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2008年9月30日

泥棒同士のいざこざに裁判官は興味津々

 今週は、法の日週間です。裁判員制度導入前の法の日週間ってことで、各地のイベントも気合いが入っています。

 札幌地裁のイベントには、北海道日本ハムファイターズの「B☆B」とコンサドーレ札幌の「ドーレくん」が参加するようです。
 仙台地裁のイベントでは、女優の涼風真世、俳優の中村雅俊のトークショーが行われます。
 東京地裁のイベントには、女優の酒井法子のトークショーと、ザ・たっちのトークショーが予定されています。

 豪華ですね。仲には裁判に関係ないのもあるけど。一番気になるのは神戸地裁。なんと、法の日週間のイベントに参加すると、参加者全員に裁判員グッズがプレゼントされるようです。全プレですよっていうか、裁判員グッズって何?

 イベントを行わない裁判所はないんじゃないかと思えるほど、今回の法の日週間は盛り上がっています。興味のある方は、ご近所の裁判所でどんあイベントが行われているのか、調べてみましょう。

 さて、今回は、9月24日に行われた友永茂己被告人(56)の裁判の話。罪名は傷害。
 報道によると、友永は7月25日午前1時10分ごろ、港区浜松町の路上で、知人の無職男性(34)の左胸を、持っていた折り畳みナイフで1度刺した。男性が「知人に刺された」と自ら110番通報し、駆け付けた警察官に取り押さえられた。調べに対して「自分の被害男性も泥棒で、置き引きやスリなどの仕事を邪魔され腹が立った」と供述した。

 泥棒同士のいざこざという、ちょっと変わった事件です。それにしても「置き引きやスリなどの仕事」って職業感覚なのが呆れてしまうんだけど。
 起訴されたのは、前記の新聞記事の通りなんだけど、罪名は殺人未遂じゃなく、傷害になっていたので、殺意はなかったということなんでしょう。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は1985年(昭60)から眠っている人の財布などと盗む仮睡盗を繰り返していて、前科5犯。
 そんな盗みばかししている生活の中、2004年(平16)に被害男性と知り合うようになる。仮睡盗をしやすい場所などで顔を合わせるだけの付き合いだったらしい。
 そして、犯行前日の7月24日未明。JR浜松町駅付近で被告人が盗みをしていると、被害男性がその現場を目撃。被害男性が110番通報をすると、被告人は「こんな嫌がらせをされたら、仕事(仮睡盗)ができない」と立腹し、口論に。しかし、パトカーが近付いてきたので、2人はその場を離れ、互い別々に逃げたらしい。
 被告人は、その日の夕方、浅草で刃渡り6・8センチのアーミーナイフを購入。そして、浜浜松町に戻り、被害男性を刺したというのが事件の詳細です。

 仮睡盗の仲間にとっては、110番通報は嫌がらせなんですね。通報だけなら、被害男性も正しい行動なんだけどねぇ。
 そして、被告人質問。まずは、弁護人から。

 弁護人 「被害者のトミタさん(仮名)とは、4年前に仮睡盗を邪魔されたことで知り合ったんですね」
 被告人 「はい、そうです」
 弁護人 「トミタさんも仮睡盗してる人?」
 被告人 「そうです」
 弁護人 「一緒に仮睡盗したことはあるんですか?」
 被告人 「1年か、1年半前に1回だけあります」

 仮睡盗を邪魔されたのに、後に一緒に仮睡盗をやるとは、互いに意気投合したんでしょうか。たぶん、犯行の手口などを認め合ってる2人なんでしょう。

 弁護人 「犯行前日の7月24日午前4時頃ですけど、トミタさんが110番通報したと話しかけたんですね」
 被告人 「いや、その時は路上に寝ている人がいたので、2、3メートル離れた位置で様子を見ていました。その近くにタクシーが止まっていて、うまく盗めずにどうしようかなぁと思っていたところでした」
 弁護人 「まだ、盗みはしていないのに通報されて、それでトミタさんに話しかけた、と」
 被告人 「はい。パトカーが来たので“ふざけんじゃねーよ! 今度やったら承知しねーぞ”と言いました。トミタ君は“思い違いだ”と言ってましたが、パトカーが近付いてきたので別れました」

 実際のところ、被害男性が110番通報したのか、被告人の思い違いなのかわからないんだけど、険悪な雰囲気のまま別れたんでしょう。

 弁護人 「その日の夕方、ナイフを購入したんですね。冒頭陳述では、アーミーナイフと書いてありましたけど、買ったのはキャンプ用の十徳ナイフですよね?」
 被告人 「はい」
 弁護人 「その十徳ナイフで痛めつけてやろうと考えたわけですか?」
 被告人 「そうです。トミタ君と出会うことがなければ、釣りが趣味なので、釣りに使えると思って購入したわけです」
 弁護人 「トミタさんを探し出して痛めつけてやろうと思ってたんですか?」
 被告人 「それはないです。もし出会ったとき、一触即発の状況で別れましたから、相手が何持ってるかわからないと思って買いました」

 どれだけピリピリした感じで別れたのかわからないけど、被告人は相手も武器を用意してるに違いないと思い込んでいたようです。

 弁護人 「そして、7月25日の午前1時頃。トミタさんと遭遇しましたね」
 被告人 「給料日目前で(浜松町駅の方は)人がいなくて、ガラガラだったので、公園の方を様子を見に行ったら、ばったり会いました」
 弁護人 「それで?」
 被告人 「お互い“なんだこのやろう”という雰囲気になりまして、いきなりプラスチック片で殴られたんです。顎を突かれたので、やり返したら、トミタ君が脇腹を押えていたので、刺してしまったな、と」
 やっぱり被害男性も凶器を隠し持っていたんですね。と思ったら、

 弁護人 「プラスチック片というのは、携帯電話だったんですよね」
 被告人 「はい。そのケータイでトミタ君が警察に通報しました」

 と、被害男性はとっさに携帯電話を武器にしていたことが明らかになりました。

 弁護人 「今、トミタさんに対してどんな気持ちでしょうか?」
 被告人 「とっさ的な犯行とはいえ、大けがをさせてしまい、深く反省しています」

 と、述べた後に、今後はちゃんと就職することを約束して質問終了。次は、検察官からの質問。

 検察官 「トミタさんを痛めつけるつもりって、具体的にどうしようと考えてたんですか?」
 被告人 「切りつけてやろうと」
 検察官 「ふーーん。仮睡盗の邪魔をされて、続けることができないと考えたんですよね。人を傷つけたり、殺してしまって刑務所に入ったら仮睡盗続けられないですよね」
 被告人 「相手が何を持っているのかわからないというのがあったので、深く考えていませんでした」

 検察官の言わんとしていることはわかるんだけど、「刺したりしなきゃ、仮睡盗やれたのに」と悔しがらせてるようにも聞こえますね。さらに、

 検察官 「また浜松町まで追っかけるんじゃなく、場所を変えればよかったんじゃないですか?」

 と質問です。盗みが罪に問われているわけじゃないんだけど、ほかの場所での犯行を推奨するのはどうなんだ。
 最後は裁判官から、

 裁判官 「被害者には今まで何回邪魔されました?」
 被告人 「4、5回くらいです」
 裁判官 「どんな邪魔ですか?」
 被告人 「私が寝ている人を見つけたのに、トミタ君が先回りしたとか」
 裁判官 「ふーーん」

 泥棒同士の醜い争いに興味津々の裁判官。そして、個人的にはずーーっと気になっていたことを質問してくれました。

 裁判官 「あのぅ、まぁ、広い東京で同じ人に何度も会うことってないと思うんだけどねぇ。盗みをする場所に2人はよくいたのかな?」

 これは気になるでしょ。互いに連絡先も知らないのに、4、5回邪魔されるほど、顔を合わせてるんですよ。その答えは、

 被告人 「そうですね」
 裁判官 「じゃあ、本件犯行で浜松町に行ったのも、盗みに適した場所だから?」
 被告人 「トミタ君は仕事(仮睡盗)してたんじゃないでしょうか。自転車に乗ってたので」
 裁判官 「盗みをするときは、自転車に乗るんですか?」
 被告人 「やっぱり、逃げやすいですから、使う人も多いですね」
 裁判官 「ふーーん」

 仮睡盗の手口が気になって仕方ないようです。興味本位で訊き過ぎたと思ったのか、気を取り直して、

 裁判官 「さっき釣りが趣味と言ってましたけど、住所不定ですよね。釣りの道具はどうしてたんですか?」
 被告人 「友達の家に置いてましたんで」
 裁判官 「そんな計画的な生活ができるなら、就職して働いたらどうですか?」
 被告人 「探してはいたんですけど、刑務所行ってたこともあって、なかなか」
 裁判官 「刑務所行って不利益あるかもしれませんよ。何もなかったらね、みんな悪いことしちゃいますよ」

 と、アドバイスして質問終了でした。別に刑務所行った後に不利益があるから、みんな犯罪を起こさないわけじゃないと思うんだけどね。
 このあと、検察官が懲役2年6月を求刑して閉廷。
 なんか検察官も裁判官もピントがずれてる質問してる気がしたんだよなぁ。仮睡盗の方でも起訴していれば雰囲気も違ったのかもしれなけど。

注目の裁判

11月24日(火)被告人・秋山直紀:所得税法違反
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月24日(火)被告人・芳賀吉孝、小野克巳、五郎川弘之、他2人:わいせつ図画販売・頒布
<わいせつDVD販売を手助けした事件> 08年3月、アダルトDVD業界最大手の自主審査機関「日本ビデオ倫理協会」が、作品の審査基準を甘くして、わいせつDVDの販売を手助けしたとして、審査部統括部長小野克巳(当時51)らを逮捕した。

11月24日(火)被告人・板垣宏 十亀弘史 須賀武敏:爆発物取締罰則違反
<迎賓館などにロケット弾が発射された事件> 1986年に迎賓館などにロケット弾が発射したとして、中核派の須賀武敏、十亀弘史、板垣宏が逮捕された。1審では証拠不十分で全員が無罪とされたが、2審では無罪判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。上告審も2審判決を支持し、1審に差し戻された。

11月24日(火)被告人・松田真知:銃刀法違反など(控訴審初公判)
<大量の拳銃や実弾を密輸した事件> 06年1月、指定暴力団稲川会系松田組組長、松田真知は幹部の後藤広一らと共謀して拳銃11丁、実弾220発などを密輸したとして逮捕された。1審で無期懲役、罰金400万円(求刑無期懲役、罰金500万円)を言い渡された。

11月25日(水)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。

11月25日(水)被告人・竹田慶介:公然わいせつ(初公判)
<路上で下半身を露出した事件> 09年10月、東京都豊島区の学習塾経営、竹田慶介(当時27)は同年9月に同区内の路上でズボンを降ろして下半身を露出し男子中学生3人に見せたとして逮捕された。

11月25日(水)被告人・小川俊之:爆発物取締罰則違反(控訴審判決)
<皇居に向かって火薬を詰めた消火器を発射した事件> 08年9月、神奈川県相模原市の元陸上自衛隊員の小川俊之(当時34)が、火薬を詰めた消火器を皇居に向けて発射したとして、逮捕された。

11月26日(木)被告人・原田久:威力業務妨害(初公判)
<サラ金の業務を妨害した事件> 09年10月、愛知県岡崎市の無職、原田久(当時38)は、消費者金融「レイク」のコールセンターに約500回電話をかけ、女性オペレーターにひわいな言葉をかけたとして逮捕された。女性の体の一部を表す言葉などをかけて業務を妨害したという。

11月26日(木)被告人・小川美津子、他2人:昏睡(こんすい)強盗と保護責任者遺棄(初公判)
<スナック経営者による昏睡強盗事件> 09年2月、東京都渋谷区のスナック経営、小川美津子(当時73)ら男女4人は、スナックで男性客に酒を飲ませて泥酔させ、キャッシュカードを盗んで路上に放置したなどとして逮捕された。

11月26日(木)被告人・松原弘樹:強盗(初公判)
<自衛隊員による強盗事件> 09年9月、陸上自衛隊第1空挺団(千葉県船橋市)の陸士長松原弘樹(当時21)らは、東京・六本木のビル敷地内で飲食店従業員男性(当時22)を倒し、顔を殴るなどして現金約13万円入りの財布を奪ったとして逮捕された。

11月26日(木)被告人・植本勝也、井福一郎、他1人:児童買春・ポルノ処罰法違反(初公判)
<暴力団員らによる児童ポルノ販売事件> 09年9月、大阪府守口市の指定暴力団山口組系暴力団組長井福一郎(当時61)と大阪市西淀川区の無職植本勝也(当時43)は、インターネットで児童ポルノのDVDを販売したとして逮捕された。

11月27日(金)被告人・波和二:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。

11月27日(金)被告人・高相祐一:覚せい剤取締法違反(所持、使用)(判決)
<酒井法子の夫の覚せい剤事件> 09年8月、自称プロサーファーで、女優酒井法子の夫、高相祐一(当時41)は、東京都渋谷区の路上で覚せい剤を所持していたとして逮捕された。

11月27日(金)被告人・和田達夫、嘉藤悦男:背任(初公判)
<理化学研究所をめぐる汚職事件> 09年9月、独立行政法人「理化学研究所」(理研、埼玉県和光市)の主任研究員、和田達夫(当時53)は、取引先の理化学器具開発販売会社「秋葉産業」の社長、嘉藤悦男(当時76)から旅行や飲食費などの代金付け回しを受け、その穴埋めに架空発注を行ったとして逮捕された。


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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