福徳温泉
軟水とヒマラヤ天然岩塩が融合
千日前線の西の端に南巽はある。地上に出て、巽神社を左手に見ながら進むと、全面ガラス窓でオープンな銭湯を見つけた。内側を覗くと、ロビースペースが広がる。開放的な印象だ。ここが昨年11月にリニューアルしたばかりの福徳温泉だ。
「42年前は田園風景が広がっていた。巽に新しい町を作る、その中心に銭湯を建てる、それが始まりだった」。2代目のご主人・後藤浩一さん(48)が教えてくれた。先代から引き継いだのが25年前だが、昨年改装に踏み切ったのは、設備に限界を感じたからだ。「休み明けに、L字型パイプの底の一部から湯が漏れ出ていることに気付いた。阪神・淡路大震災の影響がこんなところにもあった」。「改装するなら中途半端はあかん。徹底的に」と、東京をはじめ各地の銭湯を見て歩き、研究を重ねた。
同様に若い感性を重んじた。「リニューアルには息子の意見を尊重した。例えばロビーに並べた雑誌は二男が選んできたものばかり。よく読まれている。何が流行っているのか、何が求められているのかは、若い人のアンテナは敏感やから」。情報化社会の今日、銭湯にもパソコンは必要と、ロビーに据え置こうとした。地域のご老人の交流や家族の待ち合わせの場に使ってもらいたいと、ロビーにソファーを並べた。大窓から降り注ぐ日光が温かい。
もちろん浴室内も心地よさと美しさが同居するようなスペースが実現した。フィンランド式サウナと水風呂が2階にある。サウナもガラス張りで1階の浴槽スペースを見下ろせて楽しい。軟水の水風呂と交互に入浴すれば発汗も促されるという。階段を下りて、1階の露天スペースには座風呂が並ぶ。背中に沿うようにお湯がチョロチョロと流れ、腰と足の位置に湯がたまる。頭を休ませる枕位置には冷水が通るため、冷温同時に体感できて気を失いそうになるほど心地よい。
極めつけはヒマラヤ岩塩を使った湯だ。太古の高濃度ミネラルを含む岩塩を通すことで、湯が温泉水に負けないミネラル豊富な還元力をもったアルカリイオン泉に変わるとのこと。軟水との組み合わせで、「湯は天然温泉に負けない」とご主人。施設も湯も高いレベルにある福徳温泉は客が絶えない。帰り道、玄関に高さ1・5m程度の大きな恐竜の石像を見つけた。何でも「マスコットキャラクター」として彫ってもらったが、まだ名前はないとのこと。あらゆる意味で日本一の銭湯密度を誇る生野の底力を見たような気がした。

