2008年10月27日
43枚目のプレートは「求刑 懲役8年」
来月発売される「現代用語の基礎知識」の2009年版に「サイバンインコ」が掲載されるらしい。どうでもいい裁判員の地検広報キャラだと思ってたけど、現代人としては知っておかなきゃいけない情報のようです。
それにしても、どこまで知ってるのが常識なんだろうか。九州で発見された珍しいインコで、福岡高検の調査により裁判員制度にとても興味を示すことが判明。お祭りごとが大好きで、自前のハッピを着て、各地のイベントに参加するという、プロフィールしか俺は知らないんだけど、現代人として十分な知識なのかなぁ。これしか知らないのは非常識なのか。

ただひとつ気になるのは、「サイバンインコ」は「ユニークなネーミング」というコーナーに掲載されるってこと。ユニークだとは思えないのだが。
今回は、10月22日に行われた三上家旦(いえあき)被告人(63)の裁判傍聴記。罪名は、現住建造物等放火未遂。
7月の再逮捕時の報道によると、今年2月、三上は東京都港区の芝公園の芝パークホテル5階の自動販売機近くのゴミ箱にタオルを投げ込んで、ライターで火をつけ、廊下や客室など約25平方メートルを燃やした。4人が煙を吸うなどして重軽傷を負い150人を超える宿泊客が避難。三上も出火時に避難誘導されたが、その後姿を消すなど不審な行動をとった。このため警視庁捜査1課で行動を監視していたところ、5月15日、宿泊先の川崎市内のビジネスホテルで同様にゴミ箱に火をつけたことから、現住建造物等放火未遂の疑いで逮捕していた。
亡くなる人が出なかったのが幸いではあるんだけど、放火は重罪。来年だったら、裁判員裁判で審理される事件なのです。
というわけで、検察官の冒頭陳述はパワーポイントを使って、画像を駆使していました。でも、これは今では当たり前のやりかた。この裁判では、もう1つの新たなやり方が試されていたんです。それはホワイトボード。冒頭陳述を朗読しながらポイントとなる部分でマグネットの細いプレートをペタペタ貼り付けていくんです。「4名負傷」とか「厳重処罰希望」と書かれたプレートを貼りながら、授業をやるように事件の説明をしていました。
パワーポイントだけだと次々と場面が変わっていくけど、ホワイトボードにマグネットを貼りつけていくと、ずっと残ったままなので、わかりやすくて見やすい。今までの冒頭陳述で一番のやり方なんじゃないかと思われます。今後もこの方法が増えればいいのだけど。
そんなわかりやすい検察官の冒頭陳述によると、被告人は10年ほど前に脳梗塞になり、その後遺症で左半身が不自由であるらしい。そして、被告人は、リハビリに行くため、ホテルによく宿泊していた。去年の年末ごろには眠れず、いら立ちを募らせていたという。
07年12月21日には、川崎市内のホテルでゴミ箱に放火。さらに、08年1月18日には、品川区内のホテルでもゴミ箱に放火していたとのこと。
そして、1つ目の起訴事実である事件。08年2月15日午前1時30分、被告人は芝パークホテルの5階自販機コーナーのゴミ箱に、タオルや紙おむつを入れ、さらに火のついたティッシュを投入。ホテル側は2億円近い損害が発生しているという。
この火災後、警視庁が捜査を開始したところ、過去3つの火災があったホテルに、被告人が宿泊していたことが判明。5月15日、川崎市内のビジネスホテルに被告人が宿泊する情報を得た捜査員は、ホテルの許可を得て、自販機コーナーにビデオカメラを設置。
すると、被告人はカメラを仕掛けたところにあるゴミ箱に、ウッドチップや油紙を捨て、火のついたろうそくを投げ入れた。その火は、張り込み中の捜査員によって、5分後に消火された。これが事件の詳細です。
この裁判は公判整理手続きがとられているので、争点は被告人の責任能力の有無の1点です。これに対し、検察官は、精神科の通院歴がないこと、燃え上がらせる工夫をしていること、避難経路を確保していることなどを理由に刑事責任はあると主張です。
次は、弁護人の冒頭陳述。
裁判長 「じゃ、次は弁護人の冒頭陳述を」
弁護人 「いや、特に」
裁判長 「あれ? 公判前(整理手続き)では、脳梗塞の件を主張してましたよね?」
弁護人 「えぇ、まぁ」
と、冒頭陳述を行いませんでした。公判前整理手続きをした裁判で、弁護人の冒頭陳述がないなんて初めて見ました。こんなこともあるんですね。たぶん、話の流れから、脳梗塞の後遺症で脳にも何かしらの影響があるって主張したかったんだろうけど。
法廷には会社役員をしている被告人の兄が情状証人として出廷し、被告人の生活状況などを述べていました。
そして、被告人質問。まずは弁護人から。
弁護人 「脳梗塞で最初に入院したのは?」
被告人 「14、5年前」
弁護人 「2回目、再入院したのは覚えていますか?」
被告人 「それから、んーー、10年くらい後」
弁護人 「(本当は)平成11年と16年に入院しているんですけど、症状は?」
被告人 「はっきりしない」
弁護人 「イライラして眠れないのは、去年の秋ごろからでよろしいですか?」
被告人 「はい、そうです」
弁護人 「その前からは、そんなことはなかった?」
被告人 「ないと思います」
犯行の動機である、不眠が始まった時期が明らかになりました。そして、新たな動機も明かされたのです。
弁護人 「取り調べでは脳梗塞になってから、仕事をしなくなり、自宅にこもるようになって、奥さんにいろいろ言われたのが原因と答えられてるようですが」
被告人 「わからないです」
弁護人 「原因ではないと」
被告人 「あったかもしれないけど、はっきりしません」
夫婦間でどんな言い合いがあったのかはわからないんだけど、妻に文句を言われてむしゃくしゃしていたのも、動機の1つのようです。
弁護人 「脳梗塞になってから、物忘れは?」
被告人 「それはあります」
弁護人 「事件のことは覚えてます?記憶は?」
被告人 「あります」
弁護人 「なぜ、してしまったのかは?」
被告人 「なんでこんなことをしてしまったのか」
残念ながら、重要なことは覚えていないようです。
弁護人 「放火したら被害が出ると思いませんでした?」
被告人 「想定していませんでした」
弁護人 「少しは考えると思うんだけど、まったく思い浮かばなかった?」
被告人 「そうです」
弁護人 「どうしてでしょう」
被告人 「頭、狂ってたと思います」
と、やや投げやりにこたえていました。結局弁護人からは、脳梗塞と本件犯行の直接的な影響についての主張がないまま、質問終了。
次は、検察官からの質問です。
検察官 「(取り調べで)従業員やお客さんがあわてて逃げる姿を見ると気が晴れると答えているようですが」
被告人 「一部そういう気持ちもありました」
検察官 「実際、気が晴れました?」
被告人 「晴れませんでした」
他の動機も聞き出した上で、冒陳にそった質問をしていきます。
検察官 「自販機コーナーを狙ったのは?」
被告人 「特にありません」
検察官 「ん? たばこの投げ捨てもあるから、(失火の可能性もあり)ばれないから、と取り調べで答えていませんか?」
被告人 「思ってました」
検察官 「ゴミ箱に足ふきマットやタオルなどを入れたのは、なぜですか?」
被告人 「身近にあったものをとりあえず燃やそうと思って」
検察官 「その方が燃えると」
被告人 「そうです」
検察官 「通院していたのは、食事に関することでしたね。精神科に行ったことは?」
被告人 「ありません」
冒陳の主張を確認した後、脳梗塞の後遺症についての質問です。
検察官 「パチンコ行ったり、サウナ行ったりするのが好きだったようですが、(左半身が不自由なのは)日常生活で不便ありました?」
被告人 「ありません」
検察官 「仕事してなかったんですよね。家で1日何していたの?」
被告人 「ずーーっと1日中テレビつけっぱなし」
検察官 「月に3回、習いごとしてましたね」
被告人 「陶芸やってました」
検察官 「車は?」
被告人 「自分で運転してました」
検察官 「それは障害がある人が運転できるようになってる車ですか?」
被告人 「いや、普通車です」
検察官 「左半身不自由なのはあるけどさ、デスクワークでお兄さんとこで使ってもらうとか、仕事ホントにできないの?」
被告人 「できないんじゃなくて、やろうとしなかったんです」
確かに刑務官に連れられて入廷する時も、左半身がうまく動かせない感じで歩いてきたけど、被告人の話を聞くと、日常生活に支障はなさそうなんだよね。それにもかかわらず、働かないから奥さんに小言を言われてたんじゃないだろうか。
最後は、裁判長からの質問。
裁判長 「奥さんが原因なんですか?」
被告人 「一部はあったと思いますが」
裁判長 「一部というと、他は?」
被告人 「はっきりはわからないです」
そして、何度も面会に来てくれたという奥さんとの今後についての質問です。
裁判長 「夫婦の関係は続けていくんですか?」
被告人 「はい」
裁判長 「でも、奥さんの態度が気に入ってなかったのではないですか?」
被告人 「話し合えば済むことなので」
裁判長 「具体的に何か話しましたか?」
被告人 「これといって、ない」
夫婦仲に関しては、被告人の話から想像するしかないんだけど、そんなに重要な原因のようにも思えないんだよな。
このあと検察官は、冒頭陳述で使用したホワイトボードに「莫大な損害」「惨事にならずは、偶然」「再犯のおそれ大」などのプレートを貼り付け、最後の43枚目に「求刑 懲役8年」と貼り付けていました。
公判整理前手続きの性質上仕方ないのかもしれないけど、ホントの動機も、被害者に対してどんな気持ちを抱いているのかも、そして、脳梗塞の後遺症がどれだけ本件に影響しているのかもすべてにおいてわかりにくかったな。
冒頭陳述だけわかりやすくなるのが、これからの裁判なのかねぇ。
※写真は裁判員制度の広報キャラクター、福岡高検の「サイバンインコ」の着ぐるみを着る鳩山邦夫法相(当時)(共同)
注目の裁判
11月24日(火)被告人・秋山直紀:所得税法違反
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。
11月24日(火)被告人・芳賀吉孝、小野克巳、五郎川弘之、他2人:わいせつ図画販売・頒布
<わいせつDVD販売を手助けした事件> 08年3月、アダルトDVD業界最大手の自主審査機関「日本ビデオ倫理協会」が、作品の審査基準を甘くして、わいせつDVDの販売を手助けしたとして、審査部統括部長小野克巳(当時51)らを逮捕した。
11月24日(火)被告人・板垣宏 十亀弘史 須賀武敏:爆発物取締罰則違反
<迎賓館などにロケット弾が発射された事件> 1986年に迎賓館などにロケット弾が発射したとして、中核派の須賀武敏、十亀弘史、板垣宏が逮捕された。1審では証拠不十分で全員が無罪とされたが、2審では無罪判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。上告審も2審判決を支持し、1審に差し戻された。
11月24日(火)被告人・松田真知:銃刀法違反など(控訴審初公判)
<大量の拳銃や実弾を密輸した事件> 06年1月、指定暴力団稲川会系松田組組長、松田真知は幹部の後藤広一らと共謀して拳銃11丁、実弾220発などを密輸したとして逮捕された。1審で無期懲役、罰金400万円(求刑無期懲役、罰金500万円)を言い渡された。
11月25日(水)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。
11月25日(水)被告人・竹田慶介:公然わいせつ(初公判)
<路上で下半身を露出した事件> 09年10月、東京都豊島区の学習塾経営、竹田慶介(当時27)は同年9月に同区内の路上でズボンを降ろして下半身を露出し男子中学生3人に見せたとして逮捕された。
11月25日(水)被告人・小川俊之:爆発物取締罰則違反(控訴審判決)
<皇居に向かって火薬を詰めた消火器を発射した事件> 08年9月、神奈川県相模原市の元陸上自衛隊員の小川俊之(当時34)が、火薬を詰めた消火器を皇居に向けて発射したとして、逮捕された。
11月26日(木)被告人・原田久:威力業務妨害(初公判)
<サラ金の業務を妨害した事件> 09年10月、愛知県岡崎市の無職、原田久(当時38)は、消費者金融「レイク」のコールセンターに約500回電話をかけ、女性オペレーターにひわいな言葉をかけたとして逮捕された。女性の体の一部を表す言葉などをかけて業務を妨害したという。
11月26日(木)被告人・小川美津子、他2人:昏睡(こんすい)強盗と保護責任者遺棄(初公判)
<スナック経営者による昏睡強盗事件> 09年2月、東京都渋谷区のスナック経営、小川美津子(当時73)ら男女4人は、スナックで男性客に酒を飲ませて泥酔させ、キャッシュカードを盗んで路上に放置したなどとして逮捕された。
11月26日(木)被告人・松原弘樹:強盗(初公判)
<自衛隊員による強盗事件> 09年9月、陸上自衛隊第1空挺団(千葉県船橋市)の陸士長松原弘樹(当時21)らは、東京・六本木のビル敷地内で飲食店従業員男性(当時22)を倒し、顔を殴るなどして現金約13万円入りの財布を奪ったとして逮捕された。
11月26日(木)被告人・植本勝也、井福一郎、他1人:児童買春・ポルノ処罰法違反(初公判)
<暴力団員らによる児童ポルノ販売事件> 09年9月、大阪府守口市の指定暴力団山口組系暴力団組長井福一郎(当時61)と大阪市西淀川区の無職植本勝也(当時43)は、インターネットで児童ポルノのDVDを販売したとして逮捕された。
11月27日(金)被告人・波和二:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。
11月27日(金)被告人・高相祐一:覚せい剤取締法違反(所持、使用)(判決)
<酒井法子の夫の覚せい剤事件> 09年8月、自称プロサーファーで、女優酒井法子の夫、高相祐一(当時41)は、東京都渋谷区の路上で覚せい剤を所持していたとして逮捕された。
11月27日(金)被告人・和田達夫、嘉藤悦男:背任(初公判)
<理化学研究所をめぐる汚職事件> 09年9月、独立行政法人「理化学研究所」(理研、埼玉県和光市)の主任研究員、和田達夫(当時53)は、取引先の理化学器具開発販売会社「秋葉産業」の社長、嘉藤悦男(当時76)から旅行や飲食費などの代金付け回しを受け、その穴埋めに架空発注を行ったとして逮捕された。
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