2009年7月27日
殺意の有無の質問で被告人が混乱?
7月23日、長野地検がある事件の起訴を公表した際、裁判員裁判対象事件とした上で、「住居侵入、強盗■■」と2文字を黒塗りにして隠したらしい。
さらに、被害者名も犯行日時も犯行場所も黒塗りになってるらしい。
「強盗■■」に当てはまるのは、強盗未遂・強盗予備・強盗致傷・強盗致死・強盗傷害・強盗殺人、あとは強盗強姦になるんでしょうか。刑法のことはよく知らないんで他にあるかもしれないけど。でも、裁判員裁判の対象となると数は限られてくるわけで…。黒塗りにしなくても。
てっきり、裁判に興味を持ってもらうため、傍聴に来てもらうため、検察が広報の一環としてクイズ方式の起訴をしたのかと思ったら「関係者のプライバシーと名誉」が理由らしい。
裁判員裁判って、わかりやすくて、開かれた司法を掲げてたはずなんだけどなぁ。公判前整理手続きも非公開だし、どうなってんだ?もう、いっそのこと、裁判は全て非公開にすればいいんじゃないか?
今回は、7月24日に行われた川村修被告人(逮捕当時55)の裁判の話。罪名は、殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反。東京のビジネスホテルで、宿泊者の無職の男性に切りつけたとして、殺人未遂の疑いでホテルに宿泊していた配管工が逮捕されたという事件ですね。報道によると4月5日午後8時40分頃、東京都台東区のホテル室内で、果物ナイフで男性に切りつけたという。事件の約4時間前、被害者の男性が「物音がうるさい」と、ナイフやはさみを持ち出し、川村に「お前か」などと言い寄るトラブルがあった。その後、川村はコンビニでナイフを買って男性の部屋に押し入った。2人とも酒を飲んでいたと伝えられました。
起訴が5月21日以降であれば、裁判員裁判対象になる事件でしたね。制度施行前の起訴なので、従来通りの裁判です。
被告人は殺意を持って、刃渡り9・5センチの果物ナイフで被害男性の胸と腹を切りつけ、加療3週間のケガを負わせたという内容。
罪状認否で被告人は「殺意はなかったです」と一部否認し、弁護人は「酩酊状態のため心身耗弱の状態にあった。そして、自首が成立する」と主張です。検察官の冒頭陳述によると、被告人と被害者は同じビジネスホテルで生活していて、部屋が隣(か、2つ隣)だったが、顔を合わせる程度の仲だったという。
そして、犯行当日。被害者男性は仕事が休みだったので、朝から居酒屋で飲酒し、場外馬券場へ行った後、午前11時30分頃帰宅。その後の記憶は酔っていたので覚えてないとのこと。
一方、被告人。仕事が休みだったので、朝から居酒屋で飲酒し、場外馬券場へ行った後、午後4時ころ帰宅。午後4時30分ころ、酔っ払った被害男性が果物ナイフを持って被告人の部屋を訪れ「音がうるさい!」と文句を言ったらしい。騒ぎを聞きつけた住人や管理人が、果物ナイフを取り上げ、その場を収めた、と。
この騒ぎの後、被告人は居酒屋へ行き、飲食。その後、コンビニエンスストアで果物ナイフを購入し、帰宅。被告人は被害男性の部屋へ行き「自分が先にナイフを突きつけてきたんだからな!」と言って、果物ナイフを上から下に振り下ろし、被害男性の胸と腹を切りつけた。被告人は、被害男性の腸が体外に出ている事に驚き、管理人へ犯行を告白。救急車を呼んでもらうよう頼み、駆けつけた警察官に逮捕された、というのが事件の詳細です。
弁護人が「酩酊のため…」と主張してるわりには、犯行時のことを細かく記憶しているような気も。あくまで検察側の主張なんで、取調べで誘導したのかもしれないけど。
法廷には、被告人の雇い主が情状証人として出廷し「おとなしくて真面目な性格なんですが…」「本人が希望すれば、今後も仕事を手伝って欲しい」と、今後も雇っていくことを約束していました。 そして、被告人質問。まずは、弁護人から。
弁護人 「犯行当日、朝は何をしてました?」
被告人 「7時に起きて、近くの居酒屋でチューハイを3杯飲みました」
弁護人 「その後は?」
被告人 「8時ごろ、部屋に戻ってきて、9時に浅草の場外(馬券場)行きました」
弁護人 「そこでお酒は?」
被告人 「缶ビールを2本位飲んだと思います」
休日って事で、朝から酒を飲んでたようです。
弁護人 「部屋に帰ってきたのは?」
被告人 「午後4時過ぎですね」
弁護人 「そして、どうなりました?」
被告人 「被害者の男性が来て“うるさい”と」
弁護人 「うるさくしてたんですか?」
被告人 「してませんでした」
弁護人 「被害者の方は、果物ナイフを持ってたわけですが、どうされました?」
被告人 「首の辺りに突きつけられました」
元々仲が悪かったわけでもなく、被告人がうるさかったわけでもないのに、何があったんでしょうか。被害者は酔っ払って記憶がないので、原因は不明なんだけどね。
弁護人 「このトラブルの後の行動は?」
被告人 「居酒屋行って、びんビール2本程…」
弁護人 「その店を出た後は?」
被告人 「別の居酒屋でビールを2~3本…」
弁護人 「その後は?」
被告人 「よく覚えてないですけど、コンビニ行きまして、果物ナイフ買いました」
弁護人 「何故、果物ナイフを買ったんですか?」
被告人 「自分も果物ナイフで脅してやろうと考えたんだと思います」
目には目を、歯には歯を、果物ナイフには果物ナイフを…と考えたんでしょうか。同じ恐怖感を味あわせてやろうという狙いがあったようです。
弁護人 「果物ナイフを買った後は?」
被告人 「(被害者の)部屋の前でノックしまして、開けてくれたんだと思います。それで中に入れてくれて、切りつけたと思います。ハッキリ覚えてないです」
弁護人 「細かい事は覚えてない、と?」
被告人 「気付いたら(被害者が)仰向けになってました」
弁護人 「ケガしてる事に気付いたのはいつですか?」
被告人 「腹のあたりから腸が出てたんですよね。それで“やめてくれ、やめてくれ”って言うんで、我にかえって…。それで驚いて管理人に救急車を呼んでもらいました」
罪状認否の通り、事件の詳細については覚えていないようです。
弁護人 「警察と検察の調書では“殺すつもりだった”と書いてありますけど、殺すつもりはあったんですか?」
被告人 「酒で覚えてない部分はあったんですけど、そういう風に言われるとそうかもしれない、と…」
弁護人 「ん? そういう風って?」
被告人 「腸が出る程の傷を付けたなら、殺意があっただろうと言われて…」
殺意の有無って刑法上の認定の仕方というか評価は分からないけど、基本的には本人しか分からない気もするんだけど、その本人もあいまい。結果としては、長さ45センチもの傷を付けているので、ホントに脅すつもりだったのかと、弁護人も確認している訳です。
弁護人 「私と初めて面会した時、殺意に関して、何て言ってましたっけ?」
被告人 「あったと言いました」
弁護人 「なかったって言わなかった?」
被告人 「なかったと言いました」
弁護人 「“ホントの事を言ったほうがいい”、“正直に言ってください”と私が質問したら、“殺意はあった”と答えましたよね? ホントはどうなんですか?」
被告人 「なかったです」
質問のやり取りが悪いのか、被告人、混乱してるような…。とにかく、殺意はないと主張して質問終了。
次は、検察官からの質問です。
検察官 「今の質問のことを聞きますけど、弁護人に“正直に話して…”と言われて、殺意があったと答えたんですよね。ホントは、殺意があったってことじゃないの?」
被告人 「なかったです」
検察官 「脅すつもりだった、と。何か脅すような言葉は言いました?」
被告人 「言わなかったです」
検察官 「なぜ、何も言わなかったんですか?」
被告人 「…その時の状況覚えてないです…」
検察官 「脅すつもりなら、ケガさせないようにするんじゃないですか?」
被告人 「全然覚えてないんです」
検察官 「被害者から向かってきたんですか?」
被告人 「覚えてないです」
殺意に関しても、犯行の記憶に関しても“ない”の一点張り。しびれを切らした検察官の質問が、
検察官 「そんなに犯行のことを覚えてないのに、なぜ、殺意がないと言えるんですか?」
被告人 「殺すつもりがなかったからです」
元々恨みがあった訳じゃないし、ナイフを突きつけられたくらいで殺してやろうと考えるのも不自然だしね。でも、瞬間的に殺意を抱いて切りつけたんだけど、その時のことを全く覚えていない可能性もあるし…。
この後、検察官の求刑。被害者の胸と腹の傷が長くて深く、治療をしなければ30分で死亡していた可能性もある程の傷だったことを挙げて、懲役7年と果物ナイフ没収を求刑しました。
今後、似たような事件を裁判員が裁くんだよなぁ。これは難しいねぇ。殺意があったことも、なかったこともハッキリと納得のいく立証はされてなかったし。
被告人も被害者も酒に酔って覚えてないのを、第3者が判断するのは大変だ。
注目の裁判
11月24日(火)被告人・秋山直紀:所得税法違反
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。
11月24日(火)被告人・芳賀吉孝、小野克巳、五郎川弘之、他2人:わいせつ図画販売・頒布
<わいせつDVD販売を手助けした事件> 08年3月、アダルトDVD業界最大手の自主審査機関「日本ビデオ倫理協会」が、作品の審査基準を甘くして、わいせつDVDの販売を手助けしたとして、審査部統括部長小野克巳(当時51)らを逮捕した。
11月24日(火)被告人・板垣宏 十亀弘史 須賀武敏:爆発物取締罰則違反
<迎賓館などにロケット弾が発射された事件> 1986年に迎賓館などにロケット弾が発射したとして、中核派の須賀武敏、十亀弘史、板垣宏が逮捕された。1審では証拠不十分で全員が無罪とされたが、2審では無罪判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。上告審も2審判決を支持し、1審に差し戻された。
11月24日(火)被告人・松田真知:銃刀法違反など(控訴審初公判)
<大量の拳銃や実弾を密輸した事件> 06年1月、指定暴力団稲川会系松田組組長、松田真知は幹部の後藤広一らと共謀して拳銃11丁、実弾220発などを密輸したとして逮捕された。1審で無期懲役、罰金400万円(求刑無期懲役、罰金500万円)を言い渡された。
11月25日(水)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。
11月25日(水)被告人・竹田慶介:公然わいせつ(初公判)
<路上で下半身を露出した事件> 09年10月、東京都豊島区の学習塾経営、竹田慶介(当時27)は同年9月に同区内の路上でズボンを降ろして下半身を露出し男子中学生3人に見せたとして逮捕された。
11月25日(水)被告人・小川俊之:爆発物取締罰則違反(控訴審判決)
<皇居に向かって火薬を詰めた消火器を発射した事件> 08年9月、神奈川県相模原市の元陸上自衛隊員の小川俊之(当時34)が、火薬を詰めた消火器を皇居に向けて発射したとして、逮捕された。
11月26日(木)被告人・原田久:威力業務妨害(初公判)
<サラ金の業務を妨害した事件> 09年10月、愛知県岡崎市の無職、原田久(当時38)は、消費者金融「レイク」のコールセンターに約500回電話をかけ、女性オペレーターにひわいな言葉をかけたとして逮捕された。女性の体の一部を表す言葉などをかけて業務を妨害したという。
11月26日(木)被告人・小川美津子、他2人:昏睡(こんすい)強盗と保護責任者遺棄(初公判)
<スナック経営者による昏睡強盗事件> 09年2月、東京都渋谷区のスナック経営、小川美津子(当時73)ら男女4人は、スナックで男性客に酒を飲ませて泥酔させ、キャッシュカードを盗んで路上に放置したなどとして逮捕された。
11月26日(木)被告人・松原弘樹:強盗(初公判)
<自衛隊員による強盗事件> 09年9月、陸上自衛隊第1空挺団(千葉県船橋市)の陸士長松原弘樹(当時21)らは、東京・六本木のビル敷地内で飲食店従業員男性(当時22)を倒し、顔を殴るなどして現金約13万円入りの財布を奪ったとして逮捕された。
11月26日(木)被告人・植本勝也、井福一郎、他1人:児童買春・ポルノ処罰法違反(初公判)
<暴力団員らによる児童ポルノ販売事件> 09年9月、大阪府守口市の指定暴力団山口組系暴力団組長井福一郎(当時61)と大阪市西淀川区の無職植本勝也(当時43)は、インターネットで児童ポルノのDVDを販売したとして逮捕された。
11月27日(金)被告人・波和二:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。
11月27日(金)被告人・高相祐一:覚せい剤取締法違反(所持、使用)(判決)
<酒井法子の夫の覚せい剤事件> 09年8月、自称プロサーファーで、女優酒井法子の夫、高相祐一(当時41)は、東京都渋谷区の路上で覚せい剤を所持していたとして逮捕された。
11月27日(金)被告人・和田達夫、嘉藤悦男:背任(初公判)
<理化学研究所をめぐる汚職事件> 09年9月、独立行政法人「理化学研究所」(理研、埼玉県和光市)の主任研究員、和田達夫(当時53)は、取引先の理化学器具開発販売会社「秋葉産業」の社長、嘉藤悦男(当時76)から旅行や飲食費などの代金付け回しを受け、その穴埋めに架空発注を行ったとして逮捕された。
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