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2008年10月21日

勝ち切れない理由

<W杯アジア最終予選:日本1-1ウズベキスタン>◇A組◇10月15日◇埼玉
 実にストレスのたまる試合だった。前半の最初のあたりは、まれに見る出来の悪さで、もっとサポーターはブーイング入れてもいいんじゃないかと感じた。

 とにかく走らない。各選手がマイボールになっても動きが鈍く、出し所を探っているうちにつぶされるケースが目立った。サイドでは、香川と内田でボールを失うことが多かった。日本のフォーメーションは典型的な4-2-3-1だったが、1つ典型的ではないところは1トップが上背のない玉田という所である。上背のない選手は言うまでもないが、ロングボールに弱い。上背のない選手が1トップで活躍するための必須条件は優秀な中盤である。今のフランス代表は2トップが多いが、2006年W杯ドイツ大会はアンリの1トップだった。アンリは上背には優れなかったから、ヴィエラのロングパスではなく、その前の3人(マルーダ-ジダン-リベリー)からのショートパスによって活躍していたのである。前線で長くボールをキープできたジダンを失った後のフランス代表が、1トップを捨てて2トップになったのは必然である。

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 今回の日本も上背のない玉田が1トップだった為、自陣でマイボールになると、ロングボールを蹴る選択肢がなかった。中盤の底の選手、あるいはDFが、香川-大久保-中村という中盤、あるいは攻め上がる内田を出し所として見ていたのは、こういう理由である。しかも、大久保はやや前めでプレーして、中盤にボールを拾いに来なかったから、実質3つの選択肢しか日本にはないことが多かった。この状況下で、対するウズベキスタンは4-4-1-1のような布陣であり、前の4が日本の3名をマークしていたから、日本がきついのは当たり前である。

★中盤を止められると

 どの試合がそうだったかすぐには思い出せないが、日本が、最終ラインの前にもう1つ防衛線をきっちり作るチームに苦戦した記憶がいくつか残っている。日本はずっとポストプレーヤーを欠いてきたから、強いボールでゴールライン際まで味方を走らせた中田時代以外は、伝統的に日本の攻撃パターンは、10番の選手からのショートパス供給と、いったんサイドの足元に出してからのクロスであり、この2つはともに敵ペナルティーエリアより少し手前の帯状のスペースを必要とする。従って、ここをラインで埋められると、日本の攻撃は途端にぎくしゃくとする。ウズベキスタンとの前半はまさにこのパターンだった。

 こういう時はボールに連動して人が動くしか打開策はないのである。しかし、日本代表の動きは乏しく、苦し紛れにサイドに出した時、つまり香川と内田の所でつぶされる、というパターンが続いた。香川には阿部、内田には中村というサイドのパートナーがおり、また、中には本来大久保が同じ高さでいるはずなのだが、この間でのパス交換がほとんど見られなかったのは、サイドの孤立がひどかったことを示している。

 また、ボランチの押し上げもほとんど見られなかった。遠藤はキープ力のある選手であり、長谷部も本来はドリブルが得意な選手のはずだが、この前半では42分まで積極的な攻め上がりが見られなかった。終わり際に闘莉王が入ったカバーで稲本が入ったが、前半から押し上げる力のある稲本がいれば、大分展開は変わったに違いない。


★失点と得点

 そうこうしているうちに、闘莉王の緩慢なプレーから失点する。フリーの闘莉王がなぜボールをうまくクリアもキープも出来なかったかは、実に謎だ。今野だったら100%失点していないシーンである。その後、シャツキフがゴール前に走り込んだが、前にいた中沢も、マーカーとなるべき内田も非常に中途半端な位置取りで、2対1にも関わらずあっさりボールに触られている。失点する時は得てしてこんなものだが、ラインを切ろうとしていた中沢は内田にマークを渡した認識だったと思われ、他に見るべき選手がいなかった内田は、少なくともシャツキフとゴールの間にポジションすべきであった。

 ただ、この失点から日本のエンジンは本格的に始動する。35分に香川、38分に内田が惜しいシーンを作るが、これはともに中村俊輔からのパスである。中村がボールを持てるようになったのは、遠藤や内田がサポートするようになったのと、1点入れて、ウズベキスタンの中盤4人のラインが下がったせいである。後者の方がインパクトとしては大きいかもしれない。これは、ウズベキスタンの布陣が日本を研究して2つめの守備ラインを高く保ったというよりは、もともと後がないため、MFが高く陣取っていたのが偶然功を奏した、という方が実態に近いことを示している。
 
 その直後の日本の得点も、中村からである。明らかにシュートに行った大久保だったが、結果的には玉田へのパスとなったものだ。38分の内田のシーンは結果的にオフサイドにはなったが、もともとオフサイドでなくても、あのパスで得点するのは至難であっただろう。一時期の柳沢を引き合いに出すまでもなく、ゴール前では少々強引であっても、シュートを打ちに行った方が、綺麗にショートパスを出すよりも得点確率は高いと思われる。


★パワープレー

 グループの中でも負けが込んでいる相手に対し、ホームでドローという結果が見えてきた終わり際、闘莉王が上がって、日本はパワープレーに出た。試合後の記者会見で、岡田監督は、高さのある典型的センターフォワードであるシャツキフが下がって、ゲインリフになったことで、阿部でも十分止められるという判断からだったと述べていた。相手FWの状態を見切った上で、守備の高さをギブアップし、闘莉王を前に出したのだが、この判断は納得できる。

 ただ、攻め方を変えなかったのはいただけない。せっかく前線にターゲットマンが出来たのだから、それまでのショートパス路線から、多少ロングボールを放る方向に舵を切っても問題ないと思うのだが、日本はこれまで通りショートパスを繋(つな)いでいた。ショートパスを繋いで前線までボールを持ってこられるなら、苦労はしない。それに苦労しているからこそのロングボールなのである。

 稲本が入り、闘莉王が上がってからロスタイム終了まで15分あったが、闘莉王がボールに絡んだシーンは少ない。闘莉王が記憶に残ったのは、最後クロスが上がってシュートするシーンくらいであった。闘莉王のヘディングシュートは確かに魅力的だが、パワープレーはそれだけではない。日本には余りいないフィジカルが強く上背のあるFWが、パワープレー時には前線にどっかり構えている状況なのだから、これをポストに使わなければバチがあたる。こうなってしまった原因が、普段ポストプレーヤーへのボールを蹴り慣れていないせいだとすると少し悲しいが、今後このような局面が来ることに備えて、パワープレー時のオプションを整理しておいた方が良い様に思われた。

※写真はゴールを狙う闘莉王(撮影・たえ見朱実)


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コメント:1件

私も同じ意見です。巻をメンバー外にしていいのか?と試合前に不安がよぎったのが見事に的中して、闘莉王をやむなく上げるなど、岡田の愚行には苛立ちを感じました。そもそも岡崎は意味のない投入でしたし、1トップの役割が本職でない玉田に本来のプレーをさせるどころか、岡崎もセカンドトップのタイプなので連携ミスを連発し、結局岡崎と興梠の2トップという意味不明なコンビを組ませるなど戦術がちぐはぐでした。そもそも森島を一回も試さずメンバー外にする点も不可解ですし、そもそも大久保、玉田、岡崎、興梠とすべてセカンドトップの選手をオーダーするなど考えられないものです。確かに日本にはポストプレイヤーがやや足りないですが、Jリーグでも上背のあるFWはいて、今までにも久保や高原、鈴木、巻、我那覇、前田、一昔前では高木など、必ず上背があり競り合いに強いFWを置いてきたわけですから、何故に今そのような選手を呼ばずにチビばかりを使うのか理解に苦しみます。岡崎や興梠よりも巻や赤嶺の方が結果を残していますし、前田や森島の方が期待できます。さらにはJ2から佐藤や香川を呼ぶならば、何故に小松や藤田という結果を残している典型的ストライカーを呼ばないのでしょうか?
今の日本が目指すサッカーで中央のラインでの一対一の戦いを避けていては負け癖がつきます。サイドに逃げるようにパスを回しても点が入らないのは目に見えています。もはや岡田ジャパンの采配では現実的に厳しいでしょう

投稿者 ハル : 2008年10月25日 18:35

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市川雄介 科学的サッカーのススメ
市川雄介(いちかわ・ゆうすけ)
 1975年8月生まれ。サッカーどころ静岡に生まれ、幼少よりサッカーに親しむ。JSL1部でのヤマハ発動機優勝をきっかけにプロサッカーの面白さに目覚め、90年イタリアW杯で世界のレベルを知った。  大学卒業後は、ビジネスの世界で、M&A、経営コンサルティング、企業投資に携わる。仕事上、戦略的な資源配分や組織論について考えることが多く、かねてより集合としての人のパフォーマンスを最大化するという観点で、企業経営とモダンフットボールに多くの共通点が有ると考えていた。  また、最大の趣味は海外旅行であり、アマゾンの泥濘、アンデスの雲の上、キリマンジャロのサファリ等、各地でボールを蹴る人々を記憶に収めてきた。ルーマニアでは孤児院の子供達とプレイした経験もあり。  本コラムでは、アウトサイダーならではのサッカーに関する独自の視点を提供すると同時に、旅行に出ている際には現地のサッカー事情なども交えてお話し出来ればと考えている。

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