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2008年12月01日

釣ったパンティー500枚、職人芸3メートルの釣り竿

 先週は、裁判員候補者通知が送付されました。それで驚いたのが、NHKと日本テレビのニュース。なんと通知が届いた人のインタビューを放送してたんですよ。顔は映さずに、音声は変えて(日テレは声変えず)の放送だったけど。

 NHKと日テレの報道は、どうやってこの人たちを探し出したんだろ? 通知が届いたことを公にするのは禁止で、上司や家庭に話すまでならOKってことだから、インタビューに答えてた人はテレビ局で働いている人の関係者なんでしょうね。
 仮に候補者がテレビ局に連絡したとしても、公にした時の罰則は存在しないから、何のお咎(とが)めもないんだけどさ。年末ジャンボ宝くじで70万本ある1万円の5等ですら簡単に当たらないのに、29万5036人しかいない裁判員候補者に選ばれたら、しゃべりたくもなるでしょうね。

 ちなみに俺は、ドキドキしながら郵便受けを開けたら、ピザ屋と不用品回収のチラシしか入ってませんでした。
 最高裁に電話で問い合わせたら、候補者に選ばれていないことを公表するのは問題ないらしい。となると、選ばれてない人が全員表明したら、候補者がわかってしまうんだけど。今後も守秘義務や情報漏洩に関しては、ひと悶着ありそうですね。

 さて、今回は、11月27日に東京地裁で行われた日野彰被告人(51)の裁判傍聴記。罪名は窃盗。
 ベランダに干してあった女性用下着を釣り竿で盗んだという、変わった事件です。逮捕のきっかけは今年9月に東京・豊島区の民家の2階ベランダに干してあった下着1枚をトラック運転手の日野被告人が盗んだというもの。2階にいた住民が釣り竿が下から伸びてきて、下着が盗まれるのを目撃し、日野が自転車で逃げたため、110番通報されて逮捕されたというものです。

 3メートル近くまで伸びる釣り竿の先端に、下着を引っかけるための釘を刺し、盗みに使っていたというから驚きで、自宅から女性用下着約500枚が見つかっており、「18歳ごろから盗んでいた。おもにコインランドリーから盗んだ」と供述したと伝えられた。

 たった1枚の下着ドロボーなんだけど、30年以上も盗みを続け、自宅に500枚所持していて、自作の釣り竿使用というわけで、事件の特異性が際立っており、大きく報じられたのでご存知の方も多いでしょう。

 起訴されたのは、3つ。1つ目は、9月23日15時24分、豊島区の民家の2階ベランダからパンティー(800円相当)を釣り竿を使って盗んだという、報道された件。
 2つ目は、8月3日ごろ、豊島区のマンションの2回ベランダから、パンティー2枚(400円相当)を釣り竿を使って盗んだ件。
 3つ目は、9月7日ころ、8月3日の件と同じベランダからパンティー4枚(800円相当)を同じ手口で盗んだという件。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は前科2犯・前歴2件。最終前科は平成2年で、最終前歴は平成18年。被告人は17歳のころ、交際していた女性と肉体関係をもったが、女性の裸体よりも恥部を隠すパンティーに興味があることに気付いたという。その後、就職し結婚もしたが、平成9年に離婚。離婚後は、週に1度のペースでコインランドリーから、パンティーを盗んでいたとのこと。
 フィリピンの女性と再婚後、平成17年頃にお笑いのTV番組を真似て、釣り竿の先端に釘5本をビニールテープで巻きつけ、盗みに使う釣り竿をつくった。

 平成18年1月には、マンション敷地内の物陰に隠れて、パンティーを並べていたところ、通報されて逮捕。その時に所持していた釘をつけた釣り竿と自宅にあったパンティー281枚が押収されている。
 そして、本件逮捕では、釘をつけた釣り竿と自宅にあったパンティー500枚が押収された。
 取り調べに対し、被告人は「(干してある被害者の)パンツを見つけて、どうしても取りたいと思い、自宅に戻って道具を持って現場に向かった」と、事件のことについて述べているらしい。他には、「人には理解できないと思いますが、自宅でハンガーに女性用のパンツをかけて、釣り竿で引っかけて取り、その時のドキドキ感を楽しんでいた。自宅では物足りなくなり、本物を盗りたいと思った」と、動機について述べているとのこと。

asozan081201.jpg

 女性用の下着を盗むってこと自体理解し難いのに、自宅でハンガーに掛けて釣り竿で引っ張って盗るのが楽しみといわれると、変態の中でもちょっと異端でしょうね。
 奥さんと子供はフィリピンにいるというわけで、情状証人はなくすぐに被告人質問。まずは、弁護人から。

 弁護人 「結婚してフィリピンにいたけど、あまり稼げないので、日本に戻ってきてたと」
 被告人 「はい」
 弁護人 「いくら仕送りしてました?」
 被告人 「月に20万円です」
 弁護人 「奥さんと子供に会いたいという気持ちは強いですか?」
 被告人 「強いです」
 弁護人 「その寂しさを紛らすためにやってしまった?」
 被告人 「…すべては自分の反省が足りなかったと思っています」

 反省文を提出しているためか、事件に直接関係のあることを避けるような質問に終始して、情状面のアピールだけで、質問は終了。次は、検察官から。

 検察官 「釣り竿に細工までしてね、パンティーに対する執拗な想いはわかるんだけど、お笑い番組でそういう場面があって作ったってことで間違いないの?」
 被告人 「はい」
 検察官 「起訴されなかったけど、平成18年に捕まった時、釣り竿持ってたでしょ。今回使ったのは、その時と同じ物?」
 被告人 「違います」
 検察官 「ん? じゃ、本件のは何代目?」
 被告人 「2本作って(押収されなかった)もう1本の方です」
 検察官 「押収されずに1本残ってたわけか。いつごろ作ったの?」
 被告人 「捕まる半年前くらいです」
 検察官 「平成17年の夏ごろか」

 3年前のバラエティー番組をチェックすれば、釣り竿を使った下着ドロボーの場面があるんでしょうね。状況から考えて、コント番組のような気もするけど。

 検察官 「前回の逮捕で281枚のパンティーが押収されて、今回が500枚押収されてるでしょ。平成9年から下着ドロボーを始めたって取り調べで言ってるけど、それなの?」
 被告人 「はい。全部コインランドリーで」
 検察官 「なんで、前回の逮捕で500枚は押収されてないの?」
 被告人 「押収されたのは気に入ったやつだったので、部屋の中にあったんです。500枚は捨てようと思って、ゴミ袋に入れて、アパートの住民が使う物置に置いてたんです。(今回の)釣り竿もそこに置いてました」

 どうやら、前回逮捕での家宅捜査が適当だったのか、押収された下着と釣り竿は、被告人が持ってる一部にすぎなかったんですね。

 検察官 「捨てるつもりって言っても、今回はあなたの部屋の押し入れから見つかってるでしょ。3つのゴミ袋に入って。1年半以上も持ってたんだから、捨てようと思ったなんて理屈はないでしょう」
 被告人 「…はい…」
 検察官 「だいたい自分からね、ここにもありますって言わない時点でですね、盗むつもりがあったんじゃないの? ホントに他にやってない?」

 と、自然な流れで余罪の有無を聞きました。すると、驚きの返答です。

 被告人 「自宅からハンガーと下着を持って行って、釣り竿で取ることはしましたけど」
 検察官 「ん? 何のためにそんなことするの?」

 住居侵入の可能性があるのは置いといて、ハンガーと下着を自分で用意して、他人の家のベランダでパンティー釣りすることの意味不明さにさすがの検察官も困惑していました。

 検察官 「パンティーに興味があって、ベランダから盗るって方がスムーズだと思うんだけど、釣り竿じゃないとだめなの?」
 被告人 「違う楽しみが」

 と、正直に自分の趣味嗜好を述べたところで質問は終了。
 最後は裁判官からの質問です。

 裁判官 「前回の逮捕で釣り竿が押収されてないのは?」
 被告人 「外にあったので」
 裁判官 「その釣り竿を捨てなかったのは?」
 被告人 「また使おうってわけじゃなくて、そのまま置いていただけで」
 裁判官 「やめる決心があったとは思えないんだけど」
 被告人 「そう思われても仕方ないと思います」
 裁判官 「平成18年に捕まってもダメなんだから、またやめられないんじゃないかって思うけど」
 被告人 「すべてを甘く見てて、多くの人を裏切って、被害者の方々には大変申し訳ないことをしたと思っています。心を入れ替えて、(再犯しないと)信じていただきたいと思います。仕事も、失って…」

 と、反省の弁を述べると、裁判官はさびしげな声でポツリと一言。
 裁判官 「仕送りがなくなれば、家族がダメになるってわかったでしょ」
 被告人 「…はい…」

 と涙声で答えて、質問終了でした。裁判官は被告人を泣かせるツボを知ってるねぇ。
 この後、検察官が懲役2年6月を求刑して閉廷でした。それにしても、下着ドロボーと言っても、いろんな手口があるもんだ。釣りキチ三平が「釣り竿をそんなことに使うな」と怒り出しそうな事件ですね。

※盗まれた500枚の下着を並べるとこんな感じなのか(写真は共同通信、本文と関係ありません)

注目の裁判

11月2日(月)被告人・氏家信子:殺人ほか(判決)
<息子を殺害した事件> 09年1月、東京都大田区の無職氏家信子(当時65)は傷害を持つ双子の息子に包丁で切りつけた。弟は病院で死亡が確認された。

11月2日(月)被告人・秋山直紀:所得税法違反(初公判)
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・竹林守、成田茂之、他1人:公職選挙法違反(詐欺登録・詐欺投票)(初公判)
<従業員の住民登録を移し投票を支持した事件> 09年9月、機械製造販売会社「水戸工業」の社長・成田茂之(当時57)らは自社の従業員の住民登録の場所を変更させ、衆議院議員選挙で自民党に投票するよう指示したとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・熊谷智幸:強制わいせつと偽造私印使用(初公判)
<テレビ局員を装ってわいせつ行為をした事件> 09年8月、インターネット広告会社役員、熊谷智幸(当時35)は、東京都板橋区内の路上で30代の女性にフジテレビの社員を装った偽の名刺を手渡して声をかけ、近くのマンションのエントランスまで連れて行き、わいせつな行為をした疑いで逮捕された。

11月2日(月)被告人・押尾学:麻薬取締法違反(使用)(判決)
<俳優による麻薬事件> 09年8月、東京・六本木のマンションで女性が死亡していると119番通報があり、部屋に出入りしていたとして俳優の押尾学(当時31)が任意で事情聴取を受けた。任意の尿検査で、合成麻薬のMDMAに陽性反応が出たため麻薬取締法違反(使用)の疑いで逮捕された。

11月4、5、6日(水、木、金)被告人・太田周作:殺人未遂(初公判)
(初公判、5日6日も) <駅のホームから女性を突き落とした事件> 09年3月、無職太田周作(当時24)は、JR東京駅で女性(当時60)をホームから突き落とし、電車に接触して負傷させたとして、殺人未遂で逮捕された。取調べに対して「(事件を起こすのは)どこでも、誰でもよかった」などと供述した。

11月5日(木)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。

11月5日(木)被告人・中田静子 ほか1名:昏睡強盗、窃盗
<スナック客に対する昏睡強盗> 09年3月、バー経営の中田静子(当時62)はスナック経営の細江敏光(当時39)と共謀、スナックで男性客に強い酒を飲ませて昏睡状態にさせ、キャッシュカードを奪って現金自動預払機から金を引き出したとして逮捕された。

11月6日(金)被告人・波和二ほか:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。

11月6日(金)被告人・片石肇:強盗傷害(控訴審判決)
<プロレスグッズ専門店での強盗事件> 09年2月、千葉県柏市の無職、片石肇(当時28)は他の2人と共謀して東京都千代田区のプロレスグッズ専門店に押し入った。男性店員に暴行を加え、現金15万9000円と、マスク5点などの商品を奪った。

11月6日(金)被告人・多田知信:窃盗、住居侵入(初公判)
<警察寮での窃盗事件> 09年8月、警視庁大森警察署地域課巡査長の多田知信(当時30)は、08年11月に警察寮の同僚の部屋に侵入し、腕時計を盗んだとして逮捕された。


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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