三島温泉
変わらない昭和の雰囲気
何の演出もなく昭和の雰囲気がそのまま残る銭湯を東大阪に見つけた。JR片町線の鴻池新田駅から徒歩5分。銭湯までの道のりで新築マンションをいくつも見かけた。元々、京橋直通と便利な立地だったが、JR東西線の開通で人口も増えた。
「でもなあ、銭湯来る人は減ったで」。そう話すのは3代目でご主人の木村学さん(46)だ。銭湯の前の空き地には以前、水道のバルブ関係の工場があった。「仕事の終わる夕方には、毎日ぎょうさん来てくれた」。その会社も移転、お客さんも減って、跡にはやはりマンションが建つという。「人口増えること自体は悪くないねん。その人たちにいかに来てもらうかやな」。
ひげを蓄えた真剣な顔で銭湯のあり方を考える日々だ。「銭湯=憩いの場」としての位置づけは変わらないと考えている。「銭湯が混んでたひと昔前より、のんびりリラックスできる。来てくれる人は減っても、そのお客さんにゆっくりしてもらいたいやん」。そして、「団塊の世代の人に昔を懐かしんで来て欲しい」。リラックスを前面に出せば、退職世代が銭湯回帰する可能性はあり、筋が通っている。
昭和41年5月に初代・正明さんが開場。銭湯名の「三島」とは以前にあった地域の名前だ。「周りは田んぼばっかりやったで」。その後を引き継いだ2代目で父親の哲さんが昨年死去、学さんが3代目となった。「地域の拠点になりたいなあ」。
そんな三島温泉は、伊予柑やゆずなど「変わり風呂」はあるが、新規に設備を増やすかどうかは検討中という。「単純に設備の問題ではなく、ゆっくりしてもらえる場を作れるかどうかやから」。確かに、最近では珍しく脱衣所に番台が残る。「番台は必要やで。外にあったら、例えばお年寄りが浴室で倒れても気付かないかもしれない。でもうちは男は番台に座らへん。女の人が嫌がっては意味がないので、伝統的に女性だけが番台に座ってるねん」。ここにも筋が一本通っている。
昭和の雰囲気が漂うのは、周囲を取り囲む新築マンションと対照的な外観のせいだけではないようだ。雰囲気を大切にする主人が頑張る限りいい意味で何も変わらない気がした。

