紅梅温泉
浴衣姿がよく似合う、天神橋筋商店街そばの湯
日本一の長さを誇る天神橋筋商店街のそばに「紅梅温泉」はある。大阪天満宮横の天満天神繁昌亭からわずか400メートル。寄席のあとに銭湯で汗を流すなんていう、粋な和の世界が目に浮かぶ。
昭和37年に初代の田中正男さん(88)が開業した。昔の地名「紅梅町」にちなんで紅梅温泉と名付けられた。銭湯内は天井が高く、日の光が差し込み気持ちがいい。中央に主風呂、奥には超音波気泡風呂、水風呂、薬湯と並ぶ。この薬湯は電気風呂も兼ねており、よく体が温まる。体の湿疹がよくなったと喜ばれるお客さんの声もあった。水風呂と薬湯は「ライオンの口」から水がでるという昔懐かしい造りで、見ているだけでもなぜか飽きない。
ここでは、シャンプー、リンス、石鹸が各30円、タオルのレンタルはたったの10円とリーズナブル。入浴料390円(大人)と入浴セットの100円があれば、フラリと立ち寄ることができる。最近は手ぶらで訪れる若い人たちが増えてきたそうだ。
紅梅温泉が1年で最もにぎわうのは「天神祭」の日である。普段着で友人らと一緒に来店し、サッパリと汗を流した後、浴衣に着替えて祭りに出かけるのが主流なのだ。春には近辺の花見をかねて、湯につかりに来るお客さんも多い。
銭湯ののれんを見ながら若い人たちの浴衣姿を想像していると、名曲「神田川」が頭に流れた。「現代版『神田川』ってありますか?」と思わず店の人に尋ねてしまった。「最近は『洗い髪が芯まで冷えて』なんて歌詞のように、出口で待つカップルはいませんね。私も考えていたんですよ。なんで神田川の世界では髪が冷えるまで外で待っていたのかと。多分ね、昔の若い人は、店内の壁越しに大声で声をかけあうことが恥ずかしかったんですよ。最近では普通に大声で確認しあって、一緒に帰って行かれますよ。あと番台に座っている私達に『あの人いますか』と確認したりね。若い人は活気があって、店も明るくなるし微笑ましいよ」。今度のデートは現代版「神田川」を体験しにきてね、と勧められたが、苦笑するしかなかった。

