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2009年2月18日

大久保の走力はひとつの理想

 オーストラリア戦を見て、点が取れないことで批判を受けていたが、私は日本代表が点を取れないことをこう見ている。

  まず、クロスのスピードが足りない。緩いという表現が適当かもしれないが、スピードのないコントロールされたボールでは、相手DFにも対応されてしまう。日本の敵はもうそういうレベルだ。そこから点を奪うには、シュートしやすいボールを供給していてはだめだ。

 以前、プレミアでのマンU戦で、C・ロナウドが左サイドから思い切り蹴ったFKに、味方が飛び込み胸に当ててゴールする場面があった。つまり、サッカー先進国のサイド攻撃では、クロスボールをFWの動きに合わせるようなことはしない。そんな悠長なことでは点は奪えない。

 正確でミートしやすいクロスを「面」でFWが待つ。そんな時代はすぎた。全力で出した弾丸のようなクロスに、FWが雪崩のように何人もペナルティーエリア内に飛び込み、体のどこかに当ててゴールに押し込む。面でとらえるのではなく、点で勝負すべきだ。点、そこだけ、まさにピンポイントにFWがトップスピードでぶつかっていく、その迫力が必要になる。

 また、クロスをあげるサイドバックが、蹴る間際にペナルティーエリア内の味方の位置を確認するが、あれもナンセンスだ。あのわずかな時間によって、敵のDFには時間的余裕が生まれる。DFの足が伸びて来て、クロスがカットされ、FWがDF陣を振り切るタイミングを失う。

 面ではなく点で合わせろ、蹴るとき、いちいち中を確認するな。日本はそういうぎりぎりの中から得点しないといけない。世界に出ていけば、そのゼロコンマの違いが勝ち負けに直結していく。ただ、点が入らない、シュートが少ない、決定力がないと嘆くだけでなく、そうしたわずかだが決定的な世界との差を、みんなで修正、強化していく必要がある。

 その中で、ひとつの理想型を大久保に見た。ブンデスに移籍したが、彼のデビュー戦で見せた70メートル近く走ってチャンスメークした走力に、日本人選手の可能性を見た。できるんだ、日本人にもと、強く感じた。たとえ速攻でも、あの走力なら大久保のようにゴール前に顔を出せる。それができるのなら、ユーロを制したスペインのように戦える。

 ボルフスブルクのマガト監督のもと、大久保はフィットネスを鍛えていると新聞で読んだ。強化した走力が、あのすばらしい動きを生んだのだから、これは大きな成果だ。いい時期にブンデスに行ったと、つくづく感じた。

 岡田ジャパンは出来上がりつつある。ホームで2試合引き分けという事実はあるが、カタール、オーストラリアと2試合連続無失点の結果も見逃せない。これは岡田監督が目指す守備への意識の高まりがあって、初めて成し得たことだ。確実に守るという点では、岡田サッカーの形が見え、それがW杯最終予選でも発揮されたということだ。連動した守備はこれからも崩さないでもらいたい。

 3月28日のバーレーン戦は、最終予選のホーム3試合目になる。勝てば、W杯本戦への道ははっきり見えてくる。バーレーンは勝ち点4で、3位グループにあるから、バーレーンをたたき、6月のカタール戦(ホーム)をものにすれば予選突破が決まる。だが、今度は「必勝」だ。引き分けもだめだ。勝利しかない。言い訳はいらない。手抜かりなく万全の準備をし、必勝のピッチに立ってもらいたい。


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川淵三郎「キャプテントーク」
川淵三郎(かわぶち・さぶろう)
 1936年(昭11)12月3日、大阪・高石市生まれ。早大時代の58年に日本代表に初選出。卒業後に古河電工に入社し、64年の東京五輪に出場、72年に現役引退した(国際Aマッチ26試合8得点)。古河電工、日本代表監督を歴任し、91年にはJリーグ初代チェアマンに就任。02年には日本協会会長となり3期6年務めた。7月から同協会名誉会長。現在、日本サッカーミュージアム館長も兼務している。

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