カタールの裏技に注意せよ
2007年5月26日

- カタールリーグの応援風景、盛り上がるサポーターたち(撮影・海島健)
日本にとって3連覇がかかるアジア杯開幕まで、あと2カ月を切った。日本が1次リーグの初戦で対戦するカタールは昨年のアジア大会で優勝し、近年メキメキと力をつけているのは確かだが、直近はパッとしない。1月のガルフ杯ではサウジアラビア、イラク、バーレーンという死の組に入り、1次リーグ1分け2敗で敗退。3試合で得点1失点3と、ほとんど見どころなく敗れた。
自国リーグ(Qリーグ)に目を向けても景気のいい話がない。Qリーグきってのビッグクラブであるアルサードは、アジアCLの1次リーグC組で最下位で敗退した。8試合で6得点はまずまずとしても、10失点では決勝トーナメント進出は無理だろう。
ちなみにアルサードはGKモハメッド・サクル、DFアブドラ・コニー、DFアリ・ナスル、MFウェサム、MFファルハン・イブラヒム(昨年度のアジアMVP)といった代表を多く抱え、W杯経験のあるカルロス・テノリオ(エクアドル)と前浦和のエメルソンという破壊力抜群の2トップを擁し今季もリーグ優勝を果たした。リーグ戦の後に行なわれたカタールクラウンプリンス杯(QCP杯、4月29日-5月5日、リーグ戦の上位4チームによるノックアウト)でも優勝を果たすなど国内では無敵の状態だけに、アジアCLでの戦いぶりはカタールのサポーターを落胆させた。
カタール代表を支えるアルサードがこの状態ではカタール代表が苦しむのは当然と言えるかもしれない。根本的な原因は日本代表と同じく決定力にありそうだ。5月中旬の段階でカタールリーグの得点ランキングでトップ10入りしている生まれながらのカタール国籍選手は1人だけ。代表戦ではあまり名前を聞いたことのない選手で、一時期エース格だったセイエッド・アルバシール(アルアラビ)はケガから戻ったばかりでランキング外。ガルフ杯の時の2トップ、セバスチャン・ソリア(カタールSC)とフセイン・ヤセル(アルラヤン)以外のFW探しがアジア杯に向けて急務と言えるが、なかなか人材がいないのが実状だ。
“くせ者”カタールがこの状況なら、日本も安心していられる? いや、決定力と言えばエメルソンを忘れてはいけない。5月中旬に時点でQリーグ得点ランキング2位の18点(27試合)を挙げており(1位は19点)、カップ戦でも大活躍中。06年10月にカタール国籍を取得しながら代表入りを認められなかったが、カタール在住歴が2年を超える今年7月以降は代表入りできるという報道が流れている。様々な報道があるが、ドーハの友人アラン氏によると、アジア杯に出られるかどうかは時期的に微妙だという。いずれにせよ、エメルソンが決定力不足に悩むカタール代表にとって救世主になり得るのは間違いない。仮に代表合流がアジア杯直前であっても、多くのチームメートがおり、フィットには時間もかからないだろう。
なにしろ、カタールという国は陸上の3000メートル障害で無敵のステファン・チェロノ(ケニア)に国籍を与えサイフ・サイード・シャヒーンの名で03年にパリで行なわれた世界陸上で優勝させた実績があるだけに、日本とは根本的に発想が違う。そもそも代表FWソリアはウルグアイから、GKサクル、ケガから復帰したばかりのFWアルバシールはアフリカからの国籍変更。つまりエメルソンの国籍取得は決して例外的なものではなくカタールではよく行なわれている事例の1つなのだ。こうしてカタール代表は進化を続けてきた。一時的に決定力が不足していても突如として決定力のあるFWを補強できる“裏技”があるだけに、対戦国は安閑とはしていられないのだ。
エメルソンの入ったカタール代表対日本代表、見てみたいような、そうでないような。複雑な心境でカタールからのニュースに耳を傾けている。
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1965年、東京生まれ。一橋大学社会学部卒、97年よりバーレーンに在住し、バーレーン大学で日本語の講師を務めている。98年バーレーンでのガルフ杯のころからバーレーン代表の試合を見続け、現在は中東サッカー全般をウオッチしている。
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