第一敷島湯
変わらない=美しい
「シンプル イズ ビューティフル」な銭湯だ。主湯は円い浴槽とジェットの2つだけ。サウナもないし、電気風呂もない。それでも落ち着くのは、経営する黒田一家のアットホームな雰囲気からだろうか。
兵庫尼崎の下町・杭瀬には銭湯が多い。その中でも第一敷島湯は古参だ。玄関は曲線が印象的な唐破風の屋根だが、このシンボルも大正12年の創業以来変わらない。現在、番台を守る黒田功子さん(73)がこの地に引っ越してきたのが昭和32年。それ以前の経営者から買い受けた。「当時が懐かしいなあ。でも遠方に引っ越したお客さんが久しぶりに入りに来てくれても『ここ何にも変わらへんなあ』と言うてくれる」。
現在は国道2号線を一本北側に入った細い路地に面してる。「国道がなかった時代は、こちらが街道になっていて、本道だった。前は果物屋さんで人通りが多かった」。 通りが変われど、銭湯だけはそのまま残った。時間の流れの中でピタリと止まった空間のように感じるのはそのせいかもしれない。
風呂場の仕切り壁のモザイクタイルが印象的だ。松と滝のシンプルな構成だが、創業当時からのものとは思えない、くすみのない美しいものだ。壁画は脱衣所にもあった。体重計の後ろに「鯉の滝登り」。こちらは男女の脱衣所でデザインが異なる。
「銭湯逆風」と呼ばれる現在、このスタイルのまま大丈夫なのか? 「ずっと通ってくれるお客さんがいたり、廃材をもらって来て燃料にしたり、人に支えられてやってます」。ご主人の達也さん(42)の感謝の言葉と、ひざに乗せた二男千翔(ゆきと=2)くんへ注がれた優しい眼差しが印象的だった。

