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2009年4月20日

元AV女優の覚せい剤使用と純愛

 ちょいと宣伝。現在、鉄人社から鉄人ノンフィクションvol.1 001として「北尾トロ責任編集 この裁判がすごい」というムック本が発売されています。佐木隆三さんや北尾トロさんや長嶺超輝さんなどによる傍聴記だけでなく、熊本典道元裁判官のインタビューや法廷画家の染谷栄さんのインタビュー記事も載っています。

 これはかなり読み応えのある本ですね。俺も3つだけ執筆してますんで、興味のある人はぜひ。
 さて、今回は4月15日に行われた菊地有紗被告人(逮捕当時23)の裁判傍聴記。罪名は覚せい剤取締法違反。元AV女優ということで大きく報じられた事件ですね。

 報道によると、1月初旬ころ、覚せい剤を使用した疑いがもたれ任意提出した尿から覚せい剤の陽性反応が出たため、2月9日に逮捕された。昨年10月、交際相手のプロテニス選手ととともに覚せい剤や大麻を所持したとして逮捕され、懲役1年6月執行猶予3年の判決を受けたばかりだった。

 倖田梨紗の芸名で、AV女優・タレントとして活動し、男性タレントとの熱愛の報道もあった被告人も、今回で2度目の裁判です。しかも、前回の判決からすぐに再犯とは呆れてしまいますね。
 起訴されたのは、今年の1月5日、赤坂にある女性宅で、被告人がフェニルアミノプロパン若干量を気化して吸引したという内容。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は覚せい剤を常用している女友達の家で、去年の12月に再び覚せい剤を使用したとのこと。
 起訴されたのは今年1月の件なんだけど、実際は判決から1カ月もたたずに、覚せい剤に手を出していたようですね。有罪判決受けて、覚せい剤常用者と付き合いがあるってことが、問題のような。法廷には、被告人の婚約者である塗装工の男性が証人として出廷です。

asozan090420.jpg

 弁護人 「被告人と知り合ったのは?」
 証人 「16歳の時です」
 弁護人 「どういう関係で知り合ったんですか?」
 証人 「(被告人が)中学の後輩として。その時も付き合ってたんですか、1年で別れました」
 弁護人 「再び交際することになったのはいつなんですか?」
 証人 「昨年の12月からです」

 どうやら、裁判のニュースを見て“何かできることはないか”と思い、連絡先を調べて、再び連絡を取るようになったらしい。元カレとして、心配だったんでしょう。それで今は家族ぐるみの付き合いをしているとのこと。

 弁護人 「結婚については?」
 証人 「僕から結婚しようと言いました」
 弁護人 「長時間(刑務所に)収容される可能性もありますけど」
 証人 「彼女が出てくるまで(薬物依存治療)センターに通って、周りや家族の対応を勉強します」
 弁護人 「そうですか。被告人が、また薬物に手を出したのはなぜだと考えますか?」
 証人 「彼女が派手な仕事していて、そこから普通の生活に戻り、喪失感があったと思います。今後は家族で協力して支えていきます!」
 弁護人 「支えていくって具体的にはどういうことですか?」
 証人 「幸せな家庭を築いていくことです」

 と、結婚することを改めて宣言。そして、

 弁護人 「本件は、新聞や雑誌に載りましたね」
 証人 「雑誌の記者が、被告人の実家を訪れて、おばあちゃんにうそをついて、(話を聞きだし)記事にしたこともありましたよね。そういう記者が裁判を傍聴して記事にされる可能性ももありますが、それでも証人として出廷しようと」
 証人 「僕は彼女のために生きたいと思っているので、出ました」

 と、被告人の支えになることを約束していました。
 そんな固い決意をしている婚約者の発言を聞いて、被告人はハンカチで涙をぬぐいっぱなし。
 続いて、被告人質問。まずは、弁護人から。

 弁護人 「判決後の生活は?」
 被告人 「実家で家事をしていました」
 弁護人 「Aさん方(現場のマンション)へ行ったのはなぜですか?」
 被告人 「弱音を吐ける友人、前の仕事の名前を気にせず会ってくれる、唯一の親友だったので会いに行きました」
 弁護人 「Aさんが覚せい剤使用者なのは知ってました?」
 被告人 「はい」
 弁護人 「共通の知人から連絡があって、会った、と」
 被告人 「覚せい剤を使っている人と会うのは、と、断りましたが、その知人から“Aちゃんは覚せい剤やめているから大丈夫だ”と言われて、会いたい気持ちが強くなりました」

 これが、現場へ行った理由です。

 弁護人 「Aさんの家に行ったのはいつですか?」
 被告人 「(去年の)12月後半ごろです」
 弁護人 「その時、覚せい剤は吸ったんですか?」
 被告人 「吸ってません。DVD観たり、飼ってるワンちゃんと遊んだり」
 弁護人 「次に行ったのはいつですか?」
 被告人 「12月25日ごろです。この日は、DVD観たり、話したり、ワンちゃんと遊んでたりしてたんですが、気づいたら彼女は覚せい剤を吸ってました」
 弁護人 「それを見て?」
 被告人 「頭(の中)が真っ白になりました」
 被告人 「止めるべきだったんですけど、DVD観たり、彼女の方を見ないようにしていました」
 弁護人 「それで彼女は?」
 被告人 「“執行猶予の人の前でごめんね”って」

 親友に気を遣った言葉が“執行猶予の人の前でごめんね”か。かなり、ショックな一言ですね。

 弁護人 「それであなたはどうしました?」
 被告人 「玄関で靴を履いて帰るときに吸いたい気持ちが出てきて“一口吸わせて”と言うと、玄関のところまで持ってきてくれました」
 弁護人 「覚せい剤吸ってるとき、どんな気持ちでした?」
 被告人 「家族のことが思い出されて」

 と、終始涙声だった被告人が、さらに涙声に。

 弁護人 「なぜ、手を出したと思います?」
 被告人 「19歳から忙しく仕事をしてきたんですけど、仕事を辞めたときに何も亡くなって、喪失感だと思います」


 と、証人が述べた理由と、同様の答えを言ったあと、

 弁護人 「今後はどうしていきたいですか?」
 被告人 「結婚して、子供を産んで、大切な家族に子供を抱いてもらえるように、強くなりたいと思います」

 と、先ほどの証人と結婚する意志を述べて、質問終了です。
 次は検察官からの質問です。

 検察官 「前回の裁判のあと、覚せい剤を使用したのは何回?」
 被告人 「3回です」

 12月25日(頃)に再び手を出してからは12月30日、そして、本件の1月5日と3回使用していたと正直に告白です。

 検察官 「1月5日は吸いたくて(A氏宅へ)行ったんですか?」
 被告人 「吸いたい気持ちもありました」
 検察官 「覚せい剤はタダだったの?」
 被告人 「私が“5000円渡そうか”って言ったんですけど、Aちゃんが“いらない”って」

 この友人の間違った気遣いって。
 最後は、裁判官から、

 裁判官 「今後、Aさんとはどうするんですか?」
 被告人 「いや、もう、唯一の親友とは思っていませんし」
 裁判官 「薬物は再犯する人が多いんですけど、あなたの場合は、前刑の判決からかなり早い方ですが、本当にやめられるんですか?」
 被告人 「自分自身ではどうにもならないんですが、周りの力を借りて、自分でも負けないように頑張りたいと思います」

 と、周りの協力のもと、更正していくと誓って、質問終了。
 この後、検察官が懲役2年を求刑して、被告人の最終陳述です。
 被告人 「こうなってしまった私に支えてくれる家族がいること、反省する場所を与えてくれたことを感謝します」

 と、述べて閉廷でした。
 こういう裁判を傍聴すると、違法薬物の事件に被害者が存在しないってのは、大間違いなのがわかりますね。周りに人がどれだけ大変か。中毒性の高い薬物に関しては、被告人の意志だけでは再犯を防げないのかもしれません。
 薬物に手を出したことで多くのものを失う人が多い中、被告人は人生の伴侶を見つけたんだから、運がいいとしか言いようがない。
 前刑時の彼氏だったテニスプレーヤー、本件の女友達、そして、婚約者。出会いによって、人生は大きく変わるもんなんだなぁ。

※写真は菊地有紗被告人(共同)

注目の裁判

11月24日(火)被告人・秋山直紀:所得税法違反
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月24日(火)被告人・芳賀吉孝、小野克巳、五郎川弘之、他2人:わいせつ図画販売・頒布
<わいせつDVD販売を手助けした事件> 08年3月、アダルトDVD業界最大手の自主審査機関「日本ビデオ倫理協会」が、作品の審査基準を甘くして、わいせつDVDの販売を手助けしたとして、審査部統括部長小野克巳(当時51)らを逮捕した。

11月24日(火)被告人・板垣宏 十亀弘史 須賀武敏:爆発物取締罰則違反
<迎賓館などにロケット弾が発射された事件> 1986年に迎賓館などにロケット弾が発射したとして、中核派の須賀武敏、十亀弘史、板垣宏が逮捕された。1審では証拠不十分で全員が無罪とされたが、2審では無罪判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。上告審も2審判決を支持し、1審に差し戻された。

11月24日(火)被告人・松田真知:銃刀法違反など(控訴審初公判)
<大量の拳銃や実弾を密輸した事件> 06年1月、指定暴力団稲川会系松田組組長、松田真知は幹部の後藤広一らと共謀して拳銃11丁、実弾220発などを密輸したとして逮捕された。1審で無期懲役、罰金400万円(求刑無期懲役、罰金500万円)を言い渡された。

11月25日(水)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。

11月25日(水)被告人・竹田慶介:公然わいせつ(初公判)
<路上で下半身を露出した事件> 09年10月、東京都豊島区の学習塾経営、竹田慶介(当時27)は同年9月に同区内の路上でズボンを降ろして下半身を露出し男子中学生3人に見せたとして逮捕された。

11月25日(水)被告人・小川俊之:爆発物取締罰則違反(控訴審判決)
<皇居に向かって火薬を詰めた消火器を発射した事件> 08年9月、神奈川県相模原市の元陸上自衛隊員の小川俊之(当時34)が、火薬を詰めた消火器を皇居に向けて発射したとして、逮捕された。

11月26日(木)被告人・原田久:威力業務妨害(初公判)
<サラ金の業務を妨害した事件> 09年10月、愛知県岡崎市の無職、原田久(当時38)は、消費者金融「レイク」のコールセンターに約500回電話をかけ、女性オペレーターにひわいな言葉をかけたとして逮捕された。女性の体の一部を表す言葉などをかけて業務を妨害したという。

11月26日(木)被告人・小川美津子、他2人:昏睡(こんすい)強盗と保護責任者遺棄(初公判)
<スナック経営者による昏睡強盗事件> 09年2月、東京都渋谷区のスナック経営、小川美津子(当時73)ら男女4人は、スナックで男性客に酒を飲ませて泥酔させ、キャッシュカードを盗んで路上に放置したなどとして逮捕された。

11月26日(木)被告人・松原弘樹:強盗(初公判)
<自衛隊員による強盗事件> 09年9月、陸上自衛隊第1空挺団(千葉県船橋市)の陸士長松原弘樹(当時21)らは、東京・六本木のビル敷地内で飲食店従業員男性(当時22)を倒し、顔を殴るなどして現金約13万円入りの財布を奪ったとして逮捕された。

11月26日(木)被告人・植本勝也、井福一郎、他1人:児童買春・ポルノ処罰法違反(初公判)
<暴力団員らによる児童ポルノ販売事件> 09年9月、大阪府守口市の指定暴力団山口組系暴力団組長井福一郎(当時61)と大阪市西淀川区の無職植本勝也(当時43)は、インターネットで児童ポルノのDVDを販売したとして逮捕された。

11月27日(金)被告人・波和二:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。

11月27日(金)被告人・高相祐一:覚せい剤取締法違反(所持、使用)(判決)
<酒井法子の夫の覚せい剤事件> 09年8月、自称プロサーファーで、女優酒井法子の夫、高相祐一(当時41)は、東京都渋谷区の路上で覚せい剤を所持していたとして逮捕された。

11月27日(金)被告人・和田達夫、嘉藤悦男:背任(初公判)
<理化学研究所をめぐる汚職事件> 09年9月、独立行政法人「理化学研究所」(理研、埼玉県和光市)の主任研究員、和田達夫(当時53)は、取引先の理化学器具開発販売会社「秋葉産業」の社長、嘉藤悦男(当時76)から旅行や飲食費などの代金付け回しを受け、その穴埋めに架空発注を行ったとして逮捕された。


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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