豊温泉
八尾北のポイントマーカー
八尾にやって来た。近鉄八尾駅を北東方向に進む。8月の八尾北商店街はうだるような暑さだ。体中から汗が噴き出す。用和小学校の脇で豊温泉の存在感は際立っていた。「銭湯は地域とともにあるから。地元のポイントマーカー(目印)にならなあかんて。この辺に住んでいて豊温泉の存在、知らへん人おったら悲しいやん」。番台を守る中島彰男さん(41)は地域の拠点としての銭湯を説く。
彰男さんは小学校5年のときに先代の父親・徹さんを亡くした。若くして店を継ぐ決意を固め、一発奮起して銭湯を改装。そして平成元年に思い切って建て替えた。銭湯が減っていく中で、父母の夢だった立派な町の温泉を実現させた。こだわったのは「地域の拠点」だ。お客さんの老齢化や核家族化が進む中で銭湯の重要性を誰よりも感じて来た。様々なアイデアをひねり出し、お客さんの喜ぶイベントを実施する。「損とか得とか。何でも利便性を求めすぎた結果、変な世の中になった。銭湯は来てもらてなんぼやから。サービスして喜んでもらえたらええやん」。この日も八尾銭湯組合で共同開催の「ラムネ半額セール」の貼り紙があった。「ラムネ40円、ミカン水35円」。
当然、お湯にもこだわる。肌の健康によいと言われる「軟水」を使用。入浴されたお客さんには家庭用に無料提供もしている。
ペットボトルなどを持参したお客さんがロビーの軟水発生器コーナーに列を作る。ほかにも漢方風呂には生チップを使用、露天の薬湯もイチョウ、ハイビスカス、ミントなど乾燥剤を使う。
最後に銭湯名の由来を聞いた。
「人の名前とちゃうで。心豊にということかな」。ご主人の笑顔が気持ちよかった。

