2008年6月20日
戦略家と選択家、最終予選前に為すべきは…
<W杯アジア3次予選:日本3-0タイ>◇6月14日◇2組◇バンコク、ラジャマンガラ・スタジアム
勝ったこと以外に価値を見出せない、そんな試合だった。
もちろん前半のプレスは素晴らしく、タイはなす術がなかった。このプレスで勝ったようなものである。プレスがかかるから日本がボールを持て、ボールを支配されてタイにプレッシャーがかかり、そのプレッシャーに負けてタイ守備陣はセーフサイドにクリアするようになり、そのクリアで得られたセットプレーで日本に点が入ったのだ。

しかし、タイとの2試合を終えて、振り返ってみると、日本のあげた7点の内、5点はセットプレーである。5点のセットプレーの内、2点が中沢、1点ずつが闘莉王と巻と、4点がヘディングである。タイの選手はどうしようもなく小さい。フィジカルに劣る相手にフィジカルで点を入れても、日本よりフィジカルに勝る強豪国にこのチームで勝てるかという問いへのヒントは見えてこない。流れの中の得点だけ見れば、2試合合計で2-1である。この現実は直視しないといけない。
★戦略家と選択家
厳しいことを冒頭から述べたが、一方で岡田監督の優れた所はその選手の選択眼である様に思う。オシムや、ジーコ、トルシエの時代の頃のような、なぜこいつを出さないのか、というフラストレーションがこのチームにはほとんどない。センターバックはフィジカルに秀でる2人を揃えて安定したし、下がり目からのパスが得意な遠藤をボランチに下げ、より前で足元が使えて速い松井を左サイドのアタッカーに入れたことで、FWとMFの間の乖離はなくなり、攻撃はぐっと活性化した。タイ戦での香川は今ひとつではあったが、大久保のトップ下も相手に脅威を与えている。
1年ほど前に、オシムジャパンを評して、両サイドからのゲームメークに可能性があると書いたが、松井と中村俊の両サイドアタッカーはうまく機能しつつある。守備的MFも点を取りに行く相手ならあえて入れずに攻撃的な長谷部を配し、守りに行く局面なら今野というのは実に自然だ。前稿に書いたが、長友・駒野の両サイドバックは過去15年でもベストの組み合わせの様に思える。監督には戦略家と選択家の側面があるが、選択家という観点では岡田監督はJ2レベルまでよく選手を見ているようだし、実に安心できる。
★個の集合体でここから勝てるのか
その一方で、日本は果たして個の力の集合でW杯のノックアウトラウンドまで進めるのか、そこははなはだ疑問が残る。日本代表はこの所、欧州や南米の強豪国と試合をずっとしていない。そこそこ強い国で、かつベストメンバーが来日したのは2006年のガーナ戦まで遡る。
W杯ドイツ大会、W杯日韓大会の1~2年前に何をしていたかと思い出せば、日韓の時はハッサン2世杯やカールスバーグ杯でフランスやメキシコと戦い、翌年には懐かしいサンドニの「虐殺」や、スペイン戦などが行われていた。W杯ドイツ大会の2年前、ちょうど今くらいの時期には、欧州遠征に出かけてチェコやイングランドと戦っていい勝負をしている。その後もアルゼンチンやドイツと試合をして、アジア最終予選に臨んだのだ。このように、トルシエジャパンやジーコジャパンは、フランスに0-5で負けたり、ドイツに0-3で負けたり、あるいはイタリアやイングランドに1-1で引き分けたりしながらチームの実力を判断していったが、いずれにせよ明らかに強豪国相手には分が悪かった。
岡田ジャパンを構成する選手は、若いスターがバンバン現れたりして昔の選手と比べて明らかにすごくなった訳ではなく、むしろ変わらないメンツで年を取り、中田英が去った分だけ、個の集合体としての実力は落ちると考えた方が現実的だろう。その現実の上で、どう勝つのかが戦術であり、岡田ジャパンの戦術は、良き選手を良く配し、シンプルにつないでサイドから攻撃する、という以上には未だ見えてこない。
僕は、このまま格下の相手と戦った戦績のみでチームを判断し、最終予選に行くことを強く恐れる。欧州や南米と試合が組めないのは、日本人監督のビハインドなのは間違いないが、そこは何とか最終予選までの間も、強豪国とガチンコの勝負をして、再度実力を計って、チームの方向性をジャッジすべきではないだろうか。これまでは、最終予選後にコンフェデ杯が有ったが、オシム時代に日本はアジア杯で負けているので今回は出場できない。これによって、W杯まで他大陸の強豪と試合する機会がいつもより乏しいのは間違いないから、意識的に試合を作るのは当然の方向性だろう。
★厳しい最終予選
さて、色々と思うところを述べたが、もちろんタイとの試合にリアリスティックにフィジカルにものを言わせて勝ち、オマーンがバーレーンと引き分けたことで1試合を残して最終ラウンドに進んだこと自体は寿ぐべきことだ。W杯本戦とは違い、グループ1位とか2位とかが今回はあまり意味を持たない抽選方式のため、次のバーレーンとの1位2位対決は流せる試合ではあるが、ここは逆にきっちり仕返しをしたい所である。なぜなら、バーレーンとは最終予選では手元の計算で45%の確率で同じ組に入って相まみえることになるからだ。相手に与しやすいイメージを持たれないためにも、ホームで完膚(かんぷ)なまでにたたきのめしておきたい。
もし再度この小国に手こずるようなら、最終予選の10カ国中、一発合格の4位までに入るのは厳しいと思わないといけないだろう。何せメンツは、オーストラリア、韓国、北朝鮮、ウズベキスタン、サウジアラビア、イラン、UAE、バーレーン、イラク or カタールといった国々である。4位に入るってのは、オーストラリア、韓国、サウジアラビア、イランの強豪・常連4カ国のどこかを蹴落とさないと実現できない話なのである。
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※写真はタイ戦の前半39分、ゴールを決め喜ぶDF中沢(撮影・為田聡史)
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コメント:3件
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- 市川雄介(いちかわ・ゆうすけ)
- 1975年8月生まれ。サッカーどころ静岡に生まれ、幼少よりサッカーに親しむ。JSL1部でのヤマハ発動機優勝をきっかけにプロサッカーの面白さに目覚め、90年イタリアW杯で世界のレベルを知った。 大学卒業後は、ビジネスの世界で、M&A、経営コンサルティング、企業投資に携わる。仕事上、戦略的な資源配分や組織論について考えることが多く、かねてより集合としての人のパフォーマンスを最大化するという観点で、企業経営とモダンフットボールに多くの共通点が有ると考えていた。 また、最大の趣味は海外旅行であり、アマゾンの泥濘、アンデスの雲の上、キリマンジャロのサファリ等、各地でボールを蹴る人々を記憶に収めてきた。ルーマニアでは孤児院の子供達とプレイした経験もあり。 本コラムでは、アウトサイダーならではのサッカーに関する独自の視点を提供すると同時に、旅行に出ている際には現地のサッカー事情なども交えてお話し出来ればと考えている。
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アジア4位までに入るのは、確かに今の現状を考えると難しそうな気がする。でも五輪明けにU-23の選手が、合流してケミストリーが起きれば可能になるかもと淡い期待を持っているし、現在怪我している選手の中にも面白い選手が隠れていると思う。
大分トリニータの家長、高橋、東京FCの赤嶺
個人的意見です。
大きな才能覚醒すればFC東京の平山 でも無理かな……。?
投稿者 コイシ : 2008年6月21日 03:03
市川さんにとって広島の柏木の評価はどうですか? 運動量はあるし、パスセンスはいいし、彼が中心になってもいいように思うのですが。U-23でも一時は彼が中心でしたしね。その後、故障で離れてますけど。
投稿者 yuiyui : 2008年6月21日 13:14
最終予選前に成すべきは、戦術家を雇い的確な戦術練習をする。
その確認方法として、試合を組み成果を見る。その繰り返ししか無いでしょう。
今の岡田監督は確かに「選択家」ですね。それ以上でもないし、それ以下でもない。ただそれだけです。個に頼るサッカーです。
最終予選を選手の気力だけ(監督は叱咤激励するかもしれない)で乗り切るには、アジア内でのレベルから言うと際どい勝負が続くでしょう。
それで5位になって、ニュージーランドに勝って出場決定!ってところでしょうか。。。 それで世界をあっと言わせることはできないでしょう。それどころか、フランスW杯のような結果で終わるのが落ちですね。今は出場が目的の時代では無い筈。そのようなサッカーではJリーグの衰退を招くでしょう。
投稿者 男はつらいよ : 2008年6月23日 02:28