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アジア杯2007特集

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海島健「アラーの国のフットボール」

クアラルンプールの夜はアラブ人の宴

2007年7月27日

【イラク-韓国】美女の応援に思わずイラクを応援したくなったりして…(撮影・海島健)
【イラク-韓国】美女の応援に思わずイラクを応援したくなったりして…(撮影・海島健)

 7月上旬から滞在していたジャカルタから25日に一時的にマレーシアのクアラルンプールへ移動した。ジャカルタでは22日の準々決勝(サウジアラビア-ウズベキスタン)のあと29日の決勝まで試合がなく、クアラルンプールで日本-サウジアラビア(ハノイ)の前に組まれている、もう1つの準決勝イラク-韓国をスタジアムで見るためだ。

 インドネシアの格安航空会社ライオンエアー(この原油高の折、往復124USドル=約1万4500円)でクアラルンプールへ。隣に駐機しているのは今晩の日本と対戦相手国のフラッグキャリア、サウジアラビア航空だ。ボーディングブリッジから空港に入るとアバヤ(イスラム圏の女性が外出時に着用する全身を覆う黒い布)姿の女性をたくさん見かける。

 クアラルンプールでは最近はいつもアローストリート周辺(エリア名ブキッビンタン)に宿をとる。ショッピングセンター街と屋台街が隣り合わせにあり何かと非常に便利だからだ。荷物をといてこのブキッビンタンの繁華街に出てみると、いるわ、いるわ湾岸人。7月から9月の上旬にかけて、夏季休暇を比較的長い期間国外で取る湾岸人が多く、国際都市クアラルンプールは、その一大集結地と言えよう。あっちを向いてもこっちを見ても、アバヤを着た女性を連れて歩く湾岸男性が闊歩(かっぽ)している。なぜか男性は正装ソウブではなくGパンといった普段着でアンバランスなのも興味深い。肌を露出しているアラブ系の女性はレバノン系や外国に居住しているイラク系などが主であろうか。

 ショッピングモールの合間にある喫茶店やレストランの多くは、こういったアラブ人観光客を当て込んだものが多く「ミドルイースト料理」「レバノン料理」「モロッコ料理」の看板がたちならび、そこかしこでシーシャ(水たばこ)をくゆらせるアラブ男を見かける。レストランのメニューもブリヤニ(炊き込みご飯。オリジナルはパキスタンらしい)やマッチブース(湾岸風の炊き込みご飯)、ケバブやクスクスといったアラブ料理が並ぶ。
 このエリアのアラブ人街化は年々進行しており、(バンコクやマニラと違ってきわめておしゃれに)他の東南アジアの国ではこれほどのものはないだろう。湾岸のUAEドバイにはフィリピン人の店員が非常に多いのだが、それがマレーシア人(や出稼ぎインドネシア人)に変わっただけで、ドバイの光景を再現しているかのような街並ともいえる。

 極め付けはアラブ世界きってのレバノンの歌手、ナンシーアジュラムのコンサートが8月4日にあるというポスター。筆者もこのナンシーのコンサートにバーレーンで行ったことがあるが、彼女の人気は湾岸でも絶大で、バーレーン国外からも駆けつける人もいるほど。湾岸人にとって同じイスラム国家のマレーシア。物価も安くそれなりの質のいいサービスを受けられ、気候も快適な(湾岸の夏は45度はあたりまえ)この地がいかに居心地がいいか分かるような気もする。

 さて、こんなことに深く考えている場合ではなく今日は準決勝2試合なのだ。
 まず、1戦目イラク-韓国はスタジアムへ。イラクのスターFWユーニスマフモッドの惜しいシュートも決まらず、延長戦に入る。両者とも決め手を欠き、このままいるとPKにまでもつれ込んで終了後の大混雑に巻き込まれると、日本-サウジアラビア戦を見逃すことになりそうなので、延長戦の途中で大歓声を後に市内へ向かう。

 電車を乗り継いで、ブキッビンタンに戻ると、サウジアラビア人を主にしているであろうアラブ人の人だかりを発見。ここはアラブ風マクハであり、紅茶や水タバコを片手に興奮する人々はまさしくアラブ世界だ。小さなテレビ画面を全員が見つめる。いつもとちょっと違うのはご主人と一緒に来たと思われる女性も同席していることで、国外で休暇中ならではの光景だ。

 立ち上がりボール支配率で圧倒する日本代表に「さすがは日本だ、今までの相手とは違う」とばかりに、いつになく神妙な表情でゲームを見つめるサウジの人々。前半35分、FWカフタニが決めると大歓声があがる。喜びもつかの間、中沢のヘッドが決まると大ブーイング。もちろんマレーシア人なりすましの筆者は爆発させたい喜びの感情を必死に封じ込めた。
 後半2分のマレック勝ち越し弾、同8分阿部の同点弾も同じパターンが繰り返される。同12分に再びマレックが決め、2-3になり、盛り上がるアラブの人々。

 準々決勝がPK勝ちで、準決勝が途中まで2-3!! これは日本人にとってデジャビュではないのか? 結末は分かっている、相手がつまらない時間稼ぎを始め、ロスタイムに同点弾で延長で勝ち越しなのだ。中国大会バーレーン戦の再現に決まっている、とひそかにほくそえむ。

 残り時間5分を切ったあたりで、サウジのGKモサイレムがグローブを外す。一体グローブを外す理由というか、言い訳って何なのだろうか? いつもは笑っていられる光景も、こと日本相手だといらだちを誘う。しかし、繰り返すがこれはデジャビュなのだ。最後に泣くのは、あのグローブを外したGKに決まっている。ロスタイムは5分。時間も十分でシナリオ通りではないか。サウジのドス・アンジョス監督も「5分はないよ」と言いたげな表情を見せ、マクハに集まった人々も神経を集中させる。

 1分、2分、3分。おかしい。こんなはずではない。時間が刻々とたっていく。4分を過ぎると、アラブ人たちは「ハラース、ハラース(アラビア語でもうお終いだ)」とわめき始める。うるさいぞ、お前ら! と怒鳴りりたくなるが、そんなことをしたら「おい、お前日本人か? いやあ、残念だったな、日本もいい試合をしたさ。あれ? まだ試合終わってなかったっけ?」などと相手を優越感に浸らせる小道具にされるのがオチだ。そして、ゲームセット。アラブ軍団のお祭り騒ぎが始まると「マレーシア人」海島は静かにこの場を立ち去るしかなかった。日本が勝てば感情を押し殺して喜んだことも、ちょっと屈折した優越感に変わるのだが、負けたらそんな途中経過も単に屈辱的な出来事でしかない。

 宿に戻りいったんシャワーを浴びる。午前0時を回っていたが寝付けなさそうで外出して散歩をすることに。やはり、夜にはめっぽう強いアラブ人がいた。イラク国旗を身にまとった集団や、小さなサウジ国旗をはためかせて歩くサウジ人家族などが大騒ぎをしていた。慣れているはずの、そしていつもはニコニコして見ているアラブ人の騒ぎぶりがこの日は胸に突き刺さるような感じがする。

 日本が永遠にアジア杯王者でいられるはずがないと頭では分かってはいるんだけど。

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コメント

サウジなどお金のある湾岸諸国はアフリカ出身らしき黒人選手が多いですね。それに対してお金のないイラクは(厳密に確認したわけではありませんが)黒人選手がいなくて、純アラブのチームのようです。決勝はイラクを応援したいと思います。

投稿者:デルピ|2007年7月28日 01:09

現在、一時帰国中のマレーシア在住のHarimauと申します。マレーシア人はグループリーグの段階で早々と興味を失ってしまったアジアカップですが、準決勝での観客の入りはどうだったのでしょうか。一時帰国前に観戦したグループリーグの試合では、大量失点に失望したマレーシアファンが相手が得点するたびに歓声をあげ、マレーシアにとってはアジアカップ最後の試合となったイラン戦では巨大なブキットジャリルスタジアムがイランファン以外には見当たらないという始末でした。
 いまだに「マレーシアは昔は日本になんか負けたことがなかったんだ。」などと言う協会関係者も多いのですが、今回のベトナムを吹くめ、他国の進歩という現実を直視しないままここまで来たマレーシアサッカー協会ですが、今回は粛清の嵐が吹きそうです。今回の参加国中、FIFAランキング最下位で、大会開催国にならない限りアジアカップ本選には出場できない今のマレーシアの実力では、次のアジアカップ出場は遠い未来の話になりそうです。私の現地の友人の中には、「最初からこうなることはわかっていたのだから、アジアカップを主催するより、マンチェスターユナイテッドに来て欲しかったとこぼす者も少なくありません。

投稿者:Harimau|2007年7月28日 08:45

海島先生、取材お疲れ様です。
私はリヤドに戻って学生に再び会うのがすごく気詰まりです…。

>デルピさん
サウジに関して言えば、黒人選手の多くは、スーダンなどからの移民系、
あるいは過去にアフリカから連れてこられた黒人奴隷の子孫と思われます。
(ちなみに、サウジで奴隷制度が撤廃されたのは1960年代のことです)
私が勤務するリヤドの大学の教え子の中にも、多くのブラックアフリカ系サウジ人がいます。

余談ながら、サウジ第2の都市ジッダには、アル=イテハド(フィーゴを獲得しようとしたクラブ)とアル=アハリーという2つのクラブがあるのですが、前者は移民系のクラブ、後者はアラビア半島系のクラブという位置づけがあるらしいです。
今年、サウジ国内リーグのカップ戦決勝はこの2チーム間で争われたのですが、首都リヤド出身の知人の多く(アラビア半島系)は、後者を応援していました。

確かにサウジは中東随一の「金満な」国ではありますが、イスラム教の中でも最も復古主義的な
ワッハーブ派を国教としており、国籍取得に際してはイスラムへの改宗が義務づけられている上、
飲酒の禁止、一日5回の礼拝の励行など、イスラムの戒律を厳しく守らされます。
ですので、有力選手をオイルマネーで帰化させることは極めて難しいと言うのが実際です。
カタールでそれが可能なのは、イスラムの締めつけがサウジほどは厳しくないことによる、カタール社会の開放的な一側面であるとも言えないこともないのかもしれません。

投稿者:サイトヲ@リヤドから一時帰国中|2007年7月28日 18:05

韓国の六試合戦績1勝4無1敗、3試合は0-0.無得点、無失点、無勝負の王者。(PK戦はFIFA公式記録に引き分けのして残されますね。)
歴代最悪とも言える韓国の唯一の慰め(?)は4強に入ったチームの中では失点が一番少ないという事。その韓国に2点も取った海島先生のバーレンに敬意。

湾岸決勝戦でも面白いコラム期待します。

投稿者:在米 コリアン|2007年7月29日 01:47

  昨晩Jakarta Senayan競技場にSaudi-Iraq戦を見に行きました。7-8割埋まっていたのと試合内容が予想以上に面白かった所迄は良かったのですが、どう見てもちゃんと券を買って入った客が少ないのには違和感有りでした。入場券はCategory1が$55、当方が入ったCategory2でも$28で当地では物凄く高いのですが、周りを見ても子供も沢山居るし、とても自分で払ったとは思え無い人がわいわい居るのです。特にオレンジ色を着て勝手に盛り上がっている連中はどう見てもJakarta南部を本拠とするPersijaの応援団とそのファンです。数年前のクラブ選手権で負けて暴動騒ぎを起こし、とにかく荒くて評判の悪い連中です。これは推測ですが、きっとPersijaのOwnerである現Jakarta市長のSutiyosoが政府の意向も有り、大量に出たキャンセル券の処理対策にPersijaの関係者に大量に只券をばら撒いたのでしょう。ユドヨノ大統領やブラッターFIFA会長も観戦していて、ガラガラではやはり不味いと思ったのでしょうね。丁度8月8日に市長選も有る事も関係しているのでしょうか。  当然観戦マナーも何も有った物ではなく、国歌演奏中にインドネシアのでかい国旗を流して騒ぐし、サウジとイラクに全く関係無く応援歌を歌うし、酷いものでした。ことスポーツ観戦に関しては未だ紛れも無く発展途上国である事をいみじくも証明してしまいました。でも同じアラブ同士の試合でもやはりイラクに同情的で、9割はイラクの応援をしておりました。サウジ人でインドネシアに土着化した人も多いのですが、どうも商売のやり方とか横柄な態度とかでサウジ人の評判は余り良くないからなのでしょうかね。日本人としては試合終了前に泣きながらスタジアムを後にするサウジ人を見るのはちょっとだけ気分良かったですが。

投稿者:リッチ・ボーモント|2007年7月30日 13:05

僕の好きなヤニス選手が大会MVPになってとても嬉しいです。
五輪ベスト4になった時からアジアの中でも屈指の選手だと思っていましたが
今回の大会でやっとアジア中にその名前が広まったと思われます。
これからも中東サッカーの貴重な情報を宜しくお願いします。

投稿者:ヤニス・マフマドファン|2007年7月30日 20:01

Harimauさんへ

マレーシア情報ありがとうございます
マレーシア代表、バーレーンにもきたことがあるのですが、一見したところマレー系ばかりでした。中国系やインド系の選手はなぜあまりいないのかご存知ですか。
人口のそれほど多くはない複合多民族国家が強くなるにはいろいろな血をチームに入れたほうがいいと思いますが。
インド系はクリケット、中国系は商売とすみわけがはっきり(と例として単純化しましたが)しているのでしょうか?
それともかつて3民族でサッカーチームでさえもめた歴史があるとか?
あるいはブーミプトラの影響?(ふるいでしょうか)

投稿者:海島健|2007年7月31日 01:19

ヤニスファンさんへ

Yーマフモッドをはじめ、オマーンのフセイニーやバデールアルマイマニ、カタール代表の面々、バーレーン代表の大部分が終結しているのがカタールリーグ。
こういった圧倒的なストライカーの多いこのリーグ、これからますます目が離せません。
日本が4位になったのは本当に悔しいですが、彼らの活躍を賞賛しリスペクトしたいと思います。

投稿者:海島健|2007年7月31日 01:29

リッチさんへ

いつも興味深いコメントありがとうございます。
私も昨日セナヤンにおりました。
あのイラクよりの応援はなぞでしたが、新聞報道などとあわせ
コラム書いてみました。(次回作です)

投稿者:海島健|2007年7月31日 02:07

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