クア武庫川
赤茶色の源泉掛け流し
午後3時の開店を前に地元のおじいちゃん、おばあちゃんを中心に14人が並んだ。朝の耳鼻科にも似た風景だ。ここは憩いの場、社交の場だ。
阪神武庫川駅から阪神高速の高架をくぐって南へ進むと川沿いに桜並木が伸びる。武庫川女子大や兵庫医大のキャンパスに挟まれたこの地は、春には満開の花の下を新入生が希望に目を輝かせて歩む。そんな幸せな風景を昭和42年以来39年もの間そっと見守ってきた。
「それまでは田んぼに囲まれた長閑な場所だったということです」。2代目敬一さん(39)が生まれた年に銭湯もできた。その後阪神間の人口増加を受け、武庫川団地も含めた一帯は住宅街に変貌を遂げた。敬一さんも同じ時間を過ごした。
「転機は14年前」。平成5年、今でも番台を守る先代・宏さんが温泉を掘る決意を決めた。西宮市内で初の挑戦。ボーリングで「湧く可能性はあると言われていたけど不安もあった」。1500m地点で出た。赤茶色だった。「うれしかった」。地下100mまで噴出するが、地上まではポンプで汲み出した。
温泉は露天にある。2つ浴槽があり、向かって右側が薄茶色の源泉掛け流し、左側が塩素でろ過循環させたお湯で塩辛い。掛け流しの方は「アトピーの症状がましになるなど、肌の調子がよくなる」。。お湯がきつすぎる人にはろ過済みがおすすめだ。浴槽には温泉成分が付いていて、西宮の都心にいることを忘れてしまう。「有馬の温泉と似ていると喜んでもらいます」。満足感十分のお湯で、体の芯から温まる。
それでもスーパー銭湯などの登場で客足が減りつつある。16台分無料駐車場があるので、「遠くから入りに来ていただいても大丈夫です」。控えめにアピールする2代目の笑顔は優しい。1、2、サンガリア!

