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アジア杯2007特集

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海島健「アラーの国のフットボール」

マレーシア惨敗に共催国が大喜び?

2007年7月12日

バーレーン戦で盛り上が(り過ぎ?)るインドネシアのサポーター(撮影・海島健)
バーレーン戦で盛り上が(り過ぎ?)るインドネシアのサポーター(撮影・海島健)

 タイからインドネシアへ移動し、今後はD組(インドネシア、サウジアラビア、バーレーン、韓国)のスタジアム観戦を中心にレポートします。

 そもそも、D組を選んだのは、
 (1)何と言っても「我が」バーレーンが入っている。アウエーのバーレーンを見届けたい。
 (2)隣国サウジアラビアとは橋でつながっているものの、査証取得は簡単ではない。このためサウジアラビア代表を見る機会があまりないので、この機会に生で見てみたい。
 (3)W杯ドイツ大会出場国同士のマッチアップ(サウジアラビア-韓国)があるのはこのD組だけ。韓国代表も興味がある。
 (4)2004年のアジア杯中国大会は日本代表を追いかけたので、今回は別の視点で見ようと思った。
 といったところ。これにさらに新たな目的が加わるとは思ってもいなかった。

 バンコクからジャカルタへ飛ぶと、まず「海洋アジアに来たな」と感じる。大雑把に言うと、マニラやセブ、コタキナバルやクチン(ボルネオ=カリマンタン島のマレーシア側の都市)といった街と似た匂いを感じる。そして、この時期のジャカルタは何となくバーレーンの11月ごろの空気に非常に似ている。バーレーン代表はやってくれるはずだ、とまずはニンマリした。

 ジャカルタ入りはインドネシアvsバーレーン(7月10日)の前日9日となった。心配していたのはチケットの入手であったが、売れ行きは非常に悪く、全体の20パーセントだという情報を入手した。インドネシア在住のある日本人によると、東南アジア競技大会(東南アジアシーゲーム=隔年で開催される同地域のスポーツ大会)の方がずっと盛り上がり、周りの人もほとんどアジア杯のことを話題にしていないし、テレビなどのマスメディアも特に宣伝などしていないという。ということは翌11日の試合もバーレーン代表にとってアウエーの圧迫感もなく気楽にできるし、筆者のチケット入手も楽観していた。

 しかし、9日夕、状況は一変した。インドネシアの副大統領が青年スポーツ大臣と一緒に、同国代表の激励のためグラウンドを訪れ、「君たちなら必ずやれる。勝てば故郷に錦を飾れる。負けたら国民に忘れ去られるだけだ。2億人(インドネシアの総人口)の中から選ばれたのだ。バーレーンは100万人(同国の総人口はおよそ70万人)の中から選ばれただけで、砂の上でしか練習していないのだよ。君たちは立派な芝の上で練習している。バーレーン代表が君たちに何ができるというのだ」と演説した。インドネシア代表のキャプテン、ポナリオは「バーレーンと我々の違いはまず体格。だが、同じ条件にあったベトナムも、そのハンデを乗り越えてアラブのUAEを倒したではないか」とコメントした。

 この2つのコメントをはじめとしたさまざまな激励のコメントが10日付の地元紙「コンパス」に掲載されたのである。それもあって、一気にアジア杯熱はヒートアップ。そんなことになっているとは露知らず、試合開始90分前にのんびりとスタジアムに着いた筆者が目にしたのは、当日券を買い求めるインドネシア人がチケットボックスに列もつくらず殺到している光景だった。こうして安いカテゴリーの席は満員札止めになり、バーレーンにとって完全なアウエーの環境が出来上がったのである。結果はご存知のとおり、ベトナムに続く開催国の勝利(インドネシア2-1バーレーン)となった。

 翌11日のインドネシア語紙「コンパス」は、1面で「完璧な初戦」とのタイトルで、「2004年のお返しだ!!(中国大会の1次リーグ3戦目でバーレーンに負けたことを指している)」と報じ、ゴールを決めた2人を称えた。

 タイも大健闘(イラクとドロー)、ベトナムとインドネシアはともに湾岸の小国を飲み込んで、東南アジア勢は上々のスタートとなった。しかし、開催4カ国のうち、1つだけバスに乗り遅れた国がある。インドネシアと同じ日に中国と対戦したC組のマレーシアは1-5の大敗を喫してしまった。

 このマレーシアとインドネシアは同じマレー系を抱える国であり、マレー語とインドネシア語も相当近い言語らしいのだが、やはりライバル心は非常に強く、バドミントンなどで両国がしのぎを削るのは有名だ。前述の東南アジアシーゲームでもこの両国のマッチアップは盛り上がるらしい。インドネシアからマレーシアに出稼ぎに出る人も多く、経済的なある種の上下関係にあるのもこのライバル心をさらにあおっているのかもしれない。

 筆者はこのマレーシア-中国戦をジャカルタのサッカーバー「マンチェスターユナイテッドカフェ」で見ていたのだが、マレーシアの大敗ゲーム中にバンドマンが「インドネシア代表やってくれましたね。そして、今、いったい何が起こっているんでしょう」などと言ってかなりうれしそうだった。さすがに公器コンパス紙には「見たかマレーシア」といった記事は見当たらなかったが、庶民レベルの感情はバンドマン氏のコメントが象徴しているように思えた。

 さて、今後もこの両国は同じ日に試合をし、マラッカ海峡をはさんで(ボルネオは地続きだが)の泣き笑いがしばらく展開されそう。そして、ともに1次リーグを2位通過した場合は(1位より2位の可能性のほうが高そうですよね)、この両ライバルは相手国の首都に乗り込んで準々決勝を戦うという何とも皮肉な結果となる。自国で唯一行われるベスト8の激突が近隣ライバルに乗っ取られる? もし、インドネシア代表がクアラルンプールに乗り込んだら、スタジアムは出稼ぎインドネシア人が集結、それをマレーシア人が冷ややかな目で見るという光景が見られるかもしれない。あるいは、これを機会にマレーシア人もインドネシア人と一緒にインドネシア国旗を振って、ちゃっかりゲームを楽しみ「マレー系共同戦線」みたいなものを見せつけるのかもしれない。こればかりはどちらかの国が2位通過で決勝トーナメント進出を実現してくれないと、どうなるか分からないが。

 ジャカルタではすでに今後のサウジアラビア戦、韓国戦のチケット争奪戦が水面下で始まっており、今まで置いてあったナイキショップなどの店頭からはチケットが消え、スタジアム一括販売になって、周辺に地元の人がたむろしている。なんか怪しすぎるぞインドネシア。

 とにかく、このアジア杯を契機として東南アジア勢台頭の兆しもあるのではないでしょうか。しばらくインドネシア代表とインドネシア人ウオッチ続けてみます。

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コメント

今回のアジア杯では様々な国を見ることができます。特に東南アジアの国々は日本ではサッカー後進国のように思われがちですが、かつてはアジアサッカーを引っ張っていたのが東南アジアでした。

今やアジアの勢力図は混戦模様。各国がしのぎを削って派遣を争っています。宗教や人種も様々なアジア。

アジア杯を見ていると「アジアは広い」ということを実感できます。

投稿者:イクス|2007年7月12日 21:44

イクスさんへ

コラムにもありますように、現在は東南アジアでサッカーをみていますが、同じサッカーでもまったく違って見え発見の日々です。アジアは広く、人種や宗教もさまざまであるからこそアウェーのチームにとってアウェー感が強くでるのでしょうね。アラブがばたばた東南アジアにやられるのを見るとそれを痛感します。

投稿者:海島健|2007年7月12日 22:18

同じ東南アジアでもアジア杯に対する関心は国によって違うようですね。インドネシア、ベトナムはスタジアムが満員なのに、タイ、マレーシアは空席が目立つのはどうしてでしょうかね?

投稿者:デルピ|2007年7月13日 01:37

一口にアジアと言っても色々な国が有るから、対非アジア国には一丸となっても、お互い同士だとまあライバル意識が有るのは当然なんでしょうね~しかしアジアもサッカー結構強いんですね。頑張ってるのが伝わって来て熱くて良いですわ。

投稿者:ミック|2007年7月13日 08:54

インドネシアは人口が多いから、大騒ぎすると凄そうですね!サッカーテレビ観戦出来るカフェなんて有るんですか~そこで見ている人をウォッチングするのも面白そう。

投稿者:PANAMI|2007年7月13日 08:57

貴重な情報ありがとうございます。
ホームで高温多湿な天気という有利な状況とはいえ、東南アジア諸国が結果を出していることには隔世の感があります。
日頃のサッカー環境や体格的なハンディを考えると、やはり東南アジア諸国は今後も苦労するんだろうな、とは思いますが、ここからまた新しいサッカーが生まれたりして、と変な期待をしています。

投稿者:Kempes|2007年7月13日 09:17

ミックさん、PANAMIさん

インドネシア、急にヒートアップしてきました。
ほかの共催国も次第に熱をおびてくるのではないでしょうか。
ここのスタジアムのパニック状態は、ジャワ島の人口の多さを感じさせます。
サッカーカフェの客のいりはまだまだですが、これから増えていくことでしょう。
決勝はジャカルタですし。

投稿者:海島健|2007年7月13日 21:03

デルビさんへ

鋭いご指摘ありがとうございます。
インドネシア人とちょっと話をしてみました。

まず、基本的に今回の共催4カ国とも欧州サッカーへの傾倒が激しいことがあります。
湾岸にもその傾向は強いのですがそれ以上かもしれません。
なので、アジア杯には興味がないといった人が多いのでしょう。

そして、インドネシアは今回のコラムにありますように、ある種の大衆動員をかけて成功。ゲームにも勝ち、これからはファンが自然に押し寄せることになるでしょう。

ベトナムは2005年のシーゲームのときにサッカー選手が賭博の胴元からお金をもらったことが明るみにでてチームが制裁を受けた(刑務所に入ったひともいたらしい)ことがかえってベトナム人のベトナム代表熱をあおったのではないかとインドネシア人がいっていました。

ただどの国も自国が絡まないゲームはガラガラで、アジアサッカーに興味があるとは言いがたいかもしれません。

投稿者:海島健|2007年7月13日 21:22

日本が決勝Tに進出する条件を考えると、ベトナムに引き分け以上で決まりますね。問題は、移動なしでベトナムで試合が出来る1位突破となると、海島さんが以前指摘されていた湾岸諸国の連帯意識です。UAEがカタールを決勝Tに進出させるため故意に負ける可能性が高いと思います。ということは、日本はベトナムに勝つしかないですね。

投稿者:デルピ|2007年7月14日 01:38

興味深いレポートありがとうございます。
東南アジア4カ国開催で、開催国出場は何ら強豪国の成績に影響ない、なんて思っていましたが、
実際は全く逆で、現時点(July13)でも各グループ4カ国中、3位までどこが残るか予想できない
状態でとても面白いです。

日本対ベトナムはドローでもトーナメント進出ができますが、カタールがUAEに3対0以上で大勝(十分あり得る)したら、日本1位通過はなくなります。
ベトナムこそドローでは敗退の可能性が高いため、勝ちにくるでしょう。
ベトナム戦が注目されます。

開催国の最後の試合は、どうもそのグループの最強国と思われる国との対戦です。
最終戦まで開催国が盛り上がれば、大会は成功に終わるということなのでしょうね。

投稿者:naonim|2007年7月14日 11:10

Kempesさんへ

東南アジア勢の勢いすごいですね。
現地ジャカルタにいると熱をかんじます。
今日のインドネシアーサウジアラビアもかなりやばいカードですのレポートが
次のコラムです。過去7戦全敗だそうですが、思い切ってインドネシアにかけます。

投稿者:海島健|2007年7月14日 12:52

デルビさん、naonimさん

バックナンバーの「日韓の脅威はGCC諸国」からお読みいただいているとはうれしいかぎりです。
UAEはもう敗退決定なので義兄弟カタールに恩を売っておく絶好のチャンスではあります。
3戦全敗は恥ずかしいことですが、面子とどっちをとるか?
大会の盛り上がりはここインドネシア会場はなかなかですし、タイ、ベトナムもすごそうです。
ドラマを最後まで見届けたいです。

投稿者:海島健|2007年7月14日 13:43

貴重なアジアサッカー情報いつもありがとうございます。
日本ではアジアサッカー、特にアラブの情報はほぼ皆無に等しいほど
情報を取ることに苦労するので、海島さんのレポートは現在日本で一番貴重なもの
となっております。

最近のアジア情勢は東高西低が続き、今回の大会でも優勝候補とは成りえない
ようですが、イラクなど調子のよいチームもありますしこれからも引き続き
貴重なレポートをよろしくお願いします。

投稿者:ユニス・マフマドファン|2007年7月14日 21:52

ユニスマフマドファンさん

あたたかいコメントありがとうございます。
実はアラブサッカーの情報はとるのが非常に難しく、今回のカタールのように追いかけても
ほとんど何もとれないこともあります。
ただ、ユニスさんのように楽しみにしていてくださる方がいるのであれば、追いかけ甲斐もあるというものです。
また楽しんで読んでいただけるようなものを出していきたいと存じます。

投稿者:海島健|2007年7月15日 01:36

インドネシアとマレーシアチームの決定的な違いはなんでしょうか?インドネシアの副大統領と青年スポーツ大臣が同国代表の激励のためグラウンドをわざわざ訪れ演説した内容は間違いなく選手達の闘争心と愛国心を駆り立てたに違いないですね。カタール戦のときにはコーランで応援していたというコメントがありましたが中東選手の闘争心と愛国心を駆り立てるものは何だと思いますか?

投稿者:まゆみ|2007年7月16日 17:14

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