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2009年7月13日

守ったのは強盗のルール、レジ袋かぶって「金出せ」

 先週のネットニュースで“仙台高検管内の各地検が、裁判員裁判対象事件の公判日程などをホームページで紹介し始めた”と伝えてあったんです。

 検察庁がそんな情報を公開するなんて、PR活動に積極的ですね。どの程度の内容をHPに載せてるのかと思って見てみたら、ビックリ! 青森地検・山形地検・福島地検が日時と罪名を載せてるんだけど、今年の5月21日以前に起訴された裁判員対象事件の公判予定の情報まで載ってるんです。裁判員は参加しないけど、審理の流れは似てるので傍聴してくださいってアピールでしょうか。

 さらに驚いたのが、福島地検は事件が起きた場所と簡単な内容まで載ってるんです。かなり革命的な情報公開ですね。
 東北に住んでいて、未だ裁判員裁判対象事件を傍聴したことのない人は使えるサイトですね。

 さて、今回は、7月9日に行われた、小林一幸被告人(逮捕当時38)の裁判傍聴記。罪名は、強盗致傷、銃砲刀剣類所持等取締法違反。

 ビデオ販売店に押し入って現金6万円を奪ったという事件ですね。報道によると3月1日午前3時40分ごろ、東京都北区のビデオ販売店に押し入ったというもので、レジカウンター内にいた男性店員(当時36)に包丁を突きつけて「金を出せ」と脅し、レジ内の現金6万円を奪ったというもの。小林は、レジ袋に2つの穴を開け、目出し帽のように頭からかぶっていたが、店員ともみ合った際、破れて脱げたという。さらに盗んだ現金、包丁を落として逃走。警視庁滝野川署員が現場近くで、犯人と服装が似た小林を見つけて事情を聴いたところ、関与を認めたという。

 傍聴の経験上、マスクを被ったり、サングラスをかけたりして変装をする強盗は多いのはわかるけど、レジ袋で顔を隠すとは聞いたことないですね。ちょっとズレただけで視界がさえぎられるような…。

 起訴されたのは、今年の3月1日午前3時41分、北区のビデオ販売店で、被告人は男性店員に刃渡り20・5センチの包丁を突きつけ「金を出せ」と脅して、6万円を強取。さらに、追いかけてきた店員を振り払った際、男性店員の小指をひねり、加療4週間のケガを負わせた、という内容。
 なので、強盗致傷と銃刀法違反での起訴になったようです。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は平成19年夏ごろから派遣のバイトで日雇いの仕事をしていたが、去年の年末から仕事が減って生活費に困っていたという。

 そして、犯行当日。被告人は、部屋にあったレジ袋に両目部分となる場所に2つ穴を開け、覆面を作成。そのレジ袋と包丁を持って自転車に乗り、被害店へ行き6万円を奪った、と。

 被告人は現金を奪った後、自転車で逃走しようとしたが、店員が自転車の前輪を蹴ったため、転倒。さらに店員が被告人の頭をヘッドロックしたという。店員が“金返せ!!”と言うと、被告人が“腕を外せば返す”と言って、盗んだ現金を見せたらしい。店員の力がゆるんだスキをついて、被告人は店員の手をつかんで振りほどき、包丁やメガネやレジ袋を落としたまま逃走。

 当日の午前中、被告人はビデオ店の前で、捜査中の警察官から職務質問を受け、犯行を自白したため逮捕された、というのが事件の詳細です。

 強盗致傷という罪名なので、この裁判は裁判員制度の対象事件です。なので、法廷の両壁に設置されたモニターを使って、検察官が立証するわけ。そこに、犯行を再現した写真が映し出されたんだけど、被告人が真っ白いレジ袋をかぶって自転車にまたがり、店員役の男性が前輪を蹴っている写真や、店員役の男性がレジ袋の上からヘッドロックをかけている写真など…。店の外に出てからは、被告人が不利な状況にあったようですね。

 法廷には、被告人の父親が情状証人として出廷し、「気弱な性格で強盗をするとは…」と、驚きの表情を隠せない様子でした。
 そして、被告人質問。まずは、弁護人から。

 弁護人 「日雇いの仕事をしてたようですが、電話をして仕事の空きを確認するんですね。今年に入ってからは仕事があまりなく、2月からは全くなかった、と」
 被告人 「はい」
 弁護人 「収入はどれくらいでした?」
 被告人 「派遣の仕事とCDや雑誌を売ったりして、(月?)3万くらいです」
 弁護人 「それでは光熱費も払えませんね?」
 被告人 「1月中旬にケータイが止まり、2月上旬にガス、中旬に電気が止まりました」
 弁護人 「どんな生活をしてたんですか?」
 被告人 「部屋が電気がつかなくて真っ暗になるので、午後5時過ぎに寝る生活です」

 お金もなければ電気も使えないので、寝るしかないというのは、かなり辛い生活ですね。

 弁護人 「犯行当日は何時に起きました?」
 被告人 「電気がつかないのでわかりませんが、(午前)2時か3時頃…」
 弁護人 「起きて、何を考えました?」
 被告人 「明日、仕事あるといいな…とか、コンビニ行って無料の求人情報誌もらいに行こうとか…。でも、ケータイが止まってると、連絡先が無いという理由で仕事が決まらないので、何とかならないか、と。それでコンビニ強盗を思いつきました」
 弁護人 「それで、自転車に乗ってコンビニに向かった、と。でも入らずに、ビデオ店に入ったのはなぜですか?」

 これは、気になってた1つなんですよね。深夜に営業してる店として、コンビニはすぐに思いつくけど、ビデオ販売店はなかなか思い出さないでしょ。前々から計画してたのかと思ったら、

 被告人 「電気のない生活だったので、明るいコンビニに入るのは気後れしてしまいました。帰ろうと思ったんですが、店内がそれほど明るくないビデオ店を思い出して…」

 というのが、コンビニ強盗を断念した理由のようです。精神的に滅入ってると明るい所には行きたくなくなるんでしょうかね。

 弁護人 「犯行後、どうしました?」
 被告人 「家に帰って冷静さを取り戻して、大変なことをしてしまったな、と。現場に物も残してきたし、自首しようと思いました」
 弁護人 「自首しました?」
 被告人 「交番の前に来ると、最後の1歩が出なくて…。次の交番、次の交番と歩いていたら、気がつくとビデオの店の前でした。まだ開店前でしたので、店員さんが来れば通報してくれると思い、座ってました」
 弁護人 「それでどうなりました?」
 被告人 「警察官が近づいてきて“具合でも悪いんですか?”と声をかけられまして、“違います、このビデオ店で強盗しました。逮捕してください”と…」

 強盗の被害届が出されて捜査中だったらしいんだけど、警官も犯人が店先で座り込んでるとは思ってもいなかったでしょうね。弁護人としては、遊ぶ金欲しさじゃなく、ケータイ代のための強盗であること、そして自首の成立を主張していました。
 次は検察官からの質問。

 検察官 「何のため、覆面を用意したんですか?」

 レジ袋マスクには何か理由があるんじゃないかと疑ってるようです。しかし、答えは、

 被告人 「TVとかのイメージで…」
 検察官 「ん? 顔を出したままだとどうなると思いました? あなたの犯行とバレるとは?」
 被告人 「深く考えませんでした。強盗することで頭がいっぱいで、強盗のスタイルをマネしました」
 検察官 「顔を隠す目的じゃないんですか?」
 被告人 「それなら、もっとキチンとしたマスクをしていたと思います」

 レジ袋ではあるけれど、強盗をやるんだから強盗のルールに従ったというのが理由のようですね。ま、強盗自体、社会のルールに反してるわけだが。

 最後は、裁判官からの質問。

 裁判官 「自首しようと思ったのはなぜですか?」
 被告人 「遺留品を落として(すぐ発覚すると思い)、ホームレスになろうか、と。その後、切腹して自殺しようと思いました。でも、それではお詫びにならないので自首しようと思いました」
 裁判官 「お詫びの気持ちがあったのに、交番に入れなかったのは?」
 被告人 「自分が弱かったからと思います」
 裁判官 「あと、仕事を転々としてたようですけど、理由は何ですか?」
 被告人 「仕事はソツなくこなしてたんですが、私は今で言う、空気が読めないというやつで、人間関係がうまくいかない、と」
 裁判官 「今まで人付き合いがうまくなかった?」
 被告人 「はい…」
 裁判官 「今後、その点は職見つけてどうします?」
 被告人 「今は雑居房にいてやってますので、前より人間関係がうまくいくんじゃないかと思っています」

 集団生活を強いられたことで、人付き合いが上手になってきているんでしょう。なんという、ショック療法なんだ。

 この後、検察官が懲役6年と包丁1本の没収を求刑して、閉廷でした。

 仕事したくてケータイを開通させるための強盗なのはわかったんだけど、そんな数千円なら友人とか親に借りれば良かったと思うんだけどねぇ。普通なら、そう思うでしょ。強盗じゃなく、普通の人をマネるべきだったよなぁ。

注目の裁判

11月24日(火)被告人・秋山直紀:所得税法違反
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月24日(火)被告人・芳賀吉孝、小野克巳、五郎川弘之、他2人:わいせつ図画販売・頒布
<わいせつDVD販売を手助けした事件> 08年3月、アダルトDVD業界最大手の自主審査機関「日本ビデオ倫理協会」が、作品の審査基準を甘くして、わいせつDVDの販売を手助けしたとして、審査部統括部長小野克巳(当時51)らを逮捕した。

11月24日(火)被告人・板垣宏 十亀弘史 須賀武敏:爆発物取締罰則違反
<迎賓館などにロケット弾が発射された事件> 1986年に迎賓館などにロケット弾が発射したとして、中核派の須賀武敏、十亀弘史、板垣宏が逮捕された。1審では証拠不十分で全員が無罪とされたが、2審では無罪判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。上告審も2審判決を支持し、1審に差し戻された。

11月24日(火)被告人・松田真知:銃刀法違反など(控訴審初公判)
<大量の拳銃や実弾を密輸した事件> 06年1月、指定暴力団稲川会系松田組組長、松田真知は幹部の後藤広一らと共謀して拳銃11丁、実弾220発などを密輸したとして逮捕された。1審で無期懲役、罰金400万円(求刑無期懲役、罰金500万円)を言い渡された。

11月25日(水)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。

11月25日(水)被告人・竹田慶介:公然わいせつ(初公判)
<路上で下半身を露出した事件> 09年10月、東京都豊島区の学習塾経営、竹田慶介(当時27)は同年9月に同区内の路上でズボンを降ろして下半身を露出し男子中学生3人に見せたとして逮捕された。

11月25日(水)被告人・小川俊之:爆発物取締罰則違反(控訴審判決)
<皇居に向かって火薬を詰めた消火器を発射した事件> 08年9月、神奈川県相模原市の元陸上自衛隊員の小川俊之(当時34)が、火薬を詰めた消火器を皇居に向けて発射したとして、逮捕された。

11月26日(木)被告人・原田久:威力業務妨害(初公判)
<サラ金の業務を妨害した事件> 09年10月、愛知県岡崎市の無職、原田久(当時38)は、消費者金融「レイク」のコールセンターに約500回電話をかけ、女性オペレーターにひわいな言葉をかけたとして逮捕された。女性の体の一部を表す言葉などをかけて業務を妨害したという。

11月26日(木)被告人・小川美津子、他2人:昏睡(こんすい)強盗と保護責任者遺棄(初公判)
<スナック経営者による昏睡強盗事件> 09年2月、東京都渋谷区のスナック経営、小川美津子(当時73)ら男女4人は、スナックで男性客に酒を飲ませて泥酔させ、キャッシュカードを盗んで路上に放置したなどとして逮捕された。

11月26日(木)被告人・松原弘樹:強盗(初公判)
<自衛隊員による強盗事件> 09年9月、陸上自衛隊第1空挺団(千葉県船橋市)の陸士長松原弘樹(当時21)らは、東京・六本木のビル敷地内で飲食店従業員男性(当時22)を倒し、顔を殴るなどして現金約13万円入りの財布を奪ったとして逮捕された。

11月26日(木)被告人・植本勝也、井福一郎、他1人:児童買春・ポルノ処罰法違反(初公判)
<暴力団員らによる児童ポルノ販売事件> 09年9月、大阪府守口市の指定暴力団山口組系暴力団組長井福一郎(当時61)と大阪市西淀川区の無職植本勝也(当時43)は、インターネットで児童ポルノのDVDを販売したとして逮捕された。

11月27日(金)被告人・波和二:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。

11月27日(金)被告人・高相祐一:覚せい剤取締法違反(所持、使用)(判決)
<酒井法子の夫の覚せい剤事件> 09年8月、自称プロサーファーで、女優酒井法子の夫、高相祐一(当時41)は、東京都渋谷区の路上で覚せい剤を所持していたとして逮捕された。

11月27日(金)被告人・和田達夫、嘉藤悦男:背任(初公判)
<理化学研究所をめぐる汚職事件> 09年9月、独立行政法人「理化学研究所」(理研、埼玉県和光市)の主任研究員、和田達夫(当時53)は、取引先の理化学器具開発販売会社「秋葉産業」の社長、嘉藤悦男(当時76)から旅行や飲食費などの代金付け回しを受け、その穴埋めに架空発注を行ったとして逮捕された。


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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