日刊スポーツのニュースサイト、ニッカンスポーツ・コムのサッカーページです。

  • 日刊スポーツIDについて


ここからこのサイトのナビゲーションです

共通メニュー

企画特集


2008年3月05日

むしろ見えなくなった岡田ジャパンの形

yamase080223.jpg

<東アジア選手権(男子)日本1-1韓国>◇2月23日◇中国・重慶

 読者諸兄は既にご存じの通り、東アジア選手権は最終戦韓国と引き分け、1勝2分という成績で優勝を逃した。北朝鮮戦、中国戦ともに苦戦はしたし、負けてもおかしくない試合では有ったが、地力という観点では日本が勝っていたのは明らかであったから、ここは実力が伯仲している韓国戦に焦点を合わせてみたいと思う。

★サイドからのビルドアップ

 韓国戦は総じて言えば、選手の方々には失礼だが1・5軍、あるいは2軍でよく戦ったと言うべきだろう。ただし、W杯予選に向けて収穫があったかと言うと、それは甚(はなは)だ疑問である。これは東アジア選手権全体を通じて言えて、戦術面での進歩はなく、何人かの選手はテスト出来たが、果たしてレギュラーが変わるような成果があったかと言うと、首をひねらざるを得ない。例えとして第1に挙げなければいけないのは、左サイドの加地起用である。韓国戦は駒野の負傷によってサイドバックの駒が無くなったので、起用はやむを得ないが、到底機能しているとは思えなかった。クロスは一体何本入ったのか、フリーランしてスペースを作ったシーンはあったのか等、色々と疑問は尽きないが、一番気になったのは、センターバックがボールを持った次の受け手として機能していなかったことである。

 日本代表は、センターバックがボールを持つと、阿部が比較的長いボールを蹴るか、あるいはサイドバックに預けて、サイドバックがゆっくりとドリブルでハーフウエーライン近辺まで上がり、そこからMFとのやり取りでサイドを攻めるか、というパターンが比較的これまで多かった。真ん中は相手のFWも残っていてチェックが厳しいため、ボランチに預けることがそう多くなかったのだと思う。このような過去の傾向と比べると、韓国戦では加地や内田がボールを持って攻め上がるシーンが極端に少なく、ボランチがボールを持つシーンが多かった。それで、ボランチが持つと、次にボールを持つべき遠藤・山瀬・橋本の2列目は遥かに遠く、またサイドバックの2名はDFラインの少し前という中途半端な場所取りで、サポートなく日本のボランチの2名VS韓国のFWと攻撃的MFの計4名みたいな数的優位を作られ、ボールを失うシーンが目立った。

 駒野が阿部からボールを受けて、サイドを攻め上がり、遠藤とのワンツーで相手ペナルティー横のスペースに走り込む、というような代表の典型的な攻めが加地や内田ではまったく出来ていなかったのは、これは2名の消極さ、ポジショニングの悪さに原因があると言わざるを得ないだろう。

 トルシエジャパンの時代が典型だったが、日本はサイドからビルドアップするのが1つのパターンであると思う。普通は攻めの起点はボランチにあり、トルシエの時代であれば、稲本がその役なのだろうが、実際には3バックがボールを取った後は大抵左サイドの小野がボールを預かり、小野が人並みはずれたキープ力で左サイドをビルドアップして攻めの起点になっていた。

 ジーコジャパンでは、アレックス(三都主)も加地もその任を果たしていた。オシムになってからはもちろん駒野である。韓国戦は、駒野のバックアップを試す良い機会ではあったが、少なくとも加地の左サイドは利き足の問題なのか全く機能せず、またボールを預けられるサイドバックがいないと、チーム全体が攻め手を欠いてしまうという2つの後ろ向きな事実が確認できてしまった。加えて、内田について言えば、彼は比較的前でボールを受けるとスピードに乗って中に切れ込んだり、光るプレーも出てくるのだが、自陣ではボールを受けても何して良いか判らない、という風情の時が多々あった。韓国がかつてのように、2トップに両ウイングハーフで4トップのようにガンガン攻めて来る感じなら、守備を固める意味で致し方ない感もあるが、この日の韓国はサイドから強烈に来る感じではなかったから、もう少し内田もビルドアップで貢献できたのではなかろうか。

★今野と言えども

 次は2列目のサイドである。本職がボランチの橋本を責めるのも酷だが、この攻撃的ポジションに向いているとは思えなかった。前半19分、ボールを受けてから走らずにそのまま失機したのはその典型例だ。後半代わった安田は橋本よりは積極的で、低い位置から高い位置まで、動いて日本のリズムを作っていたが、今後レギュラーが見込めるかというと、それは少し褒めすぎかもしれない。

 最後は、今野のセンターバックである。個人的にはクレバーで好きな選手の1人だが、流石(さすが)にポリバレントなこの選手でも、このポジションの第1選択である阿部と比べると、見劣りしたのは間違いない。今野もフィードが苦手な選手ではないが、阿部に一日の長があるし、マークに行く場面で周りを見ているケースが散見された。広い視野でピンチを防ぐ守備的MFと、とにかく当たりに行ってマークを離さないセンターバックでは守り方に違いがあるのだろう。前半15分の失点シーンは、あえて犯人探しをするなら、シュートを打った11番(FW廉基勲)をマークすべきだったのは今野であろう。

 このシーンについて付け加えると、日本は4バックそろっていたが、実質的には3:2で数的不利というシーンになっていた。中沢はマンマークに付いていたが、内田だと思うが右サイドバックのポジションにいた選手は、日本から見て右側からクロスを入れた韓国の13番(MF朴源載)をチェックするでもなく、ゴールマウス前をふさぐでもない、中途半端な位置で実質的なプレーゾーンからは消えており、加地は最終ライン上だったが、日本から見て左サイドのスペース寄りで、これもまたプレーゾーンから消えていた。そして今野はボールウオッチに終始し、11番にパスが通ってあわててチェックに行ったが、ほとんどフリーでシュートを打たれている。要は、4バックそろっていても、両サイドバックがプレーゾーンにおらず、センターバック2名で韓国の攻撃3名を止めていたのである。そして、その2名の内1名はマークを離していたのである。

 もちろん、内田がきっちりチェックに行って、いいボールを出させなかったらとか、加地がもう少し絞ってゴール前を固めていたらとか、いくつかの「たられば」はある。ただ、ここは今野が11番をフリーにしていなければ、点は入らなかったシーンであり、センターバックとは、まさにそういう個人で個人を抑える仕事が求められるポジションなのである。

 さて、ネガティブなネタシリーズとなったが、収穫だったのは、山瀬が1トップの下で機能する事が何回かの実戦でより明らかになったことと、中村憲剛はボランチで遠藤と縦の関係になっている時より、右サイドの攻撃的MFにポジションを上げて、遠藤と横の関係になっている時の方が、両サイドからゲームメークが出来て、チームのリズムが上がることが確認できたことの2点だろうか。欧州、あるいは南米では4-2-3-1というと、3の真ん中が司令塔で両サイドはアタッカーと言う場合がほとんどだが、オシム以降の日本の4-2-3-1は3の両サイドがゲームメーカーで真ん中はシャドーストライカーということが多い。要は、欧州の4-2-3-1は3トップ1トップ下が基底にある一方、日本のそれは4-2-2-2の変形で、FWが縦の関係になっているだけということだ。個人的には、トップに高原なり前田なりを置いて、攻撃的MFの3を左から松井-俊輔-大久保とか、そういう欧州型の可能性も見てみたいが、今の形でも、MFについては一定の評価は出来ると思われる。

★依然としてこなれない1トップ

 選手の話はここまでにして、最後に戦術面を考えてみたいが、1トップが全然こなれていない点が最も不安になる要素であった。1トップはご存じの通り、クサビの役割がトップに期待されるフォーメーションである。その割にはDFのウラを取ってくれと言わんばかりに、田代が触れない強いボールがグラウンダーであれ、ハイボールであれ放り込まれるシーンが目立った。自分のポジションをボールが超えてしまったらクサビの役割はどうやっても果たせない。

 1トップの時のクロスは、ゴールに近いならともかく、遠い時はFWの胸が1つの目標になる。DFを背負いつつ、胸でワントラップして足元に落とし、そこから振り向きざまに打てれば良し、大抵は打てないので足元でキープしつつ走り込んでくる2列目に預けて、自分も反転する、というのが良くあるシーンだ。もちろん、1トップは背が高くてフィジカルが強く、一発のロングフィードをヘッドでたたき込めたり、ターゲットマンとして適当に出したハイボールを競り合って取れるような選手が望ましい。ただ、世には背が高くない1トップが山と存在するのは、中短距離のパスを胸でトラップしてコントロールできれば務まるからである。W杯ドイツ大会の時のアンリやパウレタは、この典型的な例だ。

 逆にFWを超えるようなパスの意義は、それをFWが決める可能性があるからで、これはどちらかというと2トップの時の方が、単純に数の問題で有意である。マークが集中した1トップが1本のロングパスを前を向いて取れる可能性よりも、分散した2トップの方が可能性が高い。また、日本の中盤がここ10年出来が良いだけに、中盤からは「スルーパス」という形で、FWの足元には出さず、スペースに走り込む必要があるパスが供給されることが多かったが、これも2トップ時代に適した形である。

 今回の日本代表は1トップだったにも関わらず、田代が頭でしか競れなかったり、頭を超えてしまって、そもそも反転して取りに行くのを諦めているシーンが多かった。山瀬というミッドレンジでのシュートが得意なドリブラーが1・5列目にいるだけに、もう少し田代がトラップできるボールを出して、クサビの動きから山瀬や遠藤の攻撃を引き出すべきではなかったか。

 さて、3試合を戦ったが、率直なところ、まだ岡田ジャパンの形は見えてこない。攻撃的な4-1-3-2の布陣は流石(さすが)にボランチの所が不安定で放棄されたようだが、直近採用されている4-2-3-1にしても、特にラテラルの選手は遠藤・駒野以外については流動的である。東アジア選手権では、オシム以来のムービングフットボールが影を潜め、遠藤、中村憲剛、内田辺りのパスワークという、従来通り攻め口が目立ったのも懸念点だ。岡田監督はオシムではないから、ムービングフットボールを墨守する必要はないと思うが、W杯本戦で良い成績を残すという日本サッカーの目標と、それが個人技だけでは全く実現不可能という現状からすると、目標と個人技のレベルのギャップを埋める洗練された戦術は必須不可欠である。従来通りの戦術に戻るなら、前と違う岡田監督ならではの何か一工夫を付け加えて、進歩した形にならないと、強運抜きに勝ち上がるのは難しいだろう。

 そして、この3試合、正直な感想を言えば、形・戦術は新旧混沌として、むしろ見えなくなった、と思う。既にW杯予選は始まっている。時間はさほどない。

※写真は同点ゴールを決めた山瀬(撮影・蔦林史峰)

市川雄介 科学的サッカーのススメ
市川雄介(いちかわ・ゆうすけ)
 1975年8月生まれ。サッカーどころ静岡に生まれ、幼少よりサッカーに親しむ。JSL1部でのヤマハ発動機優勝をきっかけにプロサッカーの面白さに目覚め、90年イタリアW杯で世界のレベルを知った。  大学卒業後は、ビジネスの世界で、M&A、経営コンサルティング、企業投資に携わる。仕事上、戦略的な資源配分や組織論について考えることが多く、かねてより集合としての人のパフォーマンスを最大化するという観点で、企業経営とモダンフットボールに多くの共通点が有ると考えていた。  また、最大の趣味は海外旅行であり、アマゾンの泥濘、アンデスの雲の上、キリマンジャロのサファリ等、各地でボールを蹴る人々を記憶に収めてきた。ルーマニアでは孤児院の子供達とプレイした経験もあり。  本コラムでは、アウトサイダーならではのサッカーに関する独自の視点を提供すると同時に、旅行に出ている際には現地のサッカー事情なども交えてお話し出来ればと考えている。

最近のエントリー


このニュースには全0件の日記があります。


ソーシャルブックマークへ投稿

  • Yahoo!ブックマークに登録
  • はてなブックマークに追加
  • Buzzurlにブックマーク
  • livedoorクリップに投稿

ソーシャルブックマークとは




日刊スポーツの購読申し込みはこちら

便利ツール

Windows Vista用ガジェット
球団別最新情報、写真ニュース、スコアが表示されます。阪神、ソフトバンク、日本ハム、オリックス、広島に加え、レッドソックス松坂大輔専用ガジェットも。
  1. ニッカンスポーツ・コムホーム
  2. サッカー
  3. コラム
  4. 市川雄介「科学的サッカーのススメ」

データ提供

日本プロ野球(NPB):
日刊編集センター(編集著作)/NPB BIS(公式記録)
国内サッカー:
(株)日刊編集センター
欧州サッカー:
(株)日刊編集センター/InfostradaSports
MLB:
(株)日刊編集センター/(株)共同通信/PA SportsTicker Inc

ここからフッターナビゲーションです