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2009年7月06日

2ちゃんで通報された大学生のその後…

 7月1日、日本弁護士連合会が裁判員裁判の法廷で、被告人の手錠・腰縄姿を裁判員に見せないようにと、最高裁と法務省に要望したらしい。どうやら、「外見による予断は排除しなければならない」というのが理由だそうです。

 去年亡くなった三浦和義さんの話を思い出すなぁ。ニュース映像で被疑者の手錠にもモザイクやボカシが入っているのは、三浦さんの訴えが認められたからなんですよね。さらに、仕事で一緒になったときに聞いたんだけど、三浦さんは「無罪を主張しているのに、手錠・腰縄で入廷するのはおかしい」と、手錠・腰縄なしで入廷してたらしい。
 被告人が望めば、裁判員制度以外でも手錠・腰縄なしでもよさそうだけどねぇ。

 ただ、裁判員裁判で、被告人にフック式のネクタイや革靴風サンダルを貸し出すとか、弁護側が外見にこだわっているのがなんだか変な話ですね。「人は見かけで判断する」って前提なんだもの。服装をキチンとしている人は、信用できるのかね?

 さて、今回は、6月30日に行われた阪尾俊之被告人(逮捕時20)の裁判の話。罪名は威力業務妨害。よくあるネットへの書き込みですね。

 阪尾はゲームの主人公を名乗り、インターネット掲示板「2ちゃんねる」に「赤坂サカスで血のアメを降らせてやる」などと書き込んだとして逮捕された。
 「よしおれがデュードになりきってやる。休日の新宿か赤坂サカスで待ってろ。血のアメを降らせてやる」などと書き込み、赤坂サカスを管理経営するTBSに警備を強化させ、同社の業務を妨害したというのが報道で伝えられた内容です。
 「デュード」とは、主人公が街で無差別殺人を行うアメリカのパソコンゲーム「ポスタル」の主人公で、阪尾は高校1年のころから、このゲームをやっていたと言う。
 この手の事件、裁判は、まったくなくなる気配がありませんね。軽い気持ちで書き込んでるんだろうけど。「通報しました」の書き込みで本当に通報されて、逮捕、起訴となると、こうなるわけです。

asozan090706.jpg

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は取り調べに対し「私生活でムシャクシャしていたのでやった。ムシャクシャしていた理由は、大学3年になり、友達が大学を辞めて他の大学に行くと言ってたり、他の友人は就職することになり、生活環境が変わったからです。今後、ポスタルはやらない」と供述しているらしい。
 法廷には被告人の父親が、情状証人として出廷し「似た事件も多いので、再三注意をしていた」等述べて、今後は今まで以上にしっかり監督していくことを約束していました。
 そして、被告人質問。まずは、弁護人から。

 弁護人 「本当に書き込んだことをやろうと思ってたんですか?」
 被告人 「全くありません」
 弁護人 「では、なぜ書いたんですか?」
 被告人 「前の人の書き込みの流れで書いてしまいました」

 どうやら、被告人の前に書き込まれたのが、犯行予告をあおる内容だったらしく、その期待に応えて、「よしおれがデュードに…」と書き込んだというのが真相のようです。

 弁護人 「あなたの書き込みの中で、血の雨の“雨”が、カタカナで“アメ”となってますけどなぜですか?」
 被告人 「言い方をソフトにして…」
 弁護人 「漢字の“雨”だと生々しいと思った、と」
 被告人 「少し…」

 カタカナにすると生々しく亡くなるみたいですね。これはインターネット上のルールなのか、2ちゃんえる上のルールなのか、被告人個人の考え方なのか。どちらかというと“雨”よりも、“血”の方が生々しいと思うけど。

 弁護人 「ネットの書き込みやゲームは好きなんですか?」
 被告人 「好きです」
 弁護人 「他のゲームもやるんですか?」
 被告人 「音楽ゲームとかですね」
 被告人 「いろんなゲームの1つに無差別殺人ゲームもあった、と。ゲーム自体は否定しないけど、(ポスタルの)内容がね。なんでこんなゲームやるのかなと」
 被告人 「ネット上でみつけて、好奇心で」

 と、弁護人も無差別殺人ゲームをやることに疑問を感じている様子です。あくまでも、このゲームばかりやってたわけじゃないと主張したかったのでしょう。このあとは、謝罪と反省の弁を述べて、質問終了。
 次は、検察官から。

 検察官 「あなたがやってたポスタルって、1と2、どっち?」
 被告人 「2です」
 検察官 「どんなゲームなんですか?」
 被告人 「…対戦するゲームです」
 検察官 「普通に生活してて通行人を撃ったりするゲームでしょう。このゲームの何が楽しかったのかな?」
 被告人 「特に楽しくなかったです」
 検察官 「ポスタルの1の方は、ヨーロッパで発売禁止になってるって知ってた?」
 被告人 「いいえ」

 世界的にも、いわくつきのゲームらしいです。発売禁止どころか、このゲームを所持しているだけで違法と言う国もあるそうな。
 そして、書き込みについての質問です。

 検察官 「新宿とか赤坂サカスとか、具体的な場所を書いたのはなぜですか?」
 被告人 「思い付きで書いたんです」
 検察官 「その2つは、あなたの中でどんな場所?」
 被告人 「…わからないです」
 検察官 「人がようけ集まる場所?」
 被告人 「東京の街で思いついたので…」

 赤坂サカスなんて、そんなに人でにぎわってるわけでもないから、不思議な書き込みだと思ってたんだけど、TBSに恨みがあったとかじゃなく、思い付いただけってのが理由のようです。

 検察官 「大学を退学したのはどうしてですか?」
 被告人 「大学に迷惑をかけたので?」
 検察官 「今後は何をしようと思ってます?」
 被告人 「具体的には考えてないですけど、専門学校をネットで探しているんですけど」
 検察官 「どんな専門学校?」
 被告人 「パソコンが得意だから、IT関係…」

 この手の裁判で「ネットは利用しません」って言うのが主流だったんだけど、最近はそんなこという被告人は少ないですね。ネットを使わずに生活するって、現実的じゃないからなんでしょうか。
 最後は裁判官からの質問。

 裁判官 「ポスタルは高校からやってた、と。書き込みもそのころから?」
 被告人 「はい」
 裁判官 「今回のような書き込みをしたことは?」
 被告人 「ありません、初めてです」
 裁判官 「今回はなぜしたんですかね?」
 被告人 「前の人につられて、悪のりで書き込みました」

 そして、裁判官から、たらればの質問です。

 裁判官 「もし、高校のころに今回と似たような流れを見たら、書いてたと思いますか?」
 被告人 「書かなかったと思います」
 裁判官 「じゃ、なんで今回は書いたんですかね?」
 被告人 「たまたまです」

 仮定の質問だから的確には答えられないだろうけど、たまたまって分析はないでしょ。

 裁判官 「たまたま…。高校の時なら書いてないと思う理由はなんですか?」
 被告人 「その時は楽しかったので」
 裁判官 「何が?」
 被告人 「なんて言うのかな。高校生活が楽しかったので」
 裁判官 「大学は楽しくなかった?」
 被告人 「大学に入ってから少しだけ楽しくなくなってきて」
 裁判官 「少し。基本的には楽しいの?」
 被告人 「楽しいです」

 すべての話をまとめると、大学に入って少しだけ楽しくなくなったから、前の人の書き込みにつられて、思いつきで犯行予告をしたと。結局、目的はわからないままでしたね。自分の書き込みをした人の反応を楽しみたいとか、赤坂サカスの管理会社の人たちを困らせたいとか、そんな理由もない。犯行予告をすることでストレス解消をしていたようでもないし。ものすごくぼんやりとした犯行予告だよなぁ。

 このあと、検察官が懲役1年6月を求刑して閉廷でした。被告人にとっては、ポスタルの中で人を殺すのと同様に、掲示板に書き込むのが仮想現実って感じだったかもしれませんね。

※写真は赤坂サカス全景。書き込みで関係者は大迷惑

注目の裁判

11月24日(火)被告人・秋山直紀:所得税法違反
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月24日(火)被告人・芳賀吉孝、小野克巳、五郎川弘之、他2人:わいせつ図画販売・頒布
<わいせつDVD販売を手助けした事件> 08年3月、アダルトDVD業界最大手の自主審査機関「日本ビデオ倫理協会」が、作品の審査基準を甘くして、わいせつDVDの販売を手助けしたとして、審査部統括部長小野克巳(当時51)らを逮捕した。

11月24日(火)被告人・板垣宏 十亀弘史 須賀武敏:爆発物取締罰則違反
<迎賓館などにロケット弾が発射された事件> 1986年に迎賓館などにロケット弾が発射したとして、中核派の須賀武敏、十亀弘史、板垣宏が逮捕された。1審では証拠不十分で全員が無罪とされたが、2審では無罪判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。上告審も2審判決を支持し、1審に差し戻された。

11月24日(火)被告人・松田真知:銃刀法違反など(控訴審初公判)
<大量の拳銃や実弾を密輸した事件> 06年1月、指定暴力団稲川会系松田組組長、松田真知は幹部の後藤広一らと共謀して拳銃11丁、実弾220発などを密輸したとして逮捕された。1審で無期懲役、罰金400万円(求刑無期懲役、罰金500万円)を言い渡された。

11月25日(水)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。

11月25日(水)被告人・竹田慶介:公然わいせつ(初公判)
<路上で下半身を露出した事件> 09年10月、東京都豊島区の学習塾経営、竹田慶介(当時27)は同年9月に同区内の路上でズボンを降ろして下半身を露出し男子中学生3人に見せたとして逮捕された。

11月25日(水)被告人・小川俊之:爆発物取締罰則違反(控訴審判決)
<皇居に向かって火薬を詰めた消火器を発射した事件> 08年9月、神奈川県相模原市の元陸上自衛隊員の小川俊之(当時34)が、火薬を詰めた消火器を皇居に向けて発射したとして、逮捕された。

11月26日(木)被告人・原田久:威力業務妨害(初公判)
<サラ金の業務を妨害した事件> 09年10月、愛知県岡崎市の無職、原田久(当時38)は、消費者金融「レイク」のコールセンターに約500回電話をかけ、女性オペレーターにひわいな言葉をかけたとして逮捕された。女性の体の一部を表す言葉などをかけて業務を妨害したという。

11月26日(木)被告人・小川美津子、他2人:昏睡(こんすい)強盗と保護責任者遺棄(初公判)
<スナック経営者による昏睡強盗事件> 09年2月、東京都渋谷区のスナック経営、小川美津子(当時73)ら男女4人は、スナックで男性客に酒を飲ませて泥酔させ、キャッシュカードを盗んで路上に放置したなどとして逮捕された。

11月26日(木)被告人・松原弘樹:強盗(初公判)
<自衛隊員による強盗事件> 09年9月、陸上自衛隊第1空挺団(千葉県船橋市)の陸士長松原弘樹(当時21)らは、東京・六本木のビル敷地内で飲食店従業員男性(当時22)を倒し、顔を殴るなどして現金約13万円入りの財布を奪ったとして逮捕された。

11月26日(木)被告人・植本勝也、井福一郎、他1人:児童買春・ポルノ処罰法違反(初公判)
<暴力団員らによる児童ポルノ販売事件> 09年9月、大阪府守口市の指定暴力団山口組系暴力団組長井福一郎(当時61)と大阪市西淀川区の無職植本勝也(当時43)は、インターネットで児童ポルノのDVDを販売したとして逮捕された。

11月27日(金)被告人・波和二:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。

11月27日(金)被告人・高相祐一:覚せい剤取締法違反(所持、使用)(判決)
<酒井法子の夫の覚せい剤事件> 09年8月、自称プロサーファーで、女優酒井法子の夫、高相祐一(当時41)は、東京都渋谷区の路上で覚せい剤を所持していたとして逮捕された。

11月27日(金)被告人・和田達夫、嘉藤悦男:背任(初公判)
<理化学研究所をめぐる汚職事件> 09年9月、独立行政法人「理化学研究所」(理研、埼玉県和光市)の主任研究員、和田達夫(当時53)は、取引先の理化学器具開発販売会社「秋葉産業」の社長、嘉藤悦男(当時76)から旅行や飲食費などの代金付け回しを受け、その穴埋めに架空発注を行ったとして逮捕された。


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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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