2007年4月17日
パサーが攻撃的MFというのは所与か?

最初にずい分と間隔があいてしまったことをお詫びしたい。ペルー戦を見た後、この面白い試合にエキサイトして、色々と書きたい事はあったのだが、その後の仕事を始めて以来の殺人的な忙しさに消耗して、何週間もたってしまった。実際、倒れなくて良かったのだが、代表の試合も増えてくるシーズンなので、まだひまにはなっていないが、何とか時間を作って、コラムをお届けしたい。
★先祖帰り
<国際親善試合・キリンチャレンジ杯:日本2-0ペルー>◇3月24日◇日産ス
さて、試合の方だが、4バックになり、テクニシャン2名が攻撃的MFを務め、どことなくジーコジャパンのようだと皆が思ったのではないだろうか。実際試合が始まってみても、オシムのこれまでの戦術はどこかに飛んでいき、ジーコジャパンそのもののテイストであった。余りに既視感があったので、一体何がこのテイストを形作っているのかを考え出してしまった。最初は、球をゆっくりと回す、悪く言えばこねる攻撃的MFかと思ったが、途中ではた、と気付いた。FWがチョコチョコ動きすぎて、かつFWとMFの間が開いているのである。オシムになって良くなったことの1つは、FWのポジショニングだと思っている。ジーコジャパンのころは、久保がいる時は違ったが、久保以外の時は、特に相手が強いと、どうにも動きすぎて、ターゲットは定まらないわ、ボール受けるとバタバタしてミスするわで、天を仰ぐことが多かった。オシムジャパンでは、FWが突っ立っているというわけではないが、ペナルティーエリアの近くに少なくとも1名、通常は2名いて、決定力はともかく、攻撃の基点としてはかつてよりずっと安定していたように思う。
また、セルティックでは精力的に前後に動くMF中村俊輔が、かなり低めの位置で最初プレーしていたのも気になった。MF遠藤があまり前に出てプレーするタイプではないだけに、両サイドの攻撃的MFが低めの位置になりがちで、それに伴って、高原はズルズルとボールをもらいに下がってきた。いかな高原でも低めの位置でボールを受けて、誰も追い越さず、前が巻だけではどうしようも出来ない。
ジーコジャパンでも中田英寿・中村俊輔を攻撃的MFに使った時は、よくこの形になった。ボールは回れど、点はかけらも入りそうにない、あの時のイライラをふと思いだす。序盤はハイペースでは有ったが、日本は攻撃のバランスがかみ合わないままに時計の針ばかりが進む展開だった。
しかしサッカーは面白いもので、ペルーの必要性の低いファウルでもらったFKからあっさり1点が入ると、がぜん選手の動きは良くなった。21分に、中村俊輔は依然として低い位置でのプレーを続けていたが、それをMF阿部が追い越して相手を脅かした動き、前半27分の高原が珍しくドリブルで3~4人引き付けて、結局倒されたものの、何人もフリーの選手を生んでいた動きなど、ポジションが流動的になって、攻めあがる選手が増え、かつプレーの狙いがはっきりとしてきた。ここからようやくオシムジャパンに戻ったと言うべきだろう。
オシムはなかなか欧州組を呼ばずに、世のファンタジスタ好きから親の仇のように言われているが、欧州からベテランのテクニシャンが2名入るだけで、ジーコテイストに戻ってしまう状況では、国内組中心に当面チーム作りをするのはやむを得ないと思われた。
★パスの受け手・出し手
さて、高原のゴールは美しかったが、その後の展開はあまり美しいとは言えない。特にMF中村憲剛が入ってからMF羽生直剛が入るまでの8分間(後半15分~同23分)はひどいもので、ボールがまったく前に行く気配がなかった。この時中盤に中村俊輔、遠藤、中村憲剛の3名のパサーがいたが、パスは出し手と受け手がいて始めて成立するものだと、あらためて認識させられた。前半悪かった時も、パサーである攻撃的MFのポジションが低すぎて、パスの受け手であるFWとの距離があって、有効な受け手が少なかった。逆に良くなった時は、ボランチが攻撃的MFを追い越す動きをしたり、前線でタメを作ったすきに他の選手が走りこんだりと、パスの受け手が増えた時であった。こう考えると、この試合が簡単に行かなかった最大の理由は、攻撃的MFのタイプがそろい過ぎていたので、ポジションが結果として両翼ともに低くなりがちだったことだろう。
付け加えると、当初の4-2-2-2というフォーメーションは、W杯ドイツ大会で言えば、ジダンがいない時のフランス代表と同じである。実際、トーゴ戦ではこの形になったのだが、今回、あるいはジーコ時代の日本と何が違うかと言うと、サイドに開く攻撃的MFがパサーであるかどうかである。
フランス代表は、マルーダとリベリーという、スピードにあふれ、シュートの打てるサイドアタッカーを2名そろえ、日本はこの形だとよくパサー2名がサイドに開く。どちらが良いか単純には言えないし、タレントの違いもあるのだが、少なくとも、トーゴ戦の時のフランス代表は、ジダンがいなくても、バランスを崩すことはなかった。エレガントさはなくなったが、ボランチがボールを散らすと、両サイドはガツガツと攻めて、それはそれで見ごたえがあったのを覚えている。
今回の日本代表について、もしフォーメーションに文句を付けるなら、どちらか1人はパスを受けられる選手であった方が良かったと思う。また、オシムジャパンはフォーメーションに意味を強く持たないのが特徴なのだから、両攻撃的MFがもっと動くか、そこが動かないなら他の選手がそれをもと早めにカバーする必要は、そもそもの問題として存在するだろう。
★それぞれの選手について
今回は、ゲームの内容そのもの以外に、個人として目に付いた選手が何人かいた。最後にそこに触れてみたい。まず高原である。今のブンデスでの実績が納得できる動きであった。何より狭いところでのボールコントロールが格段にうまくなった。昔はトラップが大きくて、目を覆いたくなることがあったが、大分改善された感じを受けた。体はあまり強くないが、間合いの取り方がうまくなったのか、以前ほどコロコロ転ばなくなった。もともとうまい選手ではあるので、体を自由に使えて、ボールに触り続けられれば、ゴールの確率は高まるだろう。中村俊輔は…FKの切れ味は相変わらずである。守備もある程度していたのは触れた方がフェアだと思うが、左利きの選手が右サイドで使われたのに、殆どシュートが無いのはいただけない。以前からの課題として、攻撃的MFとして配された時のペナルティエリア近くでのパフォーマンスがあったと思うが、これは依然としてテーマとして残っていると思われる。
DF闘莉王は、ミスパスが目立った。前回の試合から、ここは変化が無い。ミスパスが全体のリズムを悪くしている感もあり、今の代表では、最も日本人のストレスを生み出している選手の1人かもしれない。ただ、闘莉王が足技にそれほど優れないのを知りつつも、彼が攻め上がっていくと、他の選手を相手するのと同じグラウンドのボールを出す周りの選手にも改善の余地はある。折角、機を見て思い切って上がれる図太さを持つ選手なのだから、闘莉王が上がったら、速いクロスを当てるとか、闘莉王のスペックに見合った攻撃の仕方をチームとして1度整理した方が良いと思われた。
あと、MF藤本淳吾。この選手は素晴らしい。飛び出しも思い切りが良いし、スピードは勿論、足技もある。最後に出た若手数人では1番良かった。こういう選手は1名攻撃的MFに加えておくべきだ。パサーを2名そろえるよりも、ずっとその方が相手に脅威になるだろう。
※写真はペルー戦の前半、ドリブルするMF中村俊輔(撮影・蔦林史峰)
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コメント:7件
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- 市川雄介(いちかわ・ゆうすけ)
- 1975年8月生まれ。サッカーどころ静岡に生まれ、幼少よりサッカーに親しむ。JSL1部でのヤマハ発動機優勝をきっかけにプロサッカーの面白さに目覚め、90年イタリアW杯で世界のレベルを知った。 大学卒業後は、ビジネスの世界で、M&A、経営コンサルティング、企業投資に携わる。仕事上、戦略的な資源配分や組織論について考えることが多く、かねてより集合としての人のパフォーマンスを最大化するという観点で、企業経営とモダンフットボールに多くの共通点が有ると考えていた。 また、最大の趣味は海外旅行であり、アマゾンの泥濘、アンデスの雲の上、キリマンジャロのサファリ等、各地でボールを蹴る人々を記憶に収めてきた。ルーマニアでは孤児院の子供達とプレイした経験もあり。 本コラムでは、アウトサイダーならではのサッカーに関する独自の視点を提供すると同時に、旅行に出ている際には現地のサッカー事情なども交えてお話し出来ればと考えている。
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オシムは、この試合後、
「後半の後半ー若手に切り替えて納得できる方向になった」
というようなコメントを残した。
相手が点差をかんがみ、諦めてめっきり運動量が落ちた点を差し引くと一概には言えないが、素晴らしいボール回しが出来ていた。これは、キープ力のある俊輔に預けて一息ついている間に、敵陣の守備網が出来上がっていた前半の闘いよりはるかに見ていて楽しいサッカーだった。
相手との力の差、コンデションの違いを差し引いても、ここまでパスの通る(ボール回しの続く)試合は久しぶりだったが、社主の言うように相手を混乱に陥れるボール回し(後方からのどんどん追い越す動きとか、意表を突くスイッチ)とか出てきたのは、若手に切り替えてからだった。
パッサーが何人いても、受け手がいなければ『猫に小判』であり、パッサーがもたつけば「待ってましたとばかりにカットされる」のが当たり前で、ウエーブを今更ながら考えさせられる戦いぶりの時間長くありました。
また、展開力に関しては、俊輔が受けて、左右のスペースにサイドが走りこむだけのワンパターンでは一時的に相手守備陣が振られ、混乱することはあってもその繰り返しには慣れが来ます。
中央においてスイッチとか、オープン攻撃の形からのすばやい折り返しによる中央での攻撃の形も、もう少し増やさないことには、得点チャンスは限られます。
高原の素晴らしさに関しては同感です。
トゥーリオに関しては個人的には評価していませんが、アグレッシブなスタイルは今の代表に必要なのかもしれませんね。
それから、お忙しいのは承知しましたが、もう少し更新回数が多いとうれしいと考えるのは僕だけじゃないと思いますので、是非頑張って頂戴!!!お願いしますね??
投稿者 弧愁庵人 : 2007年4月17日 18:32
いつも的を射た内容で今回のUPについても同感です。
中村俊輔は初召集と言う事もありプレーが大人し過ぎましたね。
今後の日本代表のためにもセルティックでプレーしているようにもっと輝いて欲しいと思います。
トゥーリオは無駄なイエローカードをもらったり、足元が下手などマイナス点が目立ちますが今のところプラス面が大きいため選出されていると思いますが如何ですか?
超える選手が出てくることを期待したいですね。
攻撃面では一人ひとりが高原のように仕掛けていかないとゴールのチャンスが限られてきますよね。
また次のUPを期待しています。
『弧愁庵人』さんのコメントにも納得です。
投稿者 ファミリー : 2007年4月18日 17:46
私も、闘莉王の上がりは危なっかしくて見てられない、というのが正直なところ。
あのドリブルの下手さとパスミスの多さでは、Jでは通じてもW杯本戦では通じないと思います。
水本が早く成長して、ポリバレントな中田浩二とCBコンビを結成してくれないかな、と期待しています。
それから、前半、ジーコテイストな試合になった原因の大部分は俊輔にあるのではないでしょうか。
サイドチェンジはなかなか良かったと思うのですが、チャレンジングな縦パスがなく、自分からゴール前へ走りこむ/切り込むプレーも見られなかったので、攻撃が遅くなってFWとMFの間が間延びしてました。
そうすると、高原が不安になって、ボールをもらいに下がって来たりサイドに流れたり、とチョコチョコと動きたくなってしまっていたように見えましたね。
ジーコジャパン時代と全く同じ現象です。
阿部や鈴木啓太、羽生、水野等の”リスクを冒して、前線に走りこむことができる”選手たちがきちんと走ると、ジーコテイストではなくオシムテイストに変わるところは同感です。
最後の10分間のように、どんどん前に走りこむプレーをいつでも出来ることが、オシムジャパンの理想形なんでしょう。
ジーコジャパンの頃、ボランチの位置から頻繁に前線に走りこむ中田英のプレーが「前線に上がりすぎで、バランスが崩れる」「守備をしてくれ」と非難轟々だったことを思うと、隔世の感があります。
オシムジャパンに中田英がいたら、本当に面白いチームになったと思いますね。
投稿者 ジダ : 2007年4月21日 07:50
ジーコテイストな部分はおおむね同意です。
闘莉王のようにリスクをかけられる選手は欲しい。もともとリスクをかけられる選手がいて、はじめて勝負出来るのだが、日本のように負けないための保険をかけたがる傾向は世界ではまったく役に立たない。
コラムの文面にあるように、今は彼を活かす手法や決め事が無いだけ。
オシムは選手にマイナス面はあっても、それを補って余りあるプラスをチームにもたらすのであれば。という方向で選手を選出。駒野もそうだけど、個々のミスにわれわれがいちいち反応していたら、(通用するかは別として)オシムの平面戦術の理解は難しいでしょう。
投稿者 徒然 : 2007年4月22日 11:51
「サムライブルー」ドイツWC代表に足りなかったのは、大和魂だったと言ったら皮肉でしょうか?
個人技重視、個人実績重視から、とどのつまりはチーム軽視・さらに世代間の確執にまで悪循環へ陥ってしまったのがジーコジャパンだったように思います。練習で声の出ない有様は、もう見てられないくらいだったそうですよ。
私は、トゥーリオにこそ大和魂...というか、愛国心があると思えるのですよね。
トルシエが言っていた、「全員がゲームに出られるわけじゃない。だったら出ていなくてもチームの為に全力を出せる選手を選ぶべきだ」という言葉が身にしみます。
彼ならケガやイエローカードで出れなくても、中山や秋田のような働きが出来ると思うのですが、いかがでしょうか?
投稿者 パヴァーヌ : 2007年4月26日 13:20
いつも的確なコメントで、素晴らしいと思います。
が、次の原稿を早くお願いします。
これだけ試合後遅れますと、誰も見に来なくなりますよ。
投稿者 ニルセン : 2007年6月04日 13:20
パスにはロングパスもあるわけで、MFが低い位置でも正確なロングパスが出せるピルロのような選手がいれば、また違うんでしょうけどね。
投稿者 ロングパサー : 2007年9月09日 21:31