このページの先頭



ここから共通メニュー

共通メニュー


ホーム > サッカー > 日本代表 > アジア杯2007 > コラム一覧 > 海島健コラム > 個別記事


アジア杯2007特集

アジア杯特集のメニュー

海島健「アラーの国のフットボール」

両翼をもがれた中東の雄

2007年7月14日

暗いスタンドの中、引き揚げるサウジアラビアFWカフタニ(撮影・海島健)
暗いスタンドの中、引き揚げるサウジアラビアFWカフタニ(撮影・海島健)

 サウジアラビアの初戦となった11日の韓国戦(1-1のドロー)をスタジアムで見て、中東の雄の迫力のなさに首をかしげた。サウジといえば4-4-2の中盤、両ウイングが強力で、サイドから突破をした後に2トップとのパス交換を経てゴールを脅かす、さらにDFモンタシェリも機を見て攻撃参加と、厚みがある攻撃が売り物というイメージがあるのだが、韓国戦ではそれがほとんど見られず、2トップの孤立が目立った。

 2トップは常連のエースFWカフタニとマレック。ここはいい。だが両ウイングは、昨年のW杯ドイツ大会ではテミヤートやシャルフープ、モハメッドアミーンやモハメッドヌールと人材豊富だったものが、今回のアジア杯の最終登録メンバーを見てみると、この4人が1人も招集されていない。おまけに守りの要、センターバックのモンタシェリも、サイドアッタカーのアーメッドドーキも不在。・・・何ということだ。

 韓国戦での両ウイングは突破力がなく、ボールキープもままならず、プレッシャーを受けてバックパスをせざるを得ない、あるいはパスミスをするといった具合で機能しなかった。FWカフタニが自ら突破をしてもサイドとの連係はなく、マレックも個人技でシュートまで持っていくのだが、強引に行く分、決まる確率もそれだけ下がるというもの。当然のように流れの中での得点は生まれなかった。
 ボールを韓国に奪われ自陣に下がって行く時のカフタニの表情がなんとも悲しげで「これはサウジのサッカーではない」と背中が語っているようだったのが印象に残った。

 サウジの得点はこのカフタニの体にあたったボールがたまたまゴール付近に転がり、ラッキーともいえるPKの判定をもらい、カフタニ自身が決めた。1-1のドローに終わったゲームの後、アラブ系のメディアにインタビューを求められたが、口を閉ざしロッカールームへ消えていった。

 サウジアラビアの次の試合は14日、地元インドネシアが相手だ。インドネシアが初戦バーレーンを撃破したことにより、このサウジアラビアvsインドネシアの切符はあっという間に人気が沸騰、それまでのどかだったスタジアムの周りには早くもダフ屋が跋扈(ばっこ)している。バーレーン戦の客のノリもすさまじかったが「あんなもんじゃないですよ、本当の我々は」とは、あるインドネシア人の弁だ。試合当日はすさまじいテンションのインドネシア人でスタジアムは膨れ上がるのは間違いないだろう。

 サウジアラビアvsインドネシアというと、かなり一方的なゲームになるというイメージが筆者にはある。確かに2004年以降の4試合でも、5-0、6-0、3-0、3-1とすべてサウジアラビアが圧勝している。
 13日付のインドネシア語紙「コンパス」にもそういったデータ(過去7戦全敗)はしっかりと掲載されていた。それだけでなく、インドネシア代表がアジア杯の初戦には強いがその後が続かないといったジンクスも紹介している。「96年と00年はともに初戦でクウェートに引き分けたが、その後がダメ。2004年中国大会では、初戦でカタールに勝ち、トルシエ監督を解任に追い込んだ後、中国に0-5、バーレーンに0-3で負けた。今回はその二の舞になるのかが注目」としている。

 このように過去のデータは圧倒的にサウジ有利を示しているが、筆者はこの一戦、1次リーグ最大のサプライズが待っているような気がする。
 サウジアラビアの両ウイングが今までに見たこともないほど脆弱(ぜいじゃく)なこと。それが主な原因でチームが機能不全を起こしていること。スタジアムの雰囲気もすさまじいアウエーになりそうなこと。ベトナムがUAEを負かし、タイがオマーンを打ち砕いたことで東南アジアのチームが(特に対アラブに)連鎖反応を起こしていることと、かなり条件がそろっている。

 そして、もう1つ、サウジの選手には、バーレーンの影がちらついているかもしれない。バーレーン-韓国はサウジ-インドネシアの次の日15日に行われる。もしサウジアラビアが勝った場合、バーレーンが取るべき戦略はある。韓国戦を最悪、引き分けでもいいと割り切って、最後のサウジアラビア戦にすべてをかけて勝ち点4を取り、同じ勝ち点4のサウジアラビアに当該成績で上回っての1次リーグ突破、あるいはインドネシアを含めて3チームが勝ち点4で並び当該チーム間の得失点差、総得点などで上回っての突破である。韓国に引き分けるしたたかさはバーレーンにはあるし、今のサウジアラビアの状態だとバーレーンの方が力は上だと筆者は考えている。実際にアジア杯予選では、3戦終了時に勝ち点1だったバーレーンが、最終戦でクウェートを破って勝ち点4で並び当該成績で上回るというドラマチックな幕切れで本選進出を決めている。サウジアラビアも、勝負がかかった時のバーレーンの怖さは十分に分かっている。GCC諸国の盟友としては、最終戦で引き分けて決勝トーナメントに進むといった形が理想なのだろうが、こういう状況になれば話は別。今では最もイヤな相手が最終戦に残ってしまったと思っているかもしれない。

 一見したところ、強豪韓国に引き分けて悪くはない滑り出しに見えるかもしれないが、これらの状況を考えるとサウジアラビアにするとインドネシア戦はかなりプレッシャーのかかるゲームであり、大どんでん返しが起こる可能性は否定できない。2戦目でどこまで修正できるか。もし、韓国戦のような状態から進歩がなければ、トーナメント進出もあやしい。それは大げさかもしれないが、少なくとも優勝候補にはほど遠いというのがサウジアラビアの現状と見ているのだが。

トラックバック

コメント

バーレーン、2対1で韓国に勝っちゃいましたね!結局縦パスと、シュートの良さと、得意のだらっと時間をかける戦術で・・・・。メンバーがけっこう若返った印象がありますが、バーレーンらしい試合で懐かしかった。最終のサウジ戦、目が離せなくなりました。

投稿者:海パン|2007年7月16日 15:57

UAEがカタールに勝っちゃいましたね。恩を売るより面子を取ったってことでしょうか。

投稿者:デルピ|2007年7月17日 00:00

海パンさんへ

コメントありがとうございます。
まったくおっしゃるとうりでして、いつものダラダラアンドカウンターサッカーでらしく勝ちました。次回コラムがこの試合の報告です。
お楽しみに。

投稿者:海島健|2007年7月17日 00:09

デルビさんへ

これにはすこしびっくりしました。
いくつか考えられますが。
①ちゃんとまじめにやった=UAEは湾岸の国の中でもまじめでお坊ちゃまぽいところがある
②開催国ベトナムからの圧力=ちゃんとやってくださいよという要請のようなもの。ベトナムのようなある意味バキバキの途上国であまり露骨なことをするのはかなり危険かも。
③監督にちゃんと権力がある=国の権力者といえども口出しできない

投稿者:海島健|2007年7月17日 00:39

 楽しい記事、ありがとうございます。
 UAEは、監督が「全敗じゃ首が飛ぶ」と焦ったからかなと思いましたが、あちらの国ではそういう考え方はないのでしょうかね。海島さんの③と逆ですけど。

投稿者:如月|2007年7月18日 09:18

コメント投稿(承認後に公開されます)



このページの先頭へ