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2008年11月10日

それでも「酒をやめる」と言えない?

 毎年、世相を反映させた女性用下着を発表する「トリンプ・インターナショナル・ジャパン」が今年発表した下着がすごい! その名も「裁判員ブラ」ですよ。

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 正義の女神・テーミス像が手に持っている天秤をイメージしたブラジャーで、左右の金色のカップがチェーンでつながっていなす。どうやら、カップを皿代りに天秤としても使えるようになっているらしい。さらに、カップの内側には「有罪」「無罪」をイメージした白黒リバーシブルパッド付き。

 ショーツのお尻の部分には「平等」の文字が書いてあって、裁判員としての心構えを表現しているようです。驚かされるのは、セットの巻きスカートがシルクを使っているってこと。裁判官が着る法衣と同じ素材ですよ。凝ってるなぁ。
 これは非売品なんだけど、今後は裁判員の便乗商品とか便乗商売なんてのも出てくるんだろうなぁ。 
 さて、今回は11月4日に行われた新藤洋子被告人(51)の裁判傍聴記。罪名は業務妨害。
 報道によると、新藤は9月7日午後9時15分頃、目黒区にある元夫(56)が住むマンションの住所を告げて「火事みたいなんです。8階建ての6階です」とウソの110番をし、警視庁から連絡を受けた東京消防庁に消防車14台などを出動させ、業務を妨害した疑いで逮捕された。
 目黒署によると、新藤は昨年離婚しており、「元夫との関係でむしゃくしゃして110番した。酒を飲んでいて、内容は覚えていない」と供述したという。自分の携帯電話を使って通報したため、新藤が浮上し逮捕につながったそうだ。

 別れた夫に迷惑をかけようと思ったら、消防庁が一番迷惑を被ったという事件。先週の傍聴記(「必殺仕事人の秀さんのように…って」参照)  起訴された内容は、9月7日21時15分、被告人が自分のケータイで「火事みたいです。マンションの6階がボヤみたいです」と虚偽通報し、計17台の消防車が出動して、消防署員71名に徒労の業務をさせたというもの。

 報道された内容より被害が大きいようですね。っていうか、マンションが火事になると71人もの消防署員が駆り出されるとは。皆さん、火のもとにはくれぐれもご注意を。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は去年の8月に離婚したという。そして、犯行当日。被告人は元夫と会う約束をしていたが、元夫から「テニスで腰が痛いので」と連絡があり、会うことを断られる。
 しかし、被告人は13時30分ごろ、酒を買い込んで元夫宅を訪れ、2人で仲良く飲酒していたとのこと。

 泥酔した被告人は、元夫に「今日は泊めてくれ」と頼むが断られ、部屋を追い出される。被告人は部屋に入れてくれるよう玄関のドアを何度も叩き始める。元夫は「これ以上暴れると警察を呼ぶぞ」と言ったが、被告人が暴れるのをやめなかったため、近所迷惑になるこも考え、110番通報をした。そのころ、被告人も110番に、虚偽通報。駆け付けた警察に逮捕された。というのが事件の詳細です。

 元夫が110番通報したのを聞いて、被告人も通報したのかは定かじゃないけど、ドア越しに2人が偶然110番通報してたとしたら、余程気の合う2人ですね。
 そして、被告人質問。まずは、弁護人から

 弁護人 「去年の8月13日に離婚届けを出した理由はなんですか」
 被告人 「いきなり出されたので何が何だか」
 弁護人 「でも、離婚後も会ってたんですよね」
 被告人 「週に2~3回会って、食事したり酒飲んだり」

 会い過ぎでしょっていうか、絶対に仲いいと思うんだけど。遠距離恋愛とかお互い忙しいカップルとか、こんなに会ってないでしょ。別れて1年の2人が、週に3回も酒飲んでるって。

 弁護人 「犯行当日ですが、もともとは元夫の誘いで会うことになってたんですよね」
 被告人 「夕方に渋谷で会う予定でしたが、腰を痛めたという話でお見舞いがてらに自宅へ」
 弁護人 「あなたはお酒を持って、元夫宅へ行ったと。何時から飲酒してたんですか?」
 被告人 「16時過ぎから」
 弁護人 「いろいろと元夫に言ってたようなんですが、何か不満ありました?」
 被告人 「(部屋の中に)結婚してた時の家具があって、離婚してなければ幸せな暮らしをしてたんじゃないかなと」

 話しぶりからして、元夫宅へは初めて訪れたんじゃないかと思われます。それで昔使ってた家具なんかを見て、複雑な思いが駆け巡ったのではないでしょうか。

 弁護人 「ビール飲んで、日本酒2本目までの記憶はあるということなんですよね」
 被告人 「はい」
 弁護人 「その後、シャワーを浴びた記憶は?」
 被告人 「さっぱりないです」
 弁護人 「生活費をもっとくれと言ったのは?」
 被告人 「覚えていません」
 弁護人 「Tシャツ借りたのは?」
 被告人 「それは覚えています」
 弁護人 「外に出された記憶は?」
 被告人 「全くありません」

 どれだけ飲んだのかなはっきりしないんだけど、記憶を失うほど飲んだのは間違いないようです。

 弁護人 「じゃあ、今後お酒は?」
 被告人 「極力飲まないようにします」

 極力って。ここはきっぱり断酒宣言しといた方がいいと思うのだが。
 次は、検察官からの質問。

 検察官 「(起訴されていないが)以前にも救急車を呼んだことがあると」
 被告人 「…はい…」
 検察官 「その時のことも覚えてないんですか?」
 被告人 「はい…」
 検察官 「それはその時も酒を飲んでたから?」
 被告人 「はい…」
 検察官 「それで本件の犯行も覚えていないと」
 被告人 「…はい…」
 検察官 「覚えてないことを反省しようがないですよね」
 被告人 「いえ。弁護人とかから聞いて大変なことをやってしまったと思ってますので」

 被告人としては申し訳ないことをしたと反省はしているようです。しかし、犯行は飲酒のせいで覚えていないと。そうなると検察官の質問は1つです。

 検察官 「酒は止めない?」
 被告人 「……」

 10数秒考えて、出た答えが、
 被告人 「…極力…」

 やっぱり少しは飲みたいようです。ま、口先「やめます」というよりは正直だけど。

 検察官 「酒はやめない。なのに再犯しないと言えるんですか?」
 被告人 「…」
 検察官 「答えられない?」
 被告人 「…はい」

 と、再犯の可能性がゼロじゃない空気を残したまま、質問終了。
 最後は裁判官からの質問です。

 裁判官 「ほんとに記憶が全くないんですか?」
 被告人 「はい」
 裁判官 「それではね、極力お酒を控えるって言われても、お酒を飲んだら周りの人に迷惑をかけることになるんじゃないですか?」

 やっぱり、裁判官の「極力」に引っ掛かっているようです。すると、被告人は、

 被告人 「お酒は……やめる」
 と、やっと断酒宣言です。この発言に満足したのか、質問はこれで終了。
 このあと、検察官が懲役1年を求刑して閉廷でした。
 犯行の原因が酒なのは間違いないんだから、飲まないように説得するのは当然なんだけど、本件の被害者は71人の消防隊員でしょ。誰もそのことを質問してないんだよね。訊き忘れか?
※写真は話題の「裁判員制度ブラ」

注目の裁判

11月2日(月)被告人・氏家信子:殺人ほか(判決)
<息子を殺害した事件> 09年1月、東京都大田区の無職氏家信子(当時65)は傷害を持つ双子の息子に包丁で切りつけた。弟は病院で死亡が確認された。

11月2日(月)被告人・秋山直紀:所得税法違反(初公判)
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・竹林守、成田茂之、他1人:公職選挙法違反(詐欺登録・詐欺投票)(初公判)
<従業員の住民登録を移し投票を支持した事件> 09年9月、機械製造販売会社「水戸工業」の社長・成田茂之(当時57)らは自社の従業員の住民登録の場所を変更させ、衆議院議員選挙で自民党に投票するよう指示したとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・熊谷智幸:強制わいせつと偽造私印使用(初公判)
<テレビ局員を装ってわいせつ行為をした事件> 09年8月、インターネット広告会社役員、熊谷智幸(当時35)は、東京都板橋区内の路上で30代の女性にフジテレビの社員を装った偽の名刺を手渡して声をかけ、近くのマンションのエントランスまで連れて行き、わいせつな行為をした疑いで逮捕された。

11月2日(月)被告人・押尾学:麻薬取締法違反(使用)(判決)
<俳優による麻薬事件> 09年8月、東京・六本木のマンションで女性が死亡していると119番通報があり、部屋に出入りしていたとして俳優の押尾学(当時31)が任意で事情聴取を受けた。任意の尿検査で、合成麻薬のMDMAに陽性反応が出たため麻薬取締法違反(使用)の疑いで逮捕された。

11月4、5、6日(水、木、金)被告人・太田周作:殺人未遂(初公判)
(初公判、5日6日も) <駅のホームから女性を突き落とした事件> 09年3月、無職太田周作(当時24)は、JR東京駅で女性(当時60)をホームから突き落とし、電車に接触して負傷させたとして、殺人未遂で逮捕された。取調べに対して「(事件を起こすのは)どこでも、誰でもよかった」などと供述した。

11月5日(木)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。

11月5日(木)被告人・中田静子 ほか1名:昏睡強盗、窃盗
<スナック客に対する昏睡強盗> 09年3月、バー経営の中田静子(当時62)はスナック経営の細江敏光(当時39)と共謀、スナックで男性客に強い酒を飲ませて昏睡状態にさせ、キャッシュカードを奪って現金自動預払機から金を引き出したとして逮捕された。

11月6日(金)被告人・波和二ほか:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。

11月6日(金)被告人・片石肇:強盗傷害(控訴審判決)
<プロレスグッズ専門店での強盗事件> 09年2月、千葉県柏市の無職、片石肇(当時28)は他の2人と共謀して東京都千代田区のプロレスグッズ専門店に押し入った。男性店員に暴行を加え、現金15万9000円と、マスク5点などの商品を奪った。

11月6日(金)被告人・多田知信:窃盗、住居侵入(初公判)
<警察寮での窃盗事件> 09年8月、警視庁大森警察署地域課巡査長の多田知信(当時30)は、08年11月に警察寮の同僚の部屋に侵入し、腕時計を盗んだとして逮捕された。


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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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