宝湯
十三の街に活気を!銭湯でジャズ・ライブ
阪急十三駅すぐそばで、50年以上も「宝湯」は十三の街を眺めてきた。十三といえば「ミナミ」「キタ」と並ぶ歓楽街。駅の西南側の栄町通りを中心に飲食店や風俗店が並び、電車の窓から見えるラブホテル密集地帯は目立つ。しかし十三の街の顔は「大人の夜の街」だけではない。ミニシアターの「第七藝術劇場」や、ねぎ焼きの「やまもと」、「がんこ」寿司・和食の複合大型店第1号店として開店した十三本店など、栄町エリアには他府県から訪れる観光スポットが混在する。
駅の東側、西側には商店街や学校やマンションなどが広がる。駅東出口から商店街を抜けてすぐの「宝湯」。年々、銭湯に通うお客さんの顔ぶれが変化してきた。十三の街で遊んだ後に、銭湯に寄り道するというパターンが減少している。「十三の街自体の活気がね…」と宝湯3代目ご主人下司太三さん(50)は街の将来を心配する。以前より増えてきた風俗店の影響で、飲食目的のお客さんの足が、十三の街から遠のいているのでは…と日々感じているという。
では、現在の利用層は…というと明るい話題もある。ハイキングの帰りに十三で途中下車、駅近の宝湯に直行、その後は銭湯近辺の居酒屋で打ち上げ会を行うグループをよく見るようになった。宝湯の本格的な広々したサウナで汗を流して、生ビールに喉を鳴らせば、ハイキングの疲れもとれそうだ。あとはもう1つ、気になる若者の銭湯利用の事情。十三駅周辺のマンションは、単身者用マンションが多く、ファミリータイプが少ない。独身者が銭湯に併設してあるコインランドリーを利用するついでに、銭湯に来るパターンが多く、利用客それぞれの利便性が見えて面白い。
そんな「宝湯」で04年に「銭湯ジャズ」と名付けられたライブが開催された。音楽で十三の街に活気を取り戻そうと立ち上がった「十三ジャズ実行委員会」によって企画された。ライブ会場の男湯脱衣場は、満員御礼の大盛況ぶり。ミュージシャン鎌倉研さんんのギター弾き語りを堪能した後に、一番風呂を楽しむという趣向だった。その模様はマスコミ各社から報道されて、話題性たっぷりのイベントは大成功を納めた。そして今年11月に、久しぶりに「宝湯」でまたジャズライブが開催された。前回にも増して盛り上がりをみせ、アンコール演奏では音楽に合わせて、お客さん全員が浴場に行進する熱気につつまれた。かつては社交場として栄えた銭湯の役割がまた復活したような賑わいだった。宝湯ご主人は、今後また機会があれば、ジャズの演奏以外にも、落語などの開催に対しても歓迎ムード。お客さんと共に銭湯と十三の街を盛り上げていきたいと話すご主人の表情は輝いていた。

