なごみ湯
トランジットの合間に入浴
関西国際空港のお膝元、りんくうタウンに隣接する住宅街に「なごみ湯」はある。昭和42年から「笠松温泉」として地元に愛されてきたが、06年5月23日に店舗を全面リニューアルして、名前も変えた。「何より、なごんでもらいたいから」。2代目の手塚甚樹さん(37)は工務店に細かな指示を出しながら、くつろげるスペースを作り上げた。通り沿いのガラス越しにロビーが見え、満天の採光とともに、気持ちまでオープンになる。
ホテル風のフロントロビーでは軟水を無料で持って帰ることができる。飲食用にペットボトルを持参するお客さんも目立つ。浴場は大きなドーム状態になっていて、地震などの災害に強い耐震構造とのこと。高い天井の浴室内に加えて、露天風呂も気持ちいい。
午後3時前。開店を待ちわびるお客さんがざっと20人並ぶ。いろんな銭湯を見てきたが、こんなに列ができているのはあまり見ない景色だ。年中無休、入浴料300円と、利用者にとっては使い勝手のいい条件がそろう。そしてそれ以上に、ご主人の出すアイデアがファンを増やし続ける。例えば、2月6日「風呂の日」にはビール半額はもちろん、食パン1斤をプレゼントする。「なぜパンか? う~ん。1番喜ばれるからかなあ」。地元のパン屋で仕入れたパンを、銭湯に来た地域の人が求める。まさに地元の基地的存在だ。
フロントで興味深い商品を見つけた。「アレッポの石けん」と書かれている。「うちは、軟水やから。普通の石けんは軟水に対して泡立ちがよすぎる。アレッポの石けんは泡立ち成分もなく、無添加で、うちの湯にピッタリや」。こんなところにも、ご主人のこだわりが垣間見られる。
13年前に関空が開港して以来、「空港から1番近い湯」として有名になった。トランジットの合間を縫うように入りに来てくれる遠方の客も多い。旅人は疲れを癒し“なごむ”。ふと見上げると、泉佐野沖からジェット機が離陸して行く。そうだ。ここは、旅人でなくとも、見果てぬ世界への憧れがわき立つ、そんな湯だろう。

