キャプテントーク」
川淵三郎(かわぶち・さぶろう)
 1936年(昭11)12月3日、大阪・高石市生まれ。早大時代の58年に日本代表に初選出。卒業後に古河電工に入社し、64年の東京五輪に出場、72年に現役引退した(国際Aマッチ26試合8得点)。古河電工、日本代表監督を歴任し、91年にはJリーグ初代チェアマンに就任。02年には日本協会会長となり3期6年務めた。7月から同協会名誉会長。現在、日本サッカーミュージアム館長も兼務している。

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