第二寿湯
「子供は国の宝」
東大阪は布施にやって来た。近鉄大阪線と奈良線が分岐するターミナルでもあり、駅前の商店街は人通りも多く賑やかだ。北側の住宅街を抜けると、突然、水色と白色のモザイク模様の建物が見つかる。立てられた看板には「子供は国の宝」とある。そして「子供しかるな来た道じゃ 年寄り嫌うな行く道じゃ」とあり、最後に「だけど子供には注意せなアカン 俺を含めてかわいいジジ・ババになろうよ」と呼び掛ける。何の店かと気になったが、こここそが目指す「第二寿湯」だった。
オレンジ色の毛筆で書かれたメッセージの筆者「俺」は文脈から「ジジ」なのだろう。おまけに「かわいいジジ」ときた。興味津々と一歩踏み出すと、玄関の自動ドアがスライドした。そして、ここにもメッセージだ。「二両以外の貴重品を持っておられるお方の入浴はお断り致します」と警告された。
「さて問題。二両って何でしょうか?」突然現れたご主人・澤井稔さん(69)が問答を仕掛けてきた「江戸時代の貨幣のことですか?」。
「ちゃうちゃう!(=関西弁で違う違うの意) 男の大事なもののことや、2つあるから二両って呼ぶんや」。
あっけに取られた。稔さんは上半身裸だ。「すまんなあ。この時間帯(午後2時)は普通、店におらへんねん」。
看板の文言は稔さんが信州を旅したときに神社でみつけた文句だという。「ええ言葉やろ。これは紹介しといて」。
銭湯内の番台に目を移すと、積み上げられた小銭の脇に「申し訳ありませんが、おつりは、ここからおとり下さい」と張り紙がある。無人番台だ。客との間の信頼関係に裏付けられた業だろうが、ここまで見るものすべてが斬新だ。心臓の鼓動が高まる。
「第二寿湯」は昭和10年に開店した。「第二」と付くがここ1店舗しかない。「第一より第二の方がはやっているみたいで、ええやろ」。まったくもってユニークだ。ドキドキする。
脱衣所に入ると、緑が目に付く。よく見ると浴槽の脇にもズラリと並べられた植物。「あれはポトスや。湿気に強いから、20年くらい前から育ててんねん。最近知ってんけどマイナスイオン発するらしいわ」。結果オーライと言わんばかりに胸を張った。ほかにもサウナのヒーターが特殊な遠赤外線ヒーターだったり、備長炭を壁にぎっしり下げて、遠赤外線を増加、促進させているという。この備長炭を活用したサウナ構造で00年5月に実用新案を取得した。
水にもこだわった。電気を通した「ナノ・ウオーター」だと言う。自ら研究して品質を高める。その水を使ったコーヒーも絶品だ。自ら研究家と呼ぶほどのコーヒー通で、風呂上りのいっぱいを勧める。まさに奇抜そして工夫の人だ。
そんな稔さんが最後に銭湯について熱く語った。「60歳になったとき、おれ家族に誓ってん。銭湯は1代でやめる。そやから、好きにやらせてくれ。これからが第2の青春やって」。このドキドキは本物だ。

