神田温泉
幼稚園児にも開放、地域を愛し、愛され…
「親子3代で銭湯行ったことないっていう家族も増えている…」。神田温泉のご主人・後島明彦さん(49)は銭湯の現状を憂う。一方で「若者にアピールしてこなかった業界に奢りがあったのかもしれない」とも。それでも地域と特に若い世代への啓蒙を続けている。「うち1軒でやっても自己満足の範囲かもしれない。それでも子供たちに伝えていきたい」。
毎年7月、幼稚園のお泊まり保育の日に銭湯を貸し切りにする。お礼の意味を込めて、園児から多くの絵が寄せられる。クレパスで描かれた絵はどれも明るい。子供たちのほとんどは銭湯初体験だが、楽しい思い出となる。「この子供たちがまた、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に来てくれたらうれしい。うちだけでやっても微力かもしれないが」。子供も誘って敬老の日に高齢者の背中を流す催しも行う。次世代へ銭湯の楽しさを伝道する。
温泉は昭和8年からこの地にあるが、途中で後藤さんの父親が以前の経営者から買い受けた。「名前だけは変えないで」という約束を守り、看板を引き継いだ。「親父の世代は頑固な経営者が多かった。でもうちの親父は任せてくれた」。平成3年11月に店舗を建て直し、いちはやく長時間営業、無休を取り入れた。「それでも下町の温泉やから。地域のお客さんにターゲット絞って、毎日利用してもらいたい」。最後に理想の銭湯像を聞いた。「やっぱり仲間とだべってもらえる場所かな」。将来、絵を描いた子供たちが「そう言えば昔、この銭湯へ幼稚園で来たね」とだべってくれれば本望。絵に描かれた笑顔を見直すと、そんな日はきっと来ると感じた。

