日韓の脅威は「GCC」諸国
2007年1月26日

- 20日のUAE-イエメン戦を視察後、会場を後にするオシム監督(撮影・塩畑大輔)
湾岸最大のサッカー大会であるガルフ杯(UAE、1月17日~同30日)の1次リーグが24日終了し4強が決まった。日本ではそれほどなじみのある大会ではないが、バーレーンに住む友人の中には「ガルフ杯は、オレたちにとってはアジア杯よりも重要な大会なんだ!」と力を込める友人もいるほどで、確かにスタジアムで応援したり、喫茶店で中継を見ている人々のエキサイトぶりはすさまじい。
日本人として気になったのは、今回の戦いが7月に行なわれるアジア杯へのヒントになった点だ。湾岸諸国の「連係」プレーは、日本と韓国にとって実に厄介である。
それを示したのがガルフ杯B組の最終戦だった。2戦を終えての順位は以下の通り。
(1)サウジアラビア(勝ち点4、得失点差+1、総得点3)
(2)イラク(勝ち点4、得失点差+1、総得点2)
(3)バーレーン(勝ち点1、得失点差-1、総得点2)
(4)カタール(勝ち点1、得失点差-1、総得点1)
そして3戦目のカードがカタール-バーレーン、サウジアラビア-イラク。サウジアラビアとイラクが何らかの「取り引き」をして引き分けにすれば勝ち点1ずつを上積みして、この両チームが決勝トーナメントに進める。多くのメディアがこの点に言及していたが、サウジアラビアのパケタ監督は試合前にそれを否定していた。
実際にサウジアラビアは1-0でイラクを破り勝ち点7で1位通過を決め、アラーフバイルの2発でカタールを2-1で下したバーレーンが勝ち点4として、総得点でイラクを上回り最終戦で準決勝進出を決めたのだ。バーレーンはアジア杯予選に続く奇跡の逆転劇で、翌日の新聞も景気のいいタイトルが並んだ。
「ありがとう赤の軍団(=バーレーン)、緑の軍団(=サウジ)、そしてアラーフバイル」(アクバルアルカリージ)
「赤い地震がカタールをぶち壊す。チグリス・ユーフラテスのライオン(=イラク)から準決勝進出権を奪う!!」(アルワクト)
ここで考えたいのがなぜ、サウジアラビアはリスクを負ってまで勝ちに行ったか、という点だ。もちろんB組を1位通過して、A組1位のオマーンより2位のUAEと準決勝をやった方が決勝に進出できる可能性が高いという戦略的な発想はある。だが、それ以外にサウジアラビアのイラクに対する感情とバーレーン、カタールに対する感情の違いを理由にすることができる。
サウジアラビアとバーレーン、カタールは、中東地域における軍事・経済・文化などの地域協力機構である湾岸協力会議(GCC=Gulf Cooperation Council)を構成する6カ国に含まれており、その結びつきは強い。そもそもガルフ杯はGCC6カ国(上記の3カ国以外はクウェート、オマーン、UAE)の総当り戦として開始されており、イラクとイエメンは後から加わった非GCC諸国である。GCC諸国間はノービザで行き来することができ、文化、社会的なつながりは極めて深い。サウジアラビアにすればイラクと“談合”して、仲間であるバーレーン、カタールを落とすのは大げさに言えば「GCCの大義」に反することになる。しかも湾岸戦争時にサウジアラビアはバーレーンとともに米軍の駐留を許可してイラクと戦った経緯がある。その結果、サウジアラビア領内にはイラクのミサイルも飛んできたのだ。何よりイラクはGCCの盟友クウェートを侵攻した国でもある。それらがサウジアラビアがイラクとの“談合”を拒否して勝ちに行った理由であるのは間違いない。
さて、7月に行なわれるアジア杯である。1次リーグの組み合わせを見てみよう。
B組 ベトナム、日本、UAE、カタール
D組 インドネシア、韓国、サウジアラビア、バーレーン
日本と韓国が入ったグループではGCC諸国が2つづつ入っている。しかもUAE-カタール、サウジアラビア-バーレーンはともに最終戦。同じアラブのイラクですら落としたGCC諸国の結束の強さを見ると、同様のシチュエーションになれば「よそ者」である日本と韓国を容赦なく落としにかかるのは必至で、どちらも攻めずに自陣でボールを回す光景が90分近く続く可能性だってある。
日本代表のオシム監督も視察に来て「アジアは難しい」というコメントをもらしたそうだが、このあたりの事情を含めてのものなのかもしれない。日本も韓国も最終戦で自力で決勝トーナメント進出を決められる状況にしておかないと1次リーグ敗退の可能性もあることを意識した方がいい。
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1965年、東京生まれ。一橋大学社会学部卒、97年よりバーレーンに在住し、バーレーン大学で日本語の講師を務めている。98年バーレーンでのガルフ杯のころからバーレーン代表の試合を見続け、現在は中東サッカー全般をウオッチしている。
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