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2008年9月08日

被害者が反省の弁を述べる不思議な事件

 先々週、司法修習卒業試験の不合格率が発表されました。昨年よりパーセンテージがアップだそうで。

 そのニュースを受けてから偶然か、先週の週刊朝日に「おバカ弁護士が増殖中」という記事が載ってたんです。これがなかなか面白い。詳細は実際に雑誌を読んでもらうとして、変な弁護士ってたくさんいるんですね。これからは知識だけじゃなくて、常識の試験もした方がいいんじゃないの?
 もし、俺が被告人になって、記事に載っているような弁護士が弁護人になったら、ガックリするだろうなぁ。

 さて、今回は9月4日に行われた伊藤達夫被告人(43)の裁判の話。罪名は詐欺。うその児童買春を持ちかけ現金をだまし取ったという事件です。
 報道によると、伊藤は今年1月下旬頃、出会い系サイトの掲示板に児童買春をにおわせる文章を載せ、返信のあった埼玉県内の会社役員の男性(当時38)を携帯電話で板橋区内の駅近くのコインパーキングに誘導。「自販機」の下に置いてあるファイルの中から女の子を選び、料金5万円を入れて戻してください」などとウソを言い、男性が駅に向かってるスキに5万円をだまし取った。

 伊藤は客を信用させるために電話番に出会い系サイトで知り合った16歳の少女を雇っており、児童福祉法違反の疑いで逮捕されている。
 児童買春をしようとしてた被害者も悪いんだけど、被害届けを出しにくい状況を利用した被告人はもっと悪い。というか、ずるがしこい。 

 まずは、7月22日に行われた初公判。起訴されたのは報道された事件1つだけ。
 検察官の冒頭陳述によると、被告人は本件と似た事件で服役していたらしい。出所した数年経った07年2月20日に出会い系サイトに児童売春の書き込みをして客を募ってだますことを始め、逮捕まで約200人から888万円をだまし取っていたとのこと。

 本件の被害者は「被告人の“10代専門のデリヘル”という書き込みにメールを送り、連絡を取ると東武東上線ときわ台駅に来るようう指示された。ケータイで電話すると、コインパーキングに案内され“赤いファイルが自販機の下にガムテープで貼ってあります。女の子を選んで(120分コースの)4万5000円入れてください”と言われた。細かいお金がなかったので、5万円をファイルに入れると、ケータイで小料理屋の前に行くよう指示された。しかし、30分経っても連絡がなく、こちらから電話をしても呼び出し音が鳴るだけで誰も出なかった。コインパーキングに戻ると、ファイルは少なくなっていた。今回私はホントに少女が派遣されていれば児童売春という罪を犯すところでした。それについては反省していますが、人を騙すのは許せません」と、供述しているそうです。

 被害者の供述の中で、反省の弁が読み上げられるとは珍しい。起訴があるってことで、この日はこれで閉廷でした。
 そして、9月4日の第2回公判。追起訴されたのは同様の事件。
 今年の2月6日。被告人の「JSJCJK紹介します」という書き込みに連絡をしてきた男性を東武東上線ときわ台に呼び出し、「ウィークリーマンション前の自転車前カゴに白い袋が入ってます。その中にファイルが入っているので、気に入った女の子の写真を選んで、ファイルにお金を入れてください。90分コースなので、4万円です」と指示し、4万円をだまし取ったという内容。
 ちなみにJSは女子小学生、JCは女子中学生、JKは女子高生…だと思う。総合的に判断して。

 追起訴分の被害者も「興味本位で連絡したが、少女が来ていれば犯罪行為をしてしまうところだった。2度としないことを誓います。ただ、私を騙した伊藤は許せませんので、厳重に処罰してください」と反省の弁を述べているようです。被害者なんだけど、警察に怒られたんでしょうね。
 弁護人は情状の書証として、被告人の書いた被害者への反省文を提出しました。しかし、
 弁護人 「こちらの反省文ですが、被害者が2人とも家庭持っているので、事件の性質上、私の判断で出してはおりません」

 と、注釈つき。多分、児童買春をしようとしたことを家族は知らないだろうから、ナイス判断なんだろうけど、罰を軽くしてもらうためだけに書いた反省文にしか思えないよなぁ。
 そして、被告人質問。まずは、弁護人から。

 弁護人 「なぜ、こんなことをしようと思ったんでしょうか」
 被告人 「あのーー、まぁ、簡単にお金が入るというのが一番の理由です」
 弁護人 「仕事をしなかったのは?」
 被告人 「(出所後)いろいろバイトをしてたんですけど、長続きしなかったので」
 弁護人 「今後、仕事どうするつもりですか?」
 被告人 「これからは、(実家の)母親を頼って行って、そこで仕事を探してまじめに働きたいです」
 弁護人 「具体的には?」
 被告人 「母親が一人暮らしなんで、面倒をみるっていうですかね」
 弁護人 「仕事は?」
 被告人 「パソコンの配線とか、インターネットの初期設定などをする仕事をですね、ネット上に宣伝を出してやっていきたいです」

 今回の犯行が犯行だけに、ネット上に宣伝をを出してやるっていうのは、まずい気もするんだけど。

 弁護人 「被害者に対して、被害弁償をしてませんけど、弁済はどうしようと思ってます?」
 被告人 「(被害者の住所を)調べさせていただい、ても、構わない、ん、でしょうか?」
 弁護人 「ま、家庭もあるでしょうからねぇ。とにかく、今後弁済する意思はあると」
 被告人 「はい!」
 と、かなり強引に話を締めて、質問終了。被害者だって、恥を忍んで被害届け出したんだろうから、出所後に被告人に連絡を調べられたらたまったもんじゃないでしょう。
 次は検察官から。

 検察官 「この手口はどうやって思いついたんですか?」
 被告人 「ネット掲示板や雑誌を参考にしたり、前回捕まったのも、女性を派遣しなかったりという事件だったので、それで」
 検察官 「被害届が出しにくいという弱みにつけこんで?」
 被告人 「はい」
 検察官 「また刑務所に行くと思わなかったの?」
 被告人 「多少考えました」
 検察官 「思いとどまらなかったんですか?」
 被告人 「バレないだろうと勝手に思っていました」

 前刑がどんな事件だったのかは明かされなかったんだけど、似たような事件を起こしてるのに、「バレないだろう」って。
 そして、弁済についての質問。

 検察官 「拘置所にいるから、あなたは直接できませんけど、1人目(本起訴)の被害者に対して、弁護人に弁済額はいくらと頼みました?」
 被告人 「5万円です」
 検察官 「だまし取った分だけと。弁護人に頼んだ時、所持金いくらありました?」
 被告人 「12~13万円くらいですか」
 検察官 「それでも5万円、と。被害者は応じてくれましたか?」
 被告人 「お金は受け取りますが、示談はしません、と(弁護人から)聞いています)」
 すると、検察官は目を丸くして、
 検察官 「え? あれ? 払ってます?」
 被告人 「払ってないです」
 検察官 「なんで?」
 被告人 「ある日、お金が必要になりましたので、払いませんでした」
 検察官 「お金が必要?」
 被告人 「実刑になると、お金がかかるな、と。それで出所してからにしよう、と」

 刑務所行くのに、金がかかるなんて、初耳です。これに関しては、後で裁判官に追及されることに。

 検察官 「あとね、被害者にあてた反省文の中に“どのような理由があるにせよ、許されないことです”と。“どのような理由があるにせよ”ってどういう理由ですか!」
 被告人 「あの、まぁ、…お金が足りなくて…」

 と、モゴモゴ返答です。本当は、“児童買春という犯罪のお金ではあるけど”って意味あいだと思うんだけどね。さすがに法廷で、はっきりというわけにもいかないようです。
 最後は裁判官から、

 裁判官 「先ほど、弁済の話でお金が必要と言ってましたけど、どんなお金ですか?」
 被告人 「生活していくのにお金がかかるんです。日用品とか食品とか」
 裁判官 「それは拘置所じゃなくて刑務所でもお金かかるっていうことですか?」
 被告人 「はい」
 裁判官 「最低限度は支給されるはずだけど、ほかにも欲しいと」
 被告人 「はい」

 これは刑務所に行った人じゃないとわからない心境ですね。支給品だけで生活するのは相当辛いのかもしれないし。

 裁判官 「それでも弁償するのが先だと思うけどね。考えなかった?」
 被告人 「考えましたけど、結局は出た後にしようと思いました」

 自分の中で、どういう思いがあったのかわからないけど、13万円持ってるのに、最低限の9万円も弁済しないと宣言するのは、いかがなものか。
 このあと、検察官は懲役2年6月を求刑して、閉廷でした。
 被害届けを出していない人が、200人くらいいるわけでしょ。考え方によっては、被告人のおかげで「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童等に関する法律」に違反せず済んだ200人がいるってのは、情状にならないのかね。
 とにかく、自販機の下にファイルがあるような10代専門のデリヘルには気をつけましょう! じゃなくて、児童買春なんかに手を出さないように。

注目の裁判

11月2日(月)被告人・氏家信子:殺人ほか(判決)
<息子を殺害した事件> 09年1月、東京都大田区の無職氏家信子(当時65)は傷害を持つ双子の息子に包丁で切りつけた。弟は病院で死亡が確認された。

11月2日(月)被告人・秋山直紀:所得税法違反(初公判)
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・竹林守、成田茂之、他1人:公職選挙法違反(詐欺登録・詐欺投票)(初公判)
<従業員の住民登録を移し投票を支持した事件> 09年9月、機械製造販売会社「水戸工業」の社長・成田茂之(当時57)らは自社の従業員の住民登録の場所を変更させ、衆議院議員選挙で自民党に投票するよう指示したとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・熊谷智幸:強制わいせつと偽造私印使用(初公判)
<テレビ局員を装ってわいせつ行為をした事件> 09年8月、インターネット広告会社役員、熊谷智幸(当時35)は、東京都板橋区内の路上で30代の女性にフジテレビの社員を装った偽の名刺を手渡して声をかけ、近くのマンションのエントランスまで連れて行き、わいせつな行為をした疑いで逮捕された。

11月2日(月)被告人・押尾学:麻薬取締法違反(使用)(判決)
<俳優による麻薬事件> 09年8月、東京・六本木のマンションで女性が死亡していると119番通報があり、部屋に出入りしていたとして俳優の押尾学(当時31)が任意で事情聴取を受けた。任意の尿検査で、合成麻薬のMDMAに陽性反応が出たため麻薬取締法違反(使用)の疑いで逮捕された。

11月4、5、6日(水、木、金)被告人・太田周作:殺人未遂(初公判)
(初公判、5日6日も) <駅のホームから女性を突き落とした事件> 09年3月、無職太田周作(当時24)は、JR東京駅で女性(当時60)をホームから突き落とし、電車に接触して負傷させたとして、殺人未遂で逮捕された。取調べに対して「(事件を起こすのは)どこでも、誰でもよかった」などと供述した。

11月5日(木)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。

11月5日(木)被告人・中田静子 ほか1名:昏睡強盗、窃盗
<スナック客に対する昏睡強盗> 09年3月、バー経営の中田静子(当時62)はスナック経営の細江敏光(当時39)と共謀、スナックで男性客に強い酒を飲ませて昏睡状態にさせ、キャッシュカードを奪って現金自動預払機から金を引き出したとして逮捕された。

11月6日(金)被告人・波和二ほか:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。

11月6日(金)被告人・片石肇:強盗傷害(控訴審判決)
<プロレスグッズ専門店での強盗事件> 09年2月、千葉県柏市の無職、片石肇(当時28)は他の2人と共謀して東京都千代田区のプロレスグッズ専門店に押し入った。男性店員に暴行を加え、現金15万9000円と、マスク5点などの商品を奪った。

11月6日(金)被告人・多田知信:窃盗、住居侵入(初公判)
<警察寮での窃盗事件> 09年8月、警視庁大森警察署地域課巡査長の多田知信(当時30)は、08年11月に警察寮の同僚の部屋に侵入し、腕時計を盗んだとして逮捕された。


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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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