灘温泉水道筋店
5時46分。開店中に被災、5年前に再出発
たこ焼10個200円の商店街「エルナード水道橋筋」の東端1丁目エリアに「灘温泉」の幟が揺れていた。建物は03年10月10日にリニューアルしたばかりとあって、新しく美しい。正面玄関前には「さすり観音」と呼ばれる仏さんが立つ。何でも、自分の体の痛いところを布でさすると癒されるとか。それ以上に癒されるのは、昭和の下町の雰囲気を今に残すこの場所柄のせいかもしれない。
阪神・淡路大震災が起きた95年1月17日の午前5時46分は早朝営業中だったという。水道筋エリアはまだ被害は小さかったというが、銭湯施設は営業できない状態に陥った。「それでもお風呂は生活に欠かせないもの。そして疲れを癒すもの。一刻も早い開店を目指した」とご主人の西本一夫さん(57)は振り返る。応急処置をほどこして1カ月で営業へ。街の人々の疲れた顔を見た銭湯経営者の意地だった。
兄弟温泉の灘温泉六甲道店が昭和7年に産声をあげてから丸6年後の昭和13年6月1日にこの地に創業した。震災後も兄弟の後を追うように温泉を掘削、オール・ガス化、満を侍して再出発した。 玄関は車椅子にも優しいスロープ仕様、番台をフロント化、1階は男湯、2階は女湯で2階へは専用エレベーターを設けた。最新の設備を誇り、浴室面積も六甲道店より大きい。それでも震災前の7割しか客足が戻っていないと言う。
湧く温泉は36度。少しぬるめて、源泉掛け流しとして使える。六甲山麓の井戸水と交互に入る温冷浴は体に優しい。帰り道、玄関で「さすり観音」をぬぐうご婦人に出会った。体だけではなく、心までほっこりさせられた。

