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2008年8月18日

法廷で被告人のケータイ着信「コーケッコッコーー」

 遂に、東京地裁が来年の裁判員候補者数を発表しました。その数、2万8000人。有権者数の257人に1人の割合で選ばれるようですね。

 裁判員裁判の対象事件数×100で計算してるんだけど、足りるのかね。候補者名簿から、裁判員に選ばれない人(警察官や執行猶予中の人など)を除くと、ちょっと不安なんだけど。あと、予想以上に対象事件が増えるかもしれないし。足りなくなったらどうするんだろうか。

 先週はこれといった裁判がなかったので、今回は8月4日に行われた赤沼貴志被告人(41)と内直樹被告人(29)の裁判の話。罪名は詐欺未遂。以前勤務していた会社の給油カードを使って給油しようとしたとして、詐欺未遂の疑いで逮捕された事件ですね。報道では、運送会社社長・内直樹が5月中旬、大田区平和島のガソリンスタンドで、内が以前勤めていた運送会社の給油カードを使って、従業員のトラック運転手・赤沼貴志にトラックに軽油を入れさせようとしたという。2人は、2005年頃から同じようなことを経費削減のためにやっていたと供述したと報じられた。

asozan080819.jpg

 給油カードを見たこともないので、よく分からないんだけど、前の会社のカードを3年も使い続けていたってことは、クレジットカードみたいに使用停止の手続きはできないんでしょうか。もし、そうなら、システムにも不備があるような。ま、それを悪用してた被告人らが悪いのは言うまでもないんだけど。

 検察官の冒頭陳述によると、05年12月、トラック運転手だった内被告人が、同僚が忘れたカードを自分の物にしたらしい。
 06年年3月からは、赤沼被告人にも不正入手したカードを貸し出し、2人で使っていた。そして、08年1月には、内被告人が運送会社を設立して、トラックの運転をしなくなったため、赤沼被告人だけで使用していた。

 逮捕のいきさつは、今年の5月15日に、被害会社の社員が「大田区平和島のガソリンスタンドが怪しい」という情報を得たので、待機。すると、そこに赤沼被告人が給油カードを使って経由を入れようとしていたので、取り押えたというもの。
 05年12月から逮捕まで、給油カードを使って給油したのは、7万リットル(500万円相当)にも及ぶそうな。
 軽油7万リットルの詐欺ですよ。何回使ってもバレないから、被告人らにとっては当たり前の行為になっていたんでしょう。

 法廷には、内被告人の母親と赤沼被告人の内妻が出廷し、それぞれ監督していくことを約束していました。
 そして、内被告人への質問。まずは、弁護人から。
 弁護人 「調書によると、平成17年(2005年)の12月から、同様の行為を繰り返していたとありますが」
 内被告人 「間違いないです」
 弁護人 「犯罪になると認識していました?」
 内被告人 「悪いこととは思っていたしたけど、犯罪になるとは思っていませんでした」

 犯行当時の考えでは、マナー違反やエチケット違反って感覚だったんでしょうか。

 弁護人 「んーーー、人様の物を勝手に使うわけでしょう。犯罪だよね」
 内被告人 「はい」
 弁護人 「やめようとは思いませんでした?」
 内被告人 「給油カードがボロボロだったので、もう使えなくなるなと。そのときはやめようと思いました」
 物理的な話を聞いてるんじゃないと思うんだけどね。それにしてもボロボロになると使えなくなるって、どんなカードなんだろ。ますます興味深くなってくるカードですね。
 弁護人 「そもそも、なぜやりはじめたんですか?」
 内被告人 「経費を削減するために」
 弁護人 「あと、赤沼さんにカードを渡して、給油するように指示したのはなぜですか」
 内被告人 「それも私が経費を払うので、結局は私が儲かるので」

 自分の利益になるからと不正入手の給油カードを使い、さらに従業員である赤沼被告人にも自らの儲けのために使わせていたわけです。
 しかし、ここで新事実が明らかになります。

 弁護人 「平成19年(2007年)10月から、赤沼さんが給油した軽油を転売していたのは知ってました?」
 内被告人 「知りませんでした」

 何と、裏切り者が存在してたんですね。3年間、給油カードの不正使用に気づかなかった被害会社。そして、そのカードで給油した軽油を従業員が転売していたことに気づかなかった経営者。この業界って、アバウトなのかね。運送会社にとって、ガソリン代とか重要だと思うんだけどねぇ。

 弁護人 「赤沼被告人が転売した軽油のお金も含め、お金を払って示談しましたね」
 内被告人 「はい」
 弁護人 「それで、被害会社は寛大な処分をと言ってるようなんですが、何で起訴されちゃったんでしょう?」
 内被告人 「検事さんから、示談が満期になって、間に合わなかったと」
 弁護人 「不起訴だったかもとは?」
 内被告人 「聞いています」

 ちょっと示談が遅かったようですね。起訴か不起訴かは結果であって、示談は謝罪の気持ちを表すものではあるけど、これはちょっと被告人がかわいそうですね。

 弁護人 「あと、今経営している運送会社ですけど売り上げは?」
 内被告人 「2割ぐらい落ちました」
 弁護人 「なぜですか?」
 内被告人 「同業者にいろいろ言われて」
 本件後、他の運送会社から嫌がらせを受けたりしてたいへんらしい。すると、突然、
コーケッコッコーーーーー
 と、鶏の鳴き声が聞こえたんです。もしかして、裁判での嫌がらせ? と思ったら、鳴き声に続いて、
♪ピラーララ、ピッピララ~
 と電子音が響きました。法廷の中で、ケータイを切っていない人がいたようです。傍聴人や弁護人があせって、バッグやポケットを物色するも、電子音は鳴りっぱなし。
 法廷内にいる人全員が、「誰だ?」という風になっている中、
 赤沼被告人 「あ、すみません」
 と、邪魔しているのは従業員であることが発覚しました。裁判中に被告人のケータイが鳴るなんて。法廷の入り口にしつこいほどに、「携帯電話の電源はOFFに」って書いているのに。次は検察官からの質問。

 検察官 「昔勤めていた会社に『給油カードがあります』って連絡しなかったのは?」
 内被告人 「自分でも忘れていて」
 検察官 「え? 使ってたんでしょ。何を忘れたの?」
 内被告人 「…はい」
 検察官 「“はい”じゃなくて、2年以上も連絡しなかったのは?」
 内被告人 「…」
 と、長考に入る被告人。すると、
 検察官 「ま、いいですわ。自分の物みたいになってたんですか」
 内被告人 「はい、そのような感じ」
 検察官 「軽油をタダでもらってたんでしょ。どういう気持ちでした?」
 内被告人 「悪い、こと、だと」
 検察官 「なぜ、やめられなかったんですか!」
 内被告人 「やっぱり、おいしかったので」

 正直に答えたところで質問は終了。
 次は赤沼被告人への質問です。

 弁護人 「犯罪という認識はありましたか?」
 赤沼被告人 「そういう意識はありました」
 弁護人 「捕まるとは?」
 赤沼被告人 「そこまでは思ってませんでした」
 甘く考えていたんでしょう。
 次は検察官からの質問です。

 検察官 「転売は去年の10月からで間違いない?」
 赤沼被告人 「はい」
 検察官 「転売で毎月の利益は?」
 赤沼被告人 「15~20万円くらいです」
 検察官 「それは遊興費に使ったんですか?」
 赤沼被告人 「いや、生活費とか」
 そんな不正をしなければならないほど、給料が安いんでしょうか。豪華な生活をするための金だったら、ある意味遊興費のような。
 検察官 「今後も内被告人の会社で働き続けるの?」
 赤沼被告人 「取調べで、離れたほうがいいといわれましたが、生活もあるので」
 検察官 「あれ? 違う仕事を探すって取調べでは言ってたようだけど」
 赤沼被告人 「この歳で転職というのもなかかありませんので、働こうと思っています」

 こういう共犯の事件の場合、連絡を取らないことを誓わせたりするもんなんだけどね。ちょっと珍しい。
 この2人には給油カードの管理が甘かったのは否めないんだけど、燃料がこれだけ高騰してるご時勢にこの犯行はひどいよなぁ。被告人2人も同業者なんだから、他の運送会社が困ってるのは分かってるはずなんだけど。

※給油カードによる詐欺はガソリンスタンドにも迷惑(写真は本文と関係ありません)

注目の裁判

12月1日(月)被告人・坂上好治、熊本徳夫:詐欺
<平成電電事件> 07年3月、経営が破綻したベンチャー系通信会社「平成電電」が集めた資金を詐取した疑いで、元社長、佐藤賢治(当時55)、「平成電電設備」と「平成電電システム」元社長、熊本徳夫(当時54)が詐欺容疑で逮捕された。03年9月から2万人から約490億円を集め、このうち約1万3000人、総額約300億円を運転資金などに流用したとみられる。

12月1日(月)被告人・板垣宏 十亀弘史 須賀武敏:爆発物取締罰則違反
<迎賓館などにロケット弾が発射された事件> 1986年に迎賓館などにロケット弾が発射したとして、中核派の須賀武敏、十亀弘史、板垣宏が逮捕された。1審では証拠不十分で全員が無罪とされたが、2審では無罪判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。上告審も2審判決を支持し、1審に差し戻された。

12月2日(火)被告人・岩瀬昭子:殺人(判決)
<アルコール依存症の息子を殺害した事件> 08年7月、東京都葛飾区の無職、岩瀬昭子(当時61)は、うたた寝していた長男の修一さん(当時34)の首にネクタイを巻き付け、絞殺したとして逮捕された。修一さんはアルコール依存症で入退院を繰り返していたが、退院直後に再び酒を飲んでいるのを見て殺害したという。

12月2日(火)被告人・江口義光:銃刀法違反など(判決)
<ボクシング元日本王者による殺人未遂事件> 08年8月、ボクシングの元日本ミドル級王者で俳優の江口義光(当時42)は、飲食店で、同店経営者の男性(当時41)と口論になり、「殺してやる。刺してやる」などと言いながら包丁を突きつけ、顔を手で殴ったりしてけがをさせたとして逮捕された。江口は大和武士の芸名で、映画などにも出演していた。(「ボクサー公判は美人検事が抱きつく迫真の演技」参照)

12月2日(火)被告人・高須邦雄 多賀正義 坂下治男 坂野恒夫:不正競争防止法違反
<ベトナム高官への贈賄事件> 08年8月、大手建設コンサルタント会社「パシフィックコンサルタンツインターナショナル(PCI)」の多賀正義前社長(当時62)、高須邦雄元常務(当時65)などを不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)で逮捕した。多賀らはサイゴン東西ハイウエー建設事業のコンサルタント業務を約31億円で受注し、その際にホーチミン市政府の内部部局で道路建設などを担当する機関幹部らにわいろを渡した。

12月3日(水)被告人・百武拓也:銃刀法違反(所持)、公務執行妨害
<警察官相手に包丁を振り上げた事件> 08年9月、東京新聞上目黒専売店員、百武拓也(当時34)は、自ら勤務する専売店の横の駐輪場で、自転車の前かごに包丁を入れていたところを警察官に職務質問されると、包丁を振り上げて抵抗し逮捕された。調べに対して店長を殺害するつもりだったなどと供述した。

12月3日(水)被告人・大場崇史:準強姦(初公判)
<女性に酒を飲ませ暴行した事件> 08年10月、映画配給会社「ギャガ・コミュニケーションズ」社員、大場崇史(当時28)は、気功サロン経営の杉岡勝人(当時47)とともに準強姦(ごうかん)と同未遂容疑で逮捕された。杉岡の会社事務所内で5人で飲酒した際、大場は都内の20代の女性会社員を酒でめいてい状態にさせた上で暴行した。

12月3日(水)被告人・猿田春代:強盗未遂(初公判)
<65歳女による強盗事件> 08年10月、東京都足立区の無職猿田春代(当時65)は滝野川信用金庫足立支店のたきしんキャッシュコーナー内で団体職員の女性(当時62)に後ろから包丁を突きつけて「金を出せ」と脅迫した。女性の反撃にあい未遂に終わった。猿田は逮捕後に「生活が苦しかった」と犯行に至った理由を供述した。

12月3日(水)被告人・菊地有紗:大麻取締法違反、覚せい剤取締法違反
<元AV女優による大麻所持事件> 08年10月、元AV女優の倖田梨紗(本名・菊地有紗=当時23)は、自宅に大麻を所持していたとして、プロテニス選手の宮尾祥慈(当時27)とともに逮捕された。

12月3、5日(水、金)被告人・古谷弘毅:殺人未遂(初公判)
<兄が弟を刺した事件> 08年5月、東京都渋谷区の無職、古谷弘毅(当時34)は、自宅で弟(当時31)の脇腹と背中を刺し、殺人未遂容疑の現行犯で逮捕された。調べに対して長男は次男から「生活が苦しいので出ていってほしい」と言われて激高して襲い掛かったという。

12月4日(木)被告人・板橋仁:医師法違反(無資格医業教唆)
<リタリン不正処方事件> 07年12月、東京都江戸川区の京成江戸川クリニックによる向精神薬「リタリン」不正処方事件で医師の板橋仁(当時55)は医師法違反(無資格医業教唆)の疑いで逮捕された。院長不在中に従業員に問診などをさせ、事務員らに患者6人の問診やリタリンの処方をさせるなどした。

12月4日(木)被告人・杉岡勝人:準強姦未遂(初公判)
<女性に酒を飲ませ暴行した事件> 08年10月、映画配給会社「ギャガ・コミュニケーションズ」社員、大場崇史(当時28)は、気功サロン経営の杉岡勝人(当時47)とともに準強姦(ごうかん)と同未遂容疑で逮捕された。杉岡の会社事務所内で5人で飲酒した際、大場は都内の20代の女性会社員を酒でめいてい状態にさせた上で暴行した。杉岡は強姦しようとしたが、未遂に終わった。

12月4日(木)被告人・佐藤賢治:詐欺
<平成電電事件> 07年3月、経営が破綻したベンチャー系通信会社「平成電電」が集めた資金を詐取した疑いで、元社長、佐藤賢治(当時55)、「平成電電設備」と「平成電電システム」元社長、熊本徳夫(当時54)が詐欺容疑で逮捕された。03年9月から2万人から約490億円を集め、このうち約1万3000人、総額約300億円を運転資金などに流用したとみられる。

12月4日(木)被告人・北川初子:殺人未遂(判決)
<渋谷の通り魔事件> 08年月、住所不定、無職、北川初子(当時79)は、渋谷駅近くで通行人2人を刺した。調べに対して「所持金もなく、事件を起こせば生活は警察が何とかしてくれると思った」と供述した。(「弁護人困った『刑を軽く』と言えない事情」参照)

12月4日(木)被告人・朝治博:弁護士法違反
<弁護士資格がないのに報酬を得て立ち退き交渉をした事件> 08年3月、大阪市東住吉区の不動産会社「光誉実業」の社長、朝治博(当時59)、共同都心住宅販売の元社長の風間勇二ら10人は、都内のオフィスビルをめぐり、弁護士資格がないのに報酬を得て立ち退き交渉などをしていたために逮捕された。

12月4日(木)被告人・緒方重威 満井忠男:詐欺
<朝鮮総連中央本部に対する詐欺事件> 07年6月、元公安調査庁長官、緒方重威(しげたけ)(当時73)らは、朝鮮総連に架空の売却話を持ちかけ、中央本部の土地・建物をだまし取った。元銀行員の河江浩司(当時42)は資金調達役とされた。

12月4日(木)被告人・渡辺義男:傷害(控訴審判決)
<路上で外国人に刃物で切りつけた事件> 08年3月、東京都豊島区池袋の無職渡辺義男(当時51)は、JR東京駅日本橋口近くのバスターミナル近くの路上で、外国人の男性(当時30)に刃物で切り付け逮捕された。2人は面識がなく、肩が触れたことで口論になった。

12月4日(木)被告人・竹内清実:偽計業務妨害(判決)
<掲示板に殺害予告を書き込んだ事件> 08年9月、東京都中野区のアルバイト事務員、竹内清実(当時36)は、インターネットの掲示板に「池袋でナンパしている男を刺し殺す」と殺害予告を書き込んだとして逮捕された。調べに対して竹内は勤務先が池袋で、「毎日駅で若い女性をナンパしている男を見掛け、イライラしていた」と供述した。

12月4日(木)被告人・中田健:逮捕監禁(初公判)
<女性宅に押し入り監禁した事件> 08年11月、住所、職業不詳の中田健(当時36)は、東京都豊島区のマンションに住む会社員女性(26)の部屋に突然押し入り閉じ込めた容疑で逮捕された。中田はチャイムを鳴らして押し入り、駆けつけた警察官はドアを開けるように説得されたが、応じず、業者を呼んで鍵を開けて入ってきた、警察官に取り押さえられた。


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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