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2009年10月05日

16歳少女に売春させたのは“心の弱さ”なのかな…

 9月29日、京都地裁で見過ごせない民事の判決がありましたね。逮捕されて取り調べで否認した男性に対し、検察官2人が机を蹴って威圧したり、「覚えてなくても、やったかもしれないって言ったらまるく終わる」などと自白を迫るような発言をしたとして、男性が損害賠償を求めた訴訟で、国に66万円の支払いを命じたという判決。

 裁判所が取り調べの違法性を認めてくれるとは! しかも、警察の取り調べで威圧されたんじゃなく、検察での取り調べってのもミソですね。警察の取り調べで暴行や暴言があったというのは、刑事裁判を傍聴していると(事実かどうかは分からないが)、否認している被告人の口からよく聞く話ですから。
 こういう判決が出ても、取り調べの全面可視化は実現しないもんなのかねぇ。

 さて今回は、9月28日に行われた中島史人被告人(逮捕当時31)の裁判の話。罪名は、児童福祉法違反。

 家出中の女子高生に男性客とわいせつな行為をさせたとして、児童福祉法違反の疑いで元ホストでパチンコ店店員が逮捕されたという事件ですね。

 報道によると、中島は今年の2月11日ごろから13日ごろの間、都内の高校に通う家出中の女子生徒(16)を、千葉県の理学療法士の男性(33)とわいせつな行為をさせた。女子生徒は「1回1万5000円くらいで、1日に2人くらいを相手した。1月末ごろから20日間くらいやって、中島に計約60万円渡した」と話しているという。

 女子生徒は昨年12月ごろから家出しており、1月にインターネット上の掲示板を通じて、当時ホストクラブで働いていた中島と知り合った。中島は女子生徒に「ホストの稼ぎが少なく、風俗とか援交で働いてよ」と依頼したなどと報じられた。

 報道にある女子生徒の話がホントであれば援交で稼いだ金をすべて被告人に渡していたわけで、そんなに好きだったのか、弱みを握られていたのか…。

 起訴されたのは、前記の記事の通り。
 検察官の冒頭陳述によると、被告人は職を転々とし、犯行前にはホスト、犯行時はパチンコ店で働いていたという。
 今年1月、インターネットの掲示板でホストクラブの客を探していたところ、本件被害児童(16)と知り合う。そして、被告人は別れた妻への養育費等のお金を必要としていたので「交際には金がかかる」と伝えると、被害児童は「頑張る」と返答。それを聞いた被告人は(援交で稼ぐんだな)と考えたらしい。

 そして、犯行日。被害児童は、テレクラで知り合った男と被告人に渡す金を稼ぐため性交した、というのが事件の詳細です。
 調べに対し被害児童は「被告人のことが大好きで結婚したいと思っていた。付き合ってすぐに“お金がない”と言っていたので“私が稼ぐから大丈夫。私がNO・1ホストにするよ”と言っていた」と述べているとのこと。

 被告人の方は取り調べで「被害児童は、すっかり私を気に入っていた。“自分で稼ぐ”と言われたときは“何を言ってるの?”と思ったが、いい金づるだと思った。(援交相手の)男と会うときはコンドームは着けるように、お金は先にもらうようにと教えていた。お金は1万~3万円、ほぼ毎日もらっていた。被害児童に対し、直接“援交しろ”とは言ってないが、それは自分が言わなければ彼女が勝手にやったことと言い逃れできると思っていたから」と述べているらしい。

 結婚したいほど好きだった相手は、いい金づると思っていた、という悲しい思い違いだった。とにかく、何か弱みを握られたわけじゃなく、好きで仕方なかったようです。
 法廷には、被告人の母親が情状証人として出廷し、今後は実家で一緒に暮らして、マジメに生活させると約束していました。
 そして、被告人質問。まずは弁護人から。

 弁護人 「あなたには売春防止法違反の罰金前科がありますが、どのような事件ですか?」
 被告人 「風俗店の手伝いをしていました」
 弁護人 「なぜ、そのようなことをしてたんですか?」
 被告人 「勤めていた会社の経営者がそういうことを始めるので、手伝いました」
 弁護人 「違法なのになぜ、手伝ったんですか?」
 被告人 「経営者について行こう決めてたんで」
 弁護人 「そして、福岡から上京したのは?」
 被告人 「その経営者が上京するというので、ついて行こうと思いました」
 弁護人 「上京して、ホストをしたのはなぜですか?」
 被告人 「経営者がホストをやるというので、やることになりました」

 なんという忠誠心。まるで、被告人を慕って援助交際までしていた被害児童のようです。

 弁護人 「借金はいくらくらいあるんですか?」
 被告人 「200(万円)くらい…」
 弁護人 「向こうが未成年と分かっていて、援助交際を繰り返しているのも分かってたんですよね?」
 被告人 「はい。生活に困ってて、一緒にいればメシが食えるんで…」
 弁護人 「児童に対して、どう思ってますか?」
 被告人 「すごく申し訳ない気持ちです」

 反省の弁を述べてはいるんだけど、実は1円たりとも被害弁償をしていないんです。そのことについての質問です。

 弁護人 「弁償はどうするつもりですか?」
 被告人 「今は働いてないので、貯めてから返そうと思います」
 弁護人 「でも、保釈されてから1カ月経ってるのに仕事してませんね? なぜでしょう?」
 被告人 「探したんですけど、これといったものがなくて…」

 こういうときは仕事を選んでる場合じゃないと思うんだけど、不景気ですからねぇ…。とにかく、今後しっかりと弁済することを約束して質問終了。

 次は、検察官から。

 検察官 「さきほど“一緒にいればメシが食えた”と言ってましたけど、自分の分くらい稼げばいい話でしょ」
 被告人 「週に1度は福岡に帰っていて、お金が足りなかったので…」
 検察官 「女の子を食いものにしたのは、経営者と一緒にいる方を選んだから、と」
 被告人 「そうです…」

 被告人にとって、この経営者はどれだけ大きな存在だったんでしょうかね。性別も人柄も全く明かされなかったんで謎。
 最後は、裁判官からの質問です。

 裁判官 「あなたがした行為、何が悪いのか説明できます?」
 被告人 「彼女の気持ちを自分の中で利用したのが、一番悪いと思います」
 裁判官 「前刑は?」
 被告人 「人として道徳的によくないと思います」

 形は違えど、似たような前刑も引き合いにして、説教開始です。

 裁判官 「生活のためにやったと言ってますけど、生活に困っても普通の人はこんなことしませんよ。あなたの中で女性を尊重する気持ちがないんじゃない? 女性を食いものにしてもいいって思ってます?」
 被告人 「いや、思ってません」
 裁判官 「でも、実際は食いものにしてたじゃない。なぜですか?」
 被告人 「自分の…心の弱さだと思います」

 犯行の原因を聞かれたときの答えで一番多い“心の弱さ”です。全く意味が分かんないんだよなぁ。心の強い、弱いって何ですかね?

 非常に漠然とした答えだと思うんだけど、裁判官も聞き飽きた言葉だからか、深く追求せずに質問終了。
 この後、検察官が懲役1年6月と罰金50万円を求刑して、閉廷でした。
 今後、再犯しないためにも、被告人には、心を強くしてもらわないとダメですね。
 ま、未成年に売春させて、その売り上げを全部もらうのを罪悪感なく続けられるって、ある意味、心が強いとも言えるけど。

注目の裁判

11月16日(月)被告人・原口悦郎:著作権法違反(初公判)
原口悦郎:著作権法違反(初公判) <映画などを無断で配布した事件> 09年9月、元東京消防庁滝野川消防署員、原口悦郎(当時58)は、08年11月から09年2月にかけ、自宅のパソコンでウィニーを使い映画4タイトルを不特定多数の利用者がダウンロードできるようにしたとして逮捕された。

11月16日(月)被告人・山田利生:強盗(判決)
<元タクシー運転手によるタクシー強盗> 09年9月、元タクシー運転手の山田利生(当時66)は、東京都江東区の路上で、乗っていたタクシーの運転手(当時61)に模造刀を突き付け「金を出せ」と脅し、運賃2150円の支払いを逃れたとして逮捕された。

11月17日(火)被告人・桜井勝己:脅迫(初公判)
<松本人志さんに対する殺害予告事件> 09年9月、埼玉県春日部市の無職桜井勝己(当時35)は、インターネット上の掲示板に「ダウンタウン」の松本人志に対する殺害予告を書き込んだとして逮捕された。

11月18日(水)被告人・秋山直紀:所得税法違反
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月18日(水)被告人・有馬龍之介:恐喝未遂(初公判)
<小6女児から金を脅しとろうとした事件> 09年9月、東京都台東区の文教大学2年、有馬龍之介(当時20)は、8月に書店の書棚に1000円札を置き、それを拾った女児に因縁をつけて現金を脅し取ろうとしたとして逮捕された。

11月18、19、20日(水、木、金)被告人・潮忍:昏睡(こんすい)強盗と準強姦(ごうかん)致傷(初公判)
<女子中学生に睡眠薬を飲ませて暴行した事件> 09年6月、埼玉県和光市のタクシー運転手潮忍(当時36)は、中学1年の女子生徒に睡眠薬を飲ませて暴行し、財布を奪ったとして逮捕された。

11月19日(木)被告人・阪中彰夫:旧証券取引法違反(偽計)
<ペイントハウスの架空増資事件> 09年6月、投資コンサルタント会社ソブリンアセットマネジメントジャパン社長・阪中彰夫(当時58)は、住宅リフォーム会社「ペイントハウス」の株価のつり上げを狙って架空増資を行い、同株を売却して3億円の利益を得たとして逮捕された。

11月20日(金)被告人・中田静子 ほか1名:昏睡強盗、窃盗(判決)
<スナック客に対する昏睡強盗> 09年3月、バー経営の中田静子(当時62)はスナック経営の細江敏光(当時39)と共謀、スナックで男性客に強い酒を飲ませて昏睡状態にさせ、キャッシュカードを奪って現金自動預払機から金を引き出したとして逮捕された。


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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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