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2009年5月19日

市議選立候補男の目的は…力作の「爆弾」自慢?

 遂に今週、裁判員制度開始ですね。で、先週になって、各地裁と都道県警がホットラインを設けて情報交換を行うというニュースがありました。裁判員が襲われるなどの事態に対応するためらしいんだけど、どこまで対処してくれるんだろうねぇ。危害を加えるようなのは事件だから対応するのは当然なんだけど、「裁判員として参加した後、近所付き合いに異変が…」とか、「裁判後、会社内の人間関係が…」っていう相談にも乗ってくれるのかね? いろんなケースを想定しといてもいいでしょ。

 それにしても、死刑制度も終身刑導入も公判前整理手続きの非公開も、色んなことが議論されることなく開始するんですね。何か問題が起きてから話し合いが持たれるんでもいいんだけどさ。

 今回は、先週木曜に行われた小川俊之被告人の裁判傍聴記。罪名は、爆発物取締罰則違反、火薬類取締法違反。事件の内容は、逮捕・別事件の供述・再逮捕の記事から。

 東京都千代田区の三宅坂付近に止められていたトラックから、08年9月18日未明、皇居に向け消火器が発射された事件で、灯油販売業小川俊之容疑者(34)を逮捕した。
 調べでは、小川容疑者は皇居に向け、トラックの荷台から火薬を詰めた50リットルドラム缶や消火器を発射した疑い。「自分は愉快犯。騒ぎを起こしたかった」などと供述している。

 小川容疑者は、第1空挺団に所属した経験もある元陸上自衛官で、9月21日に開票される神奈川県座間市議選にも立候補している。

 そして、その4日後の新聞記事。

 小川俊之容疑者(34)が「爆薬約500キロを製造し、横浜市の海に投棄した」と供述していることが分かった。

 公安部によると、爆薬は横浜市金沢区の「海の公園」付近で見つかり、押収した。土のう9袋に分かれ、貯水用の大型ポリタンクの中に入れられていた。

 そして、このニュースから約1カ月後の報道です。

 警視庁公安部は、自宅に鉄パイプ爆弾を隠し持っていたとして、小川容疑者を再逮捕した。
 調べでは、小川容疑者は9月19日、神奈川県の自宅の屋根裏に、黒色火薬を詰めた鉄パイプ爆弾3本を隠し持っていた疑い。

 さらに、小川容疑者が爆発物の開発経過をビデオに録画していたことも判明した。

 とんでもない人がいるもんだ、という事件です。爆弾を開発し、横浜の海に沈めて、さらに皇居に向けて発射。しかも、市議選に立候補してる最中の犯行ですから。ちなみに、投票結果は、204票で落選だったんだけどね。

 まずは、4月28日に行われた初公判。

 起訴されたのは、5件。1つ目は、去年9月18日2時40分、三宅坂交差点から車の荷台の消火器に火薬を入れた爆弾を皇居に向けて発射した件。2つ目は、同時刻、爆弾4本を所持した件。3つ目は、9月19日に神奈川県の被告人宅で黒色火薬を所持した件。4つ目は、横浜「海の公園」沖合240メートルにロータリータンクに火薬を入れた爆弾を漂流した件。5つ目は、9月18日にドラム缶に火薬を入れた爆弾を、午前8時に起爆するようセットし、桜田濠に投下した件。

 被告人が罪状認否で罪を認めた後、援護人がパワーポイントを使って意見を述べていました。冒陳で使うのは何度か見た事あるけど、罪状認否でモニターを使用するのは始めて見ました。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は平成18年末に、ネット上の動画サイトで火薬の番組を見て、火薬に興味を持ったとのこと。平成19年12月に材料を購入し、平成20年4月からは丹沢山中で爆弾の実験を開始し、ビデオで撮影していたらしい。58回もの実験後、平成20年8月お台場の海上で爆破を試みるも、警備に見つかり失敗。

 翌月、起訴状の事件を決行したというのが事件の詳細です。

 実際は、アンホ爆薬・ニップル管・デンスプリル硝安など、なじみのない単語が飛び交っててチンプンカンプンだったんだけど、簡単にまとめると、こんな感じです。

 弁護人の冒頭陳述も終わり、検察官が証拠を読み終えた後、

 検察官 「DVDに58の映像がありまして、映像を止めながら被告人の説明を求めたいと思います」

 と、被告人の解説付きで実験をした時の映像をモニターに流すと発言です。モニターをこんな風に使う方法もあるんですね。

 葉っぱや木々に囲まれた切り株の上に1つのビン。バチバチッと小さな音と光が放たれて、細い煙が上がる、30秒程の映像が流れて

 検察官 「この映像は?」
 被告人 「ビンに黒色火薬を入れて、バクチクで点火している、と」
 検察官 「火薬の量は?」
 被告人 「満タンに入れてます。グラムは計ってないので…。確か中ビンの大きさで、200~300mlのビンです」

 と、質疑応答。これらのやり取りが58の映像で行われるとなると、どれだけ時間が掛かるのやら…。

 この後は、ビンのフタが飛んだり、ビンが倒れたり、点火に失敗したり…。他には、入れ物を缶に変えたり、花火で点火したり試行錯誤してる映像が流されました。

 中には、木漏れ日が差し込む山の中、地面からモクモクッと煙が出てくるだけの静かな2分程の映像が流れると

 検察官 「これは何ですか?」
 被告人 「活性炭を地下1メートルに埋めて点火したものです」
 検察官 「結果は?」
 被告人 「土を圧力容器として使うと、空気が抜けてダメなのが分かりました」

 いつか爆発するのかと思って2分程凝視していた裁判官が思わず笑っていました。かなりシュールな映像だったしね。

 その後は、容器をほ乳ビンしょう油差しなどに変え、遂に消火器爆弾を発射することに成功です。ロケットのように真っすぐ飛んで行く消火器を見てると、最初の頃の映像がウソのようです。なんだか「プロジェクトX」でも見ているかのような感動を覚えますね。残念ながら、犯罪行為なんだけどさ。

 徐々に容器がエスカレートして、消火器まで飛ばしていたのに、今度は空き缶を飛ばす映像が流れました。

 検察官 「また缶に戻ったのは?」
 被告人 「これは実験と言うよりは、山中でジュースを飲んでたので、缶を処分、と」

 どうやら、火薬を使ってポイ捨てです。余程、爆弾に自信があったのが、余裕が垣間見えます。

 「缶を処分」という答えに、裁判官は思わず吹き出して笑ってたけど。

 最後は、目測で消火器を300m飛ばした映像、ローリータンクを川の中に沈めて水中爆破に成功した映像などを流し、約2時間の上映が終了です。
 爆爆製造という犯罪行為じゃなければ、拍手したくなる程の感動作品でしたね。被告人は、研究熱心で努力家なんでしょう。独学でここまでやるとは。この日は、これで閉廷。
 そして、先週木曜の第2回公判です。

 弁護人が検察での取り調べ調書をモニターに映し出して、被告人質問を始めようとすると。

 裁判官 「弁護人、それは…」
 弁護人 「この方が分かりやすいですし、モニターに映しながら質問するのは禁止してないですから…」。
 裁判官 「分かりやすいって、(裁判員も含め)こちら側ですか?」
 弁護人 「はい。あと、被告人も」

 確かに質問表などの資料を見ながら被告人や証人が答えるのは禁止されてるんだけど、モニター使用は特に禁止されてないですね。う~ん、裁判員裁判のルールが未だ、ハッキリ決まってないのがこの裁判で見えてきましたね。そして

 裁判官 「(認めると)議論になった時に…」

 と、歯切れの悪い理由で却下されました。今後どうなっていくのか分からないけど、現時点でモニターに調書を映して質問しちゃいけないようです。傍聴人にも分かりやすいのに。

 と言う訳で、普通に被告人質問です。

 弁護人 「本件の目的は何ですか?」
 被告人 「特にないんですが、ネットや番組見て爆弾作りますよね。それで思いつきで、人前でやろうと思ったのが目的です」
 弁護人 「調書では“自分を高める”と」
 被告人 「どういう反応があるか興味はありましたけど…。反応を知れば。人間を高められると思ってました」
 弁護人 「あと“行動力を示したかった”というのは?」
 被告人 「(目的として)あったと思います」
 弁護人 「市議選の票の獲得という目的は?」
 被告人 「ん~…はい。その増減が見たい、と」

 とにかく、人々、世間の反応が見たかったというのが犯行の動機だったようです。

 弁護人 「何故、桜田濠だったんですか?」
 被告人 「とにかく目立つ場所で爆発、と」
 弁護人 「目立つなら、渋谷駅前とか新宿駅でもいいんじゃないですか?」
 被告人 「それだと、人がモロに被害受けるので」

 あくまでも、人に危害を加えるつもりはなかったと主張です。というのも、桜田濠にドラム缶爆弾を投下した後、「朝方起爆」という注意喚起のビラを貼ってたんですね。横浜の件も、人がいない海上で爆破しようと考えてた訳です。でも、皇居の中には人が生活しているんですよね。これに関しては

 弁護人 「でも、皇居内には人がいますよね?」
 被告人 「桜田濠は、お堀の向こうが畑になってるので爆弾を落としやすいんです」
 弁護人 「畑だなんて分かります?」
 被告人 「地図で確認してますので」

 と、天皇陛下はもちろん、他の宮内庁の人など、誰にも危害を加えるつもりはなかったようです。

 弁護人 「今、どう思ってますか?」
 被告人 「マズイ行為だったと思います」
 弁護人 「反省していると聞いていいんですか?」
 被告人 「はい」

 と、反省していることを述べて、質問終了。

 次は検察官から。

 検察官 「目的が、世間からの反応を知りたい、と」
 被告人 「新聞……、ん~第一に取り上げられるかどうか(が反応の1つ)」
 検察官 「あなたがやった事は、世間にも不安を与えるというのは分かってますよね?」
 被告人 「言われてみれば、そのように言われても仕方がない、と」
 検察官 「場合によっては、人を傷付ける危険性も分かってましたよね?」
 被告人 「そのようにならないように、やらなきゃな、と」

 結果的にケガ人はいないけど、危険性極まりない行為だと責めているようです。

 この後は、火薬の専門的な質問が続いて、質問終了でした。

 最後は裁判官から。

 裁判官 「逮捕されると予想してました?」
 被告人 「はい」
 裁判官 「逮捕されたら選挙どころじゃないですよね」
 被告人 「大した罪じゃないと思ってたんで…」

 軽く考えてたって事でしょうかね。

 裁判官 「爆弾作ってみようと考えてね、山に入って、実験重ねて、進化して。…ま、言葉は変だけど…、敬服しちゃうところもあるんだけどね、(爆弾の)成果を試すってのもあったんじゃないの?」
 被告人 「そういう気分…、あったでしょうね。完成したから、やった、と」
 裁判官 「周りの反応って、しきりに言ってるけど、いいのが出来たからじゃないの?」
 被告人 「そんなに凄いのを作った訳じゃあ…」
 裁判官 「だって花火が完成してたらやらないでしょ?」
 被告人 「最初は花火にしようと思ってたんで…」

 と、答えて質問終了でした。

 最後は花火でもやってたとは言ってたけど、裁判官が言うように、独学で作った爆弾を皆に見てもらいたかったと考えるのが自然だよなぁ。模索中に花火が完成していれば、被告人にとっては花火でもよかったんだろうけど。

 もしこれがプラモデルだったら、市販の物じゃなく、パーツを素材から作ったようなもんでしょ。そりゃ、他人に自慢もしたくなるんでしょうね。

 裁判官に感心される程、研究熱心な被告人が爆弾に興味を持ってしまったのは、残念ですね。犯罪とは無縁の趣味を持てば、人並みはずれた行動力を見せてくれそうなんだよなぁ。

注目の裁判

11月2日(月)被告人・氏家信子:殺人ほか(判決)
<息子を殺害した事件> 09年1月、東京都大田区の無職氏家信子(当時65)は傷害を持つ双子の息子に包丁で切りつけた。弟は病院で死亡が確認された。

11月2日(月)被告人・秋山直紀:所得税法違反(初公判)
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・竹林守、成田茂之、他1人:公職選挙法違反(詐欺登録・詐欺投票)(初公判)
<従業員の住民登録を移し投票を支持した事件> 09年9月、機械製造販売会社「水戸工業」の社長・成田茂之(当時57)らは自社の従業員の住民登録の場所を変更させ、衆議院議員選挙で自民党に投票するよう指示したとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・熊谷智幸:強制わいせつと偽造私印使用(初公判)
<テレビ局員を装ってわいせつ行為をした事件> 09年8月、インターネット広告会社役員、熊谷智幸(当時35)は、東京都板橋区内の路上で30代の女性にフジテレビの社員を装った偽の名刺を手渡して声をかけ、近くのマンションのエントランスまで連れて行き、わいせつな行為をした疑いで逮捕された。

11月2日(月)被告人・押尾学:麻薬取締法違反(使用)(判決)
<俳優による麻薬事件> 09年8月、東京・六本木のマンションで女性が死亡していると119番通報があり、部屋に出入りしていたとして俳優の押尾学(当時31)が任意で事情聴取を受けた。任意の尿検査で、合成麻薬のMDMAに陽性反応が出たため麻薬取締法違反(使用)の疑いで逮捕された。

11月4、5、6日(水、木、金)被告人・太田周作:殺人未遂(初公判)
(初公判、5日6日も) <駅のホームから女性を突き落とした事件> 09年3月、無職太田周作(当時24)は、JR東京駅で女性(当時60)をホームから突き落とし、電車に接触して負傷させたとして、殺人未遂で逮捕された。取調べに対して「(事件を起こすのは)どこでも、誰でもよかった」などと供述した。

11月5日(木)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。

11月5日(木)被告人・中田静子 ほか1名:昏睡強盗、窃盗
<スナック客に対する昏睡強盗> 09年3月、バー経営の中田静子(当時62)はスナック経営の細江敏光(当時39)と共謀、スナックで男性客に強い酒を飲ませて昏睡状態にさせ、キャッシュカードを奪って現金自動預払機から金を引き出したとして逮捕された。

11月6日(金)被告人・波和二ほか:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。

11月6日(金)被告人・片石肇:強盗傷害(控訴審判決)
<プロレスグッズ専門店での強盗事件> 09年2月、千葉県柏市の無職、片石肇(当時28)は他の2人と共謀して東京都千代田区のプロレスグッズ専門店に押し入った。男性店員に暴行を加え、現金15万9000円と、マスク5点などの商品を奪った。

11月6日(金)被告人・多田知信:窃盗、住居侵入(初公判)
<警察寮での窃盗事件> 09年8月、警視庁大森警察署地域課巡査長の多田知信(当時30)は、08年11月に警察寮の同僚の部屋に侵入し、腕時計を盗んだとして逮捕された。


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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