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2009年5月26日

「判決は求刑通りに」と頼む被告人!?

 裁判員制度が施行されてから初の「お笑い裁判の歩き方」というトークライブが行われるので、宣伝です。

 5月30日が、18時30分からと23時からの2回公演。場所は、名古屋のTOKUZOです。
 そして、翌日の5月31日、18時開演、場所は京都のclub METROです。
 毎度の事ながら、裁判の話をダラダラとする予定です。今週の週末が暇な方はぜひ。ちなみに、来場者全員にプレゼントも用意してるんで、プレゼントだけ貰って帰るのもアリかもしれないですね。
 今回は、5月19日に行われた、渋谷正二被告人(逮捕当時51)の裁判傍聴記。罪名は、強盗、銃砲刀剣類所持等取締法違反。

 コンビニエンスストアで金を奪ったあとに捨てた凶器の包丁が押収されたと思い込み、「捕まるから」と出頭してきて強盗容疑で逮捕された、という事件ですね。実際は刃物は押収されていなかったようです。
 報道によると、3月11日午前3時50分頃、江戸川区内のサンクスで男性店員(56)に刃物を突きつけ、3万円を奪った。逃げる途中、近くのスーパーの駐輪場の植え込みに凶器の包丁を捨てた。その後気になり、夕方スーパーに行ってみると包丁はなくなっていた。
 「警察が押収したんじゃないか。いずれ身元がバレる」と考えたという。包丁は、昼頃スーパーの従業員が見つけ、保管していたそうです。

 悪事を働くとネガティブ思考になってしまうもんなんでしょうか。自首するまでの間は、ドキドキしっぱなしだったでしょうね。
 起訴されたのは報道された通り。
 検察官の冒頭陳述によると、被告人は前科5犯。職を転々としていて、最後に働いてた自動車部品工場から去年12月にリストラされたとのこと。
 そして犯行当日。アパートの家賃3カ月分を滞納していたため、管理会社の人が訪ねてくる予定だったので、コンビニ強盗をして金を得る事を決意。

 コンビニに客がいないのを確認すると、変装をした上で入店。店員に刃渡り16・7センチの包丁を突きつけ「金を出せ」と言って、現金3万円を奪った。
 逃走中、駐輪場の植え込みに包丁を投棄し投棄して、サウナへ行ったとのこと。しかし、「このままでは捜査中の警察が見つけて、指紋からバレる」と思い、捨てた包丁を拾いに戻ると、包丁がなかったため、翌日警察署に出頭した。というのが事件の詳細です。
 なので、自首したのは伝えられた14日じゃなく、13日のようですね。それでも2日間ビクビクしてたんだろうけど。
 特に証人の出廷もなく、被告人質問です。まずは弁護人から。

 弁護人 「昨年12月にリストラされてから、職探しはしてたんですか?」
 被告人 「ハローワークや求人誌見て、何回か面接行きましたけど、落とされました…」
 弁護人 「犯行時の所持金は?」
 被告人 「90円ぐらいしか…」
 弁護人 「家賃滞納してたようですけど、安いとこに越そうとは考えなかった?」
 被告人 「考えましたけど、まとまった金が…」

 金銭的に相当切羽詰ってたようです。

 弁護人 「調書では、自殺しようとしたけど出来なかった、と。」
 被告人 「はい」
 弁護人 「どうやって、自殺しようとしたんですか?」
 被告人 「柱に布掛け(て首を吊)るんですけど、手が空いてるんで、苦しくて(布と首の間に)手が入っちゃうんです」
 弁護人 「で、生きてる、と。どうなりました?」
 被告人 「ヤケですよね。どうなってもいいや、と」

 金もなく、死にきれず、自暴自棄になって犯行に及んだと主張です。
 そして、犯行についての質問。

 弁護人 「変装してたんですよね?」
 被告人 「つば付きのキャップを逆に被って、マスクしてました」
 弁護人 「手袋とかは?」
 被告人 「(包丁は)素手でした」

 ヤケになってたとはいえ、無計画。つばを後ろにしたほうが、顔が認識されやすいでしょ。しかも、素手で強盗に入れば指紋がいたる所に残るのに。

 弁護人 「店員は無抵抗でしたけど、もし抵抗されてたら、どうしてました?」
 被告人 「抵抗するでしょうね。そのための包丁でしたし、折角入って何も盗らないアホはいないでしょ」

 強盗の行為自体、アホのような気が…。そして、最後に。

 弁護人 「警察の方で、自首で(刑を)軽くしないで、と言ってたようですね。そして、私に対しても、情状弁護はいらない、と。どういう事なんですか?」
 被告人 「もう必要ないって事ですね。人生諦めましたから。今度(刑務所を)出ても、やることないですから…」
 弁護人 「でも、社会復帰後は、仕事して真面目に生きていかないといけませんよね」
 被告人 「そういう気持ちはあります」

 と、投げやりな気持ちとやり直したい気持ちが混在している事を述べて、質問終了。
 次は、検察官から。

 検察官 「仕事をしてなかったのが原因じゃないんですか?」
 被告人 「それで事件起こさないって言い切れます? 100%限ります?」
 検察官 「本気で仕事探してたんですか?」
 被告人 「なんですか? 本気で仕事探してなかったって言いたいんですか?」
 検察官 「本気って何ですかね?」
 被告人 「ん~…、真面目って事ですか?」

 互いが質問に対して、質問返しの繰り返し。ラチがあかないと思ったのか、検察官は一呼吸置いてから、ゆっくり、

 検察官 「…前科も全て、人のお金を盗る内容ですよね。…刑務所で何も、学ばなかった?」

 と、質問すると、

 被告人 「ん~、学びませんでしたね」

 犯行時のような、投げやりな被告人に早変わりです。

 検察官 「お金を盗られる人の気持ちは考えなかったんですか?」
 被告人 「考えませんでした!」
 検察官 「先程、抵抗されたら抵抗してたかもしれない、というような答えを言ってましたけど、そんな気迫で迫られたら、コンビニの店員はどう思ったと思います?」
 被告人 「まあ、怖かったでしょうね」
 検察官 「その時、何考えてました?」
 被告人 「何も考えてません」
 検察官 「今は?」
 被告人 「何も考えてませんね!」

 とケンカ腰のまま質問終了です。検察官もこれ以上聞いても仕方ないって感じで、質問やめただけなんだけど。
 最後は、裁判官から。

 裁判官 「あなたの言う、抵抗って?」
 被告人 「状況によって違ってきますよ」
 裁判官 「刺すとかは?」
 被告人 「どうなるかわかんないですよ。最初は、脅しのために持ってたんですよ。相手が抵抗すれば刺しちゃうかもしんないし」
 裁判官 「最初から刺そうとは考えてなかったんですか?」
 被告人 「最初からは考えてませんよ。店員が憎い訳じゃないですし」

 結果的に包丁で傷つけてはいないんだけど、皆、この点が気になってるんですね。

 裁判官 「今、こういう状況でね、仕事探すのは大変かも知れませんけど、ぜいたく言わなきゃ見つかるんじゃない?」
 被告人 「それは、ありました」
 裁判官 「犯行の理由は、何なんですか?」
 被告人 「お金が無くなっちゃった事、部屋を追い出されそうになった事……、あとは…、絶望感ですね」
 裁判官 「絶望って?」
 被告人 「わかんないですよ。なんで…、こんなことになっちゃったのか…」
 裁判官 「でもね、お金が無いからコンビニに強盗に入るって、短絡すぎる気がするんだけど。迷惑かけるより、他に方法があったんじゃないですか?」
 被告人 「生活保護受けるとか考えました。仕事も探しました。…自分は労働力が無いんですね。」
 裁判官 「そう言われりゃ、そうなんだけど、…」

 と、裁判官が何かを言おうとすると、被告人は大声で、

 被告人 「(私は)51年生きてきて、裁判官は私の事わかりますか!」

 と、怒鳴ったんです。これに対し、

 裁判官 「…わかりませんね。ただ、なんでこうなったのかなぁ、と」

 ヤケになってる被告人に呆れる事なく、しつこく質問続行。

 被告人 「結局自分が悪いんです。認めてんですから。死刑でもしてもらって……。情けないんです、死のうと思ってたんだから」
 裁判官 「ん~……、なんで死ななかったんですか?」
 被告人 「死ねなかったんですよ。情けないんですよ。死ねなかった事が!!…死んでしまえば何も無しじゃないですか。ゼロじゃないですか!」

 ここで、裁判官も質問することを諦め、被告人質問は終了です。
 この後検察官は、前刑出所後2年弱での犯行で、再犯の可能性も高いとして、懲役5年を求刑しました。
 弁護人は、自首もしていて、逮捕以降全てを自述している点を挙げ、可能な限り軽い判決をお願いです。
 これを受けて、被告人の最終陳述。

 裁判官 「これで審理を終えますが、最後に何か言っておきたい事はありますか?」
 被告人 「情状の件は必要ないです。求刑通りの判決でお願いします」

 なんと、弁護人の弁論を無意味にする最終陳述です。さすがに裁判官も黙っていられなかったようで、異例の補充質問が再開。

 裁判官 「ん~…、あなたは、刑務所で生活したい訳じゃないでしょ?」
 被告人 「そういう訳じゃないですけど…、やった事は認めてるんですから、求刑通りで。情状酌量は必要ありません!」
 裁判官 「…ホントに、いいの?…それで」
 被告人 「はい、構いません!」

 と。力強く答えて、閉廷でした。
 ヤケになるのはわからないでもないけど、そのヤケっぱちの勢いを、良いほうに持ってけば、何でも出来そうなんだよなぁ。
 被告人の望み通り厳罰にすべきなのか、自首をした事で罰を軽減すべきなのか。どちらが被告人のためになるのかねぇ。公判にまで、ヤケになった勢い引きずってるけど。

注目の裁判

11月2日(月)被告人・氏家信子:殺人ほか(判決)
<息子を殺害した事件> 09年1月、東京都大田区の無職氏家信子(当時65)は傷害を持つ双子の息子に包丁で切りつけた。弟は病院で死亡が確認された。

11月2日(月)被告人・秋山直紀:所得税法違反(初公判)
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・竹林守、成田茂之、他1人:公職選挙法違反(詐欺登録・詐欺投票)(初公判)
<従業員の住民登録を移し投票を支持した事件> 09年9月、機械製造販売会社「水戸工業」の社長・成田茂之(当時57)らは自社の従業員の住民登録の場所を変更させ、衆議院議員選挙で自民党に投票するよう指示したとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・熊谷智幸:強制わいせつと偽造私印使用(初公判)
<テレビ局員を装ってわいせつ行為をした事件> 09年8月、インターネット広告会社役員、熊谷智幸(当時35)は、東京都板橋区内の路上で30代の女性にフジテレビの社員を装った偽の名刺を手渡して声をかけ、近くのマンションのエントランスまで連れて行き、わいせつな行為をした疑いで逮捕された。

11月2日(月)被告人・押尾学:麻薬取締法違反(使用)(判決)
<俳優による麻薬事件> 09年8月、東京・六本木のマンションで女性が死亡していると119番通報があり、部屋に出入りしていたとして俳優の押尾学(当時31)が任意で事情聴取を受けた。任意の尿検査で、合成麻薬のMDMAに陽性反応が出たため麻薬取締法違反(使用)の疑いで逮捕された。

11月4、5、6日(水、木、金)被告人・太田周作:殺人未遂(初公判)
(初公判、5日6日も) <駅のホームから女性を突き落とした事件> 09年3月、無職太田周作(当時24)は、JR東京駅で女性(当時60)をホームから突き落とし、電車に接触して負傷させたとして、殺人未遂で逮捕された。取調べに対して「(事件を起こすのは)どこでも、誰でもよかった」などと供述した。

11月5日(木)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。

11月5日(木)被告人・中田静子 ほか1名:昏睡強盗、窃盗
<スナック客に対する昏睡強盗> 09年3月、バー経営の中田静子(当時62)はスナック経営の細江敏光(当時39)と共謀、スナックで男性客に強い酒を飲ませて昏睡状態にさせ、キャッシュカードを奪って現金自動預払機から金を引き出したとして逮捕された。

11月6日(金)被告人・波和二ほか:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。

11月6日(金)被告人・片石肇:強盗傷害(控訴審判決)
<プロレスグッズ専門店での強盗事件> 09年2月、千葉県柏市の無職、片石肇(当時28)は他の2人と共謀して東京都千代田区のプロレスグッズ専門店に押し入った。男性店員に暴行を加え、現金15万9000円と、マスク5点などの商品を奪った。

11月6日(金)被告人・多田知信:窃盗、住居侵入(初公判)
<警察寮での窃盗事件> 09年8月、警視庁大森警察署地域課巡査長の多田知信(当時30)は、08年11月に警察寮の同僚の部屋に侵入し、腕時計を盗んだとして逮捕された。


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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