新朝日温泉
4人で守るオール・ガスの銭湯
人口増加著しい鶴見区放出に立ち並んだ高層マンションを見上げるように「新朝日温泉」はある。日に焼けた小麦色の健康的なご主人・立花敏夫さん(56)が笑顔で出迎えてくれた。「ソフトボール焼けやわ。地域の3チームに関係してるから。運動した後の風呂が気持ちええねん」。
銭湯名に「新」が付くが、2件目という訳ではない。「朝日温泉にしたかってんけど、同じ(銭湯組合)支部内にすでにその名前はあったから」。地域内で同一の名前を付けることは禁じられている。ではなぜ「朝日」か? 「初代、つまり父親の名前が朝男やから」。昭和41年5月に朝男さん(86)がこの地で銭湯を開いた。業界では珍しい広島は呉の出身で、戦時中は陸軍軍曹だった。今も背筋をピンと伸ばした姿が印象的で、もちろん現役で店に立つ。根っからの巨人ファンで川上さんを敬愛する実直な人だ。
「16年前、親父が70歳になったのを機に店を任された」と敏夫さん。銭湯を会社化、税理士事務所で働いていた知識を生かして経理を強化、帳簿を5種類に分けるなど銭湯経営を徹底管理した。「今思たら、これで間違いなかったと思うわ。銭湯3回改装したけど、ごっついお金かかるねんで」。現在は熱源ほかオール・ガス化、専用の真空ボイラーを使い、効率よく「いい湯」を保つ。「人工炭酸温泉やから、少なくとも湯上り後30分は体内にホカホカ感が残る。これが気持ちええねん」。得意げな笑顔がまぶしい。
ただ、改装を繰り返しても天井だけは当時のままだ。アンティーク調の梁やレトロなシャンデリアが、昭和の雰囲気を醸し出す。「毎年1度、すべての照明、電球を降ろして磨く。ことのほか丈夫でそのまま使っている」。頭上で黄金色に輝く照明は、何ともいいようのない温かさがある。
そんな照明と同じ温かい人柄の敏夫さんは、地域の障害者支援施設「日本ライトハウス」の社会復帰プログラムに一役買う。「特別なことはしてへんよ。一般のお客さんと一緒にお風呂に入ってもらう。コミュニケーションが大事やから」。入り口はスロープ化して段差をなくした。家族で楽しんで入浴してもらう「ふれあいの湯」や、お坊さんと風呂に入って説教してもらう会など、銭湯イベントを自ら楽しむ。
初代と2代目の両夫婦4人で番台を回す。それぞれにお客さんがついていて、当番スケジュールもお客さんが知っている。「ありがたいことです。そして両親が元気やからこそ、年中無休でやれる」。ずっと4人で続けていきたい。敏夫さんの願いだ。

